後期の武道大会 3位決定戦(敗者復活戦)の行方
間髪を入れずにアンジュリーンは、アリアリーシャに攻撃していた。
しかし、そんな攻撃は長くは続かない。
アンジュリーンは、一気に試合を決めようと必死に剣を出している。
アリアリーシャは、冷静にその剣を躱し受け流し続けていたので、最小限の体力の消耗で済んでいた。
対照的にアンジュリーンは、自身の持てる力を振り絞って剣を出していたので、息も上がってきており、狙いも雑になり、その剣の重みも軽くなってきていた。
そんなアンジュリーンの変化をアリアリーシャは感じていた。
(もう少しでアンジュは、限界を迎える!)
アンジュリーンの剣の出方も最初の頃より遅くなり始めた。
アリアリーシャは冷静にアンジュリーンの動きだけでなく、その攻撃の様子から体調の変化も探っていた。
アンジュリーンは必死に攻撃していたが、自身の体力が限界にきていると分かっていた。
最初の攻撃で、相手の出鼻を挫いて、一気に勝ち取ろうと思っていたのだが、その攻撃は全て躱され、アリアリーシャの身体を掠める事も無かった。
しかし、初めてしまった以上、止めるわけにはいかず撃ち続けていたのだ。
(まずい、こんなに連続で撃ち続けるって! 苦しい!)
アンジュリーンとしても、この状態が続けば、アリアリーシャに隙を突かれて負けてしまう事は理解できた。
(なら、ここで一気に決める!)
そして、アンジュリーンは、剣速も落ちたにも関わらず、まだ、同じようにアリアリーシャに向かって、自身の右側から剣を振った。
その剣をアリアリーシャは、受け流すように、身体を低くしつつ剣を斜めにして、アンジュリーンの剣の軌道を上に上げるように構えた。
(アリーシャの足を止める!)
アンジュリーンは、受け流されていた剣が当たる瞬間、方向を変えて、剣と剣をまともに受けるように動かした。
そして、アリアリーシャの片膝でも床につけさせたら、次の攻撃で決められると思った。
しかし、剣が当たる瞬間、アリアリーシャは、身体を更に低くして向かってくる剣の下を潜るように躱した。
アンジュリーンは、受け流されると思った瞬間、押さえ込むように力を入れたので、その力を相手の剣で受けられずに空振った。
そして、バランスを崩していた。
その一瞬の隙をアリアリーシャは待っていたのだ。
アリアリーシャは、アンジュリーンが振り切った腕とは反対側に入り込むと、一気に決めに掛かった。
腕を伸ばして自身の剣をアンジュリーンの首に当てようとした。
後少しで決まると思った瞬間、アンジュリーンは、膝を折ってしゃがみ込み、アリアリーシャが当てようとしていた首は一気に下がって、寸止めした剣は、アンジュリーンの頭の上に止まった。
すると、今度はアンジュリーンが振り切った剣を切り返して、アリアリーシャに向けて振ってきた。
その剣は、アリアリーシャの脇腹に直撃すると思った瞬間、アリアリーシャのもう一方の剣が、それを受け止めると、最初に首を狙った剣を返して下ろし、アンジュリーンの首の頸動脈に当てようとした。
それを、アンジュリーンは、腕を上げて、当たっている剣を切先側にずらしつつ、自身の剣の鍔側で受けた。
切先と鍔側にアリアリーシャの剣が当たると、アンジュリーンは、気合とともに一気に剣を振ってきた。
抑えられた剣ではあるが、しゃがみ込んだ事で下半身を伸ばす力を使って剣を振り切ってきたので、その剣には力が乗っていた。
しかし、アリアリーシャは意表を付いて、その力を利用して後ろに跳ねるようにして間合いを取った。
対人戦を戦う上で、地面に足が付いていない状況というのは防御が弱くなり、場合によっては負けを意味することになる。
空中に浮いているため、足を使った回避が出来なくなるので、その状態で攻撃を受けた際、手に持つ武器だけで防戦する必要に迫られる。
そんなリスクを背負っても、アリアリーシャは、間合いを取る事を選択した。
(やっぱり、アンジュは、今のラッシュで相当に疲れてしまったわ)
アンジュリーンは、アリアリーシャの作った隙につけ込むことができず、剣を振り切った姿勢のまま、肩を上下させつつアリアリーシャを見ていた。
アリアリーシャは、着地と同時にアンジュリーンの正面側に横走で間合いを取り、振り切ったアンジュリーンの剣から少しでも遠くに移動できるように移動した。
アンジュリーンの後ろの方へは走らなかったのは、一旦、剣の間合いに近づいてしまうから一歩でも早く遠ざかろうとした為、前方に移動していた。
そして、冷静に相手を見ていたアリアリーシャは、体力の消耗したアンジュリーンは、そこからの攻撃は難しいと思っていた事が正しかった。
アンジュリーンは、アリアリーシャが間合いを取ってくれた事で、少し息を整えられると思った。
アンジュリーンは、この間合いが空けられた事で、剣を向けて牽制して、様子を探るようなフリをして体力の回復を行おうとしていた。
しかし、アリアリーシャは、そんなアンジュリーンの考えは分かっていた。
間合いを取ったように見せかけてから、一気にアンジュリーンに向かって走っていた。
アンジュリーンが少しでも呼吸を整えたいと思っている事を見越しての連続攻撃を仕掛けていた。
休めると思った瞬間に、それが叶わないと思わせる事がアリアリーシャの目的である。
期待が外れる事は、精神的なダメージを与えられるので、次の攻撃が成功する確率が上がる。
その効果を利用した連続攻撃をアリアリーシャは仕掛けた。




