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後期の武道大会  本戦の決勝戦 5


 試合場の境界付近まで追い込まれた次席は、ジューネスティーンが間合いを詰めてくると、右へ回るように移動して試合場の境界から離れ中央側に移動した。


 次席の居た場所にジューネスティーンが木剣を振り込むと、そこに次席は槍で突いてきたが、木剣を下から振り上げて槍の切先を跳ね上げ、次席に向かって踏み込んだ。


 次席は間合いの内側に入られるのを嫌うように右へステップしつつ槍で突いてきた。


 それを左のスモールシールドで受けつつ、腕を後ろに振り槍をジューネスティーンの後ろに逸らした。


 その間に、次席は後ろにステップした。


 ジューネスティーンの間合いに入り込まれての連続攻撃を受けたくないと、自分の優位な間合いを維持しようと間合いを開けた。


 槍と剣では間合いが違う。


 槍は突きによる攻撃が有効打となり、側面で叩いても意味が無いが、剣は刃を当てる事で有効となる。


 距離のある相手に槍は有効だが、内側に入られてしまえば取り回しが効かない。


 ジューネスティーンは、槍の内側に入り込むようにしつつ攻撃を加えていた。


 一対一なら遠い間合いは槍に有りではあるが、槍の範囲内に入られてしまうと攻撃も防御も対応が難しい。


 今までの相手なら、槍の牽制で内側に入り込まれなかったが、ジューネスティーンは、パワードスーツによって、速度を増して間合いを詰めるので、次席は対応に苦慮していた。




 しかし、その攻撃は何度か行われたが、ジューネスティーンの足が止まった。


 その様子を見た次席はニヤリと笑った。


「そんな重装備で、あれだけの動きをしたら、疲れは俺とは違うはずさ」


 次席は呟くように言うと一歩踏み出して、首を狙って槍で突いてきた。


 ジューネスティーンは、フルメタルアーマーを改造した簡易パワードスーツで出場していた。


 世界で初めてのパワードスーツであるので、周囲には認識が無いので、重装備のフルメタルアーマーと見られていた。


 そんな重装備と軽装備ならば、体力の消耗は重装備となる。


 どんなに体力作りをしても、その差を埋めることはできないなら、長期戦に持ち込んで体力を削り取れば勝てると考えていたのだ。


 ジューネスティーンは、次席の槍を両手に取り付けてあるスモールシールドで受けて防御した。


「一発で決まるとは思ってない!」


 そう呟くと、次席は槍で連続突きを行った。


 次席は、邪魔なスモールシールドを首元から離すために胴や腰を狙って突き、その防御のために腕を下ろしたところに首を狙って寸止めしようとするが、その全てを両手のスモールシールドで受けていた。


 次席の連続攻撃は、圧倒的な強さをジューネスティーンに見せつけているように思えるほど、高速で繰り出されており、見る者を魅了する程だった。


 その攻撃をジューネスティーンは、辛うじて面積の広い二つのスモールシールドで受けているように周囲には見えていた。


 誰もが、この連続攻撃によって、次席の勝ちかと思ったようだ。




 ジューネスティーンは、右手に持った剣は使う事は無く両腕に固定されたスモールシールドだけで受けるように防御しながら徐々に移動していた。


 下がりつつ、横に移動しつつ、次席の攻撃を受けていた。


 そして、次席の槍による連続攻撃も限界を迎え、攻撃が止まった。


 次席の攻撃が止まると、ジューネスティーンは横に動いた。


 その場所は、四角い会場の角の位置で、次席は会場の角を背にして、ジューネスティーンは中央を背に対峙していた。


 ジューネスティーンは、次席の猛攻を受けながら会場の角に誘導していたのだ。


 生身の人間の連続攻撃には、体力の限界までしか行えない。


 気力で何とかなるにしても限界はある。


 次席は肩で息をする程の攻撃を加えていた。


 その落ちた筋力は、回復させなければ、強力な攻撃は行えない。


 そして、次席は会場の角に追い込まれ、左右どちらかしかその場を抜け出せないが、今のジューネスティーンの動きから、左右どちらかから抜け出そうとしても直ぐに回り込まれてしまう。


 次席はこの連続攻撃で、決められると思っていたようだが、次席の連続攻撃は、ジューネスティーンによって誘導されていたのだ。


 そして、試合会場の角に追い込んだことで精神的に追い込んでもいた。


 ジューネスティーンは、追い込んでも直ぐに攻撃を仕掛けなかった事から、次席はジューネスティーンに槍を突いて隙を作って角から移動しようとした。


 その攻撃をジューネスティーンは、腕のスモールシールドではなく持っていた木剣を使って上から振り下ろした。


 パワードスーツの最大の力で、迫ってきた槍を叩くと次席は持っていた槍を床に落としてしまった。


 ジューネスティーンの攻撃は、それだけでは終わらず、下に払った木剣を今度は振り上げた。


 その木剣の刃は、次席の首目掛けて振り上げていたので、次席は左手で腰の剣に手を掛けて持ち上げて防御しようとした。


 しかし、左手に力が入らず、剣の柄を上手く掴めない。


 槍による連続攻撃をジューネスティーンのスモールシールドで受けられた時の衝撃を受け、腕は今までの力を失って、握力が落ち腕に痺れも有ったのだ。


 次席の腰にさした剣の柄尻をジューネスティーンは、左手で押さえるように手を置き、そして、右手で持った自身の剣を次席の首に添えた。


「勝負あり!」


 主審の声が会場に響いた。


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