後期の武道大会 本戦の決勝戦
ジューネスティーンと次席による、後期武闘大会の本戦の決勝戦が開始された。
ジューネスティーンは木剣を中段に構えており、次席は槍を腰から先端をジューネスティーンの喉のあたりを狙うように構えていた。
しかし、2人は直ぐには動こうとしない。
次席の構えた槍は、ルールによって木製の棒で先端にガードが付いており、相手にケガを負わせないようになっていた。
一方、ジューネスティーンは細身の曲剣タイプの木剣を中段に構えた。
ジューネスティーンは、この大会で初めて槍との対戦になった事もあり迂闊に仕掛けようとはせずに様子を伺っていた。
そして、それは次席も同じで、ジューネスティーンのフルメタルアーマーを改造したパワードスーツに警戒していた。
一般的なフルメタルアーマーであれば、その重さから動きが悪くなるはずなのだが、ジューネスティーンは、部分的ではあるが自身の関節部分の外側に蝶番を取り付け、擬似的な関節を用意し人工筋肉で動作させていたので、動きがスムーズになっており、むしろ生身の動きより早かった。
準決勝までのジューネスティーンの試合を観戦して、その動きを見ていた事から、次席は迂闊に仕掛けられないと考えていたようだ。
しかし、このまま睨み合いを続けていてもと思ったのか、次席は摺り足で間合いを詰めてきたので、ジューネスティーンも合わせるように前に踏み出すと、次席は槍を突き出してきた。
その槍は人の突き出す速さとは思えない程早くジューネスティーンの胸を狙って伸びてきたが、その槍先を、突き出された槍以上の早さで自身の木剣を使って左に払った。
次席の槍は、左腕の外に外れてしまうと直ぐに引き、また、ジューネスティーンの胸に向かって構えた。
それに対してジューネスティーンは、剣先を上に持っていきながら右肩の前に立てるように持つと、胸の前に自身の左腕が横に置かれ、左腕に固定されている腕より僅かに小さい直径のスモールシールドが次席に向いた。
すると、左手を剣の柄から離し左腕を前に出すようにし、右手は拳を上に向けたので剣は地面に水平になり左足を少し前に出し腰を少し落とした。
その間、次席は見ていただけではなく、次の攻撃に備えていた。
間合いを長くするために、槍の持つ位置を柄尻の方に変更して長く使えるようにしていた。
すると、次席は、ジューネスティーンのスモールシールドの上、首の辺りを狙って突いてきた。
その突きをジューネスティーンは左の腕を一瞬で動かしスモールシールドで受けた。
金属のスモールシールドにガードの付いた木の槍がモロにぶつかり大きな音を会場に響かせた。
その瞬間、次席は顔を曇らせ槍を引いた。
しかし、一旦槍を戻すと、また、突いてきたが、それを左腕のスモールシールドで受けた。
次席の猛攻が始まった。
次席の狙いはジューネスティーンの上半身を狙って何度も突くが、その全てを左腕のスモールシールドで受けていたが、そんな攻防が長くは続かない。
ジューネスティーンは、腕と二の腕を覆われる防具が肘で蝶番で繋がっており、人工筋肉が自身の腕の動きに連動して力を増強するため、自身の筋肉への負担は生身の状態より少ない。
しかし、次席は筋力増強されるパワードスーツではない。
生身の人がパワードスーツと戦っており、その槍による突きを完全ガードされ、その衝撃は、槍を握る次席の手に影響を及ぼしている。
金属のスモールシールドを突いているが、それは、槍で壁を突くようなものであり、衝撃も反動も槍を持つ次席の手や腕に影響を与えていた。
何度も攻撃すると、握力が落ち腕も二の腕も張ってくるので腕力も落ちる。
次席の猛攻は全てジューネスティーンに防がれ、次席は一旦攻撃を止めようと一歩下がった。
その瞬間、ジューネスティーンは、一気に踏み込んだ。
地面を滑るように飛び出した一歩は、人の飛び出す一歩よりも長く、一気に間合いを詰めてしまったので、次席の長く持った槍の内側に入った。
次席は慌てて、柄尻を持ち上げようとするが、長く持った槍のため直ぐに方向転換はできず、懐に入られ首を狙ってきたジューネスティーンの木剣をギリギリで防いだ。
迫り合いになるのを嫌った次席は、ジューネスティーンを押しながら後ろに下がった。
そして、槍を構えようとするのだが、次席が構える前にジューネスティーンは間合いを詰めた。
次席は長く持った槍を中心近くに持ち替え、柄尻と切先を交互に振りながらジューネスティーンに攻撃を加えた。
槍による攻撃は、突きによる攻撃を有効としており、叩く攻撃は有効打と見られないが、次席は有効打を与えるのではなく連続攻撃によって間合いを開けようとしていたのだ。
長い槍を有効に使うため、槍の中央付を両手で持ち左右から振って叩くのだが、ジューネスティーンの両腕に取り付けられたスモールシールドで次席の攻撃は阻まれていた。
ジューネスティーンは、防御に徹していた事から攻撃は行なっていなかったが、右手に持つ木剣は上下左右に揺れて、時々、次席が木剣を避けるような動きをしながら槍を振っていた。
次席は、ジューネスティーンの右手に持つ木剣の動きを嫌ったのか、徐々に右へ回り込みながら木剣から離れつつ槍を振っていた。




