後期の武道大会 決勝戦に挑むジューネスティーン
本戦の3位決定戦は、ランキング4位がランキング3位に勝って終わった。
3年生のセカンドグループは、3位から11位までが混戦状態という事もあり、大会の成績が大きく影響する事からランキングに修正が掛かる可能性が高い。
そして、首席が初戦で敗戦して、敗者復活戦に回った事からランキング4位から2つ上がる可能性が出てきた。
ランキングの変動は、審査の結果次第だが、3位決定戦で勝った事により次席になる可能性を残して大会を終えたので、ランキング4位は機嫌良く控室に戻ってきた。
扉の先には、本戦の決勝戦に進むジューネスティーンが、大会委員より決まり文句の注意事項を聞き終わって、次の試合の為に扉の脇に控えていた。
戻ってくるランキング4位の為に扉の前には立たず脇に寄っていた。
控室に入ったランキング4位は、ジューネスティーンを見た。
「君達のお陰で、この試合を勝つ事ができたよ。特に君との試合はとても参考になった。あの敗戦が無かったら僕は3位にはなれなかったかもしれない」
ジューネスティーンは声を掛けられたが、どう答えて良いのか困ったようだ。
「ああ、それと、君のパーティーの2人も強かったね。彼女と対戦すると決まって、今までの戦い方では絶対に勝てないと思ったんだ。あれは本当に苦肉の策だったんだよ。あんなぶっつけ本番の手だったけど、あれは僕自身が強い相手に対戦するのに必死で考えた結果だったんだ。奇襲じゃないと勝てそうもなかったからね」
ジューネスティーンは、アリアリーシャとレィオーンパードが強いと、このランキング4位が認めてくれた事が少し嬉しいと感じたのか少し表情が緩んだ。
(でも、レオンは、油断から負けたんだよなぁ。姉さんの試合も良く見てなかったみたいだから、あの短剣に気付いてなかったんだよなぁ。ああ、そうか、それで俺の時も同じ戦法でも大丈夫だと思ってたのか。なる程な、全部、レオンが考え無しだったからなのか)
ジューネスティーンは、納得したような表情をした。
「でも、奇襲的な要素が多かった作戦だったけど、君に負けた事から、使い所を間違ってはいけないと思い知らされたよ。これでも、試合の後に反省して対策を考えたんだ」
ランキング4位は、アリアリーシャに勝った時、初めて短剣型の木剣を使って勝ち、レィオーンパードにも勝ったので、同じ作戦でジューネスティーンにも仕掛けるつもりでいたのだが、短剣型の木剣を使う前に使っていた剣を落とされてしまい使う事ができなかった。
メインの武器を無力化されて短剣型の木剣だけになってしまった。
使い慣れてない武器と、相手の技量を考えたら圧倒的に不利な状況に追い込まれてしまった事から負けを認めていた。
「それに、大事なのは自身の得意な武器であって、その武器が有って初めて別の武器が意味を為すと思い知らされたよ。きっと、あそこで負けなかったら、そんな事にも気が付けなかったと思う。それに卒業前に気がつけて良かったよ」
ランキング4位としても準決勝での敗戦を糧にして3位決定戦に挑んでいた事が分かった。
そして、この大会も自身の通過点であり、卒業後を視野に入れての発言をしていた。
負けたと終わるのではなく、負けた事を反省して、その原因を見つけて対策を、この短時間で行って次の試合に挑んでいたのだ。
「だから、今回は自分で仕掛けてから使う事ができたんだ」
そう言って笑顔を向けた。
すると、大会委員が咳払いをして、会話を終わらせようとした。
「決勝戦、頑張れよ」
「ありがとうございます」
ランキング4位はジューネスティーンの肩に軽く叩くと、自身の付き人達の方に移動していった。
(やっぱり、ランキングが高い人は、負けても、その理由を見つけて対策を考えるから上位をキープできているのか)
ジューネスティーンがそれを見送るのだが、大会委員がジロリと視線を送っていたので慌てて会場に入った。
ジューネスティーンは会場に入り、向こう側の控室の扉を確認すると、決勝戦の相手である3年生の次席が扉の前に立って、ジューネスティーンの様子を伺っていた。
(まずい、話をしていたから待たせてしまったかな。ん?)
相手を確認したジューネスティーンは、一瞬、怪訝そうな表情をしたが、納得したような表情をした。
次席は、自身の身長より50センチ程長い槍を床に立てて持っていた。
(やっぱり、槍か)
次席は、アンジュリーンとの試合で槍を使っていた。
その後、使う事も無く勝ち上がっていた事と、アンジュリーン達の話を聞いて後の試合を確認すると、槍を使っていない事から変だと思っていたが、ここにきて槍を持って入場してきた。
(なる程な。槍は決勝戦まで温存させていたのか。……。やっぱり、3年生にとっては最後の大会だから、ランキングに大きく影響する事を意識しているのか)
ジューネスティーンは、会場内を進み開始線の前まで歩いていった。
お互いに開始線の前に立ち相手を見た。
その様子を見ていた主審が構えるようにと声を掛けると、ジューネスティーンはいつもの木剣を中段に構え、次席は右足を引いて半身になると持っていた槍を両手で構えた。
ただ、次席の腰には、ジューネスティーンと同じような細身の木剣をさしていた。
(槍だけでも面倒なのに、剣も用意されているのか。あれは、パワードスーツの力を意識して、槍が使えなくなった時のためかな。次席の剣技も、今まで対戦した人達より数段上だろうし、厳しい試合になりそうだ)
お互いに構えたのを主審が確認した。
「初め!」
決勝戦の開始が宣言された。




