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後期の武道大会  決勝戦の後


 主審の声に会場から歓声があがった。


 決勝戦は、ジューネスティーンの勝利で終わった。


 後期の武闘大会において、初めて1年生が優勝した事に対する歓喜の声と、3年生の次席が負けた事により、期待が外れた事による残念な声が入り混じった歓声だった。


 2人の選手は開始線に戻り、主審から勝ち名乗りを受けると、次席はジューネスティーンに歩み寄ろうと前に出たので、ジューネスティーンもそれに倣った。


「強かったよ。優勝できなかったのは残念だけど、強い相手は何処にでも現れると思い知らされた。これからは、もっと、自分を鍛える事にするよ」


 そう言って右手を出したので、ジューネスティーンも右手を出し、その手を握った。


 ジューネスティーンは、握られた手を見た。


(やっぱり、握力が相当落ちてしまっているな)


 最後に受けた連続攻撃をジューネスティーンは、全てスモールシールドで受けていた。


 その影響が、まだ残っていることを握る握力の弱さで感じていた。


(この後、ちゃんとケアして、卒業後も活躍してくれる事を祈ろう)


 ジューネスティーンは、少し申し訳なさそうな表情をした。


 この武闘大会のルールで魔法攻撃は禁止されているが、自身に行う付与魔法は禁止されてない。


 そして、防具に関しても、人を傷つけるような突起のような装飾の類は禁止されているが、防具無しでも革鎧でも、または、フルメタルアーマーのような重装備でも問題はない。


 ルール上、ジューネスティーンの装備に問題は無いが、魔法紋による付与魔法と部分的に付与された人工関節と人工筋肉によって、人の身体能力を超えてしまっており、尚且つジューネスティーンは、入学以降、毎日筋力トレーニングを欠かさず行っていた。


 綱上りの効果によって、上半身の筋肉は次席をも上回っていた。


 筋力的にも装備の補助機能が備わっており、圧倒的な力差が有ると思うと気が引けたようだ。


 そんなジューネスティーンに次席は声をかけた。


「最後に君と戦えて良かったよ。一対一での対戦では、槍の欠点を補えない事も有ると良く分かったからね。あの突進の早さはすごかった。今まで、あんな早さで間合いを詰められた事は初めてだったよ。それに、最後の攻撃で決めようと思っていたけど、あれを全部防がれたのはビックリだった」


「ありがとうございます」


 ジューネスティーンは、申し訳なさそうに答えると、次席はジューネスティーンの右手を両手で持って天に翳し、ジューネスティーンの勝利を讃えるように会場に示すと会場から拍手が起こった。


 それは、ジューネスティーンの勝利と、お互いの戦いを讃えていた。


 それを次席は嬉しそうに聞いていたが、ふと気になった様子でジューネスティーンを見た。


「しかし、そのフルメタルアーマーを装備して、よく、あれだけの動きが出来たな。どれだけ鍛えたんだ?」


 次席は一般的なフルメタルアーマーと思って聞いた。


 常人離れした体力を身につけたと思い、感心した様子で声をかけた。


「これは、フルメタルアーマーではなく、パワードスーツです。自分の動きに連動して動けるようにしてあります」


 そう言うと持ち上げてなかった左腕を動かしてみせた。


 肘の外側の蝶番と、それを繋ぐ人工筋肉の動きが見えた。


 その様子を次席は興味深く見ていた。


「なる程、装備は重そうだが、その重さを補う力が取り付けられているのか」


 動きを見て納得するような表情をした。


「そんな秘密兵器が有ったのなら、長期戦に持ち込んでも体力の限界が来るなんて事は無かったのか。なら、こっちが先に体力が切れてしまう訳だな」


 それを聞いてジューネスティーンは、また、少し申し訳なさそうな表情をした。


 パワードスーツであれば、自身の身体を動かす程度の力でもパワードスーツが力を補ってくれる。


 改良された魔法紋のお陰で強力な力もスピードも、パワードスーツが出してくれていた。


 ジューネスティーンとしたら飛び込む時も、腕で防御する時も、軽く身体を動かす程度の力で行っていた。


 本気の力を出したのは、最後の槍を落とす為に木剣を振り下ろした時だけなので、本気で相手をしてくれた次席に対して少し申し訳なさがあったようだ。


「僕は、もう直ぐ卒業だが、卒業しても学校の大会の事は気にかけておくよ。君は1年生だから、来年と再来年が有る。学校始まって以来の3連覇以上、いや、これから5連覇を目指してくれ」


 そう言って次席は戻ろうとした。


「あ、あの」


 戻ろうとしていた次席にジューネスティーンは声を掛けた。


「手、大丈夫ですか?」


 次席は、自身の手を見た。


「ああ、まだ、少し痺れているけどね。でも、戻ったら、うちの回復が出来るメンバーに見てもらうよ。必要なら医務室に行くさ」


 ジューネスティーンは安心した。


「心配してくれて、ありがとう」


 次席は、そのジューネスティーンの配慮に優しさを感じたようだ。


「卒業後の活躍を期待してます」


 そう言われると、次席は自身の控室に戻っていった。


 その後ろ姿を確認すると、次席の肩が震えているように見えた。


(あんなに紳士的に振る舞っていたけど、3年生最後の武闘大会だから、思い入れも違ってたのか)


 ジューネスティーンも自身の控室に戻るために歩き出した。


(そうか、首席は、2回戦で負けているから、今回は優勝するチャンスだと思っていたのかもしれないな)


 ジューネスティーンも感慨深そうに控室に戻っていった。


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