後期の武道大会 3位決定戦(敗者復活戦)後のアリアリーシャと控室
試合の終わったアリアリーシャは後味が悪く思っていた。
試合会場を後にする時、相手であるアンジュリーンが大粒の涙を流していた事が気になっていた。
(あんなアンジュリーン、初めて見たわ。でも、なんで涙なのよ)
アンジュリーンに剣を当てたのは、最後の首だけで、添えるように当てただけだった事から、その涙は打撃によるものではなく、精神的な内容による事だと直ぐに分かった。
泣く程の事と言ったら、思い当たる事は勝負の勝ち負けになる。
アリアリーシャは控室に入ると、そのまま、ジューネスティーン達の方に移動した。
「おめでとう。アリーシャ姉ちゃん」
直ぐにレィオーンパードが声を掛けた。
「冷静に戦えたみたいだね。あの人と話せた事で気持ちの切り替えができようだったから、いい試合になったと思うよ」
ジューネスティーンは、そう言うと次の敗者復活戦の決勝戦、首席の試合を観戦するため、向こう側の窓に立って見ているランキング4位の選手を見た。
試合は始まってはいないが、試合会場の様子を真剣に見ていた。
アリアリーシャに勝ち、レィオーンパードに勝ち、そして、ジューネスティーンに負けて、本戦の3位決定戦に出場予定なのだが、その前に、敗者復活戦の決勝戦が行われる。
その試合は、首席の試合だった。
3年生の首席は、2回戦の初戦でジューネスティーンに敗戦し、敗者復活戦の1・2回戦から勝ち上がって、さらに準決勝でアリアリーシャに勝って決勝に進んでいた。
そして、始まろうとしている敗者復活戦の決勝戦、主席の相手はアンジュリーンが負けたランキング11位となる。
首席の決勝戦でセカンドグループとの対戦となれば、アリアリーシャとアンジュリーンの1年生同士の試合より注目度は高い。
試合会場では、審判団が何やら話をしており、試合は直ぐに始まる気配は無かった。
会場に居る審判団に外部から連絡員が入り、何やら話をしていた事が理由なのか、主審が選手に何かを伝えるような仕草をすると、首席は身体の力を抜いてリラックスしたようになり、相手のランキング11位の選手は身体を伸ばしたり曲げたりし始めた。
審判団の都合によって、試合が引き延ばされたようだ。
今年の3年生は、頭一つ以上の実力を持った首席と次席、そして、セカンドグループ9人が有力候補と言われていた。
この大会で、首席がセカンドグループと対戦するのは、これが初めてになる。
敗者復活戦を勝ち上がる試合、準々決勝、そして、準決勝ではアリアリーシャとの対戦だった。
3年生の首席ともなれば、本戦を勝ち上がるはずなのだが、2回戦でジューネスティーンが勝ってしまった事により、セカンドグループとの対戦は、この決勝戦のみとなってしまっていた。
ただ、アンジュリーンは、準々決勝でランキング10位に勝ち、準決勝で首席の相手であるランキング11位に負けている。
アンジュリーンが、素直にメンバーのアドバイスを聞いていたら、この決勝戦は、アンジュリーンが相手だった可能性も有った。
アンジュリーンが準決勝で負けた事によって、敗者復活戦の注目度は上がっていた。
ランキング11位とはいえ、3位から11位の実力は拮抗しており、首席とも良い試合になるのではないかと噂されていた。
アンジュリーンが準決勝で負けた事によって、敗者復活戦の決勝戦は、注目度が一気に上がっていた。
そして、本戦の3位決定戦に出場予定のランキング4位としても、自身の実力を計る為にも見ておきたい試合のようだ。
そんな中、試合から戻ってきたアリアリーシャは、うかない顔をしていた。
「姉さん、アンジュの涙の事を考えているのか?」
シュレイノリアは、アリアリーシャの表情を見ていた。
「アンジュの事は気にするな。それに、勝者が敗者に掛ける言葉は無い。気を遣った言葉は、むしろ嫌味になる。アンジュが戻ってきても試合の事は言わない方がいい。泣いていたのは、負けた悔しさからだ。気持ちが落ち着いたら、試合の事ではなく、いつもの様子で話せばいい」
アリアリーシャは図星を突かれて、一瞬、驚いたような表情をしたが、話を聞いて、そんなものなのかと思ったようだ。
「ありがとう、シュレ。そうするわ」
すると、シュレイノリアは、ジロリとレィオーンパードとジューネスティーンを見た。
その視線は、アンジュリーンのフォローはお前達だと訴えていたので、2人は、ちょっと困ったような表情をすると、レィオーンパードは、すがるような目でジューネスティーンを見た。
ジューネスティーンは、苦笑いをするだけで答える様子は無かったが、レィオーンパードは、それだけで何とかしてくれるだろうと思ったようだ。
レィオーンパードとしたら、転移して以来、一緒に生活してきた事もあり、人種とヒョウの亜人の違いは有るが、本物の兄のように慕っている事から、こんな時には頼っていた。
ジューネスティーンも、その事が分かっており、弟の頼みであれば仕方が無いと対応しようと考えていた。




