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後期の武道大会  休憩時間の過ごし方


 ジューネスティーン達の初めての後期武道大会は、残すところ本戦の3位決定戦とジューネスティーンの決勝戦、それに、敗者復活戦の決勝戦と、アンジュリーンとアリアリーシャによる3位決定戦だけとなった。


 試合を行う選手の休憩を取らせるという事もあるが、その試合を見る観客達には各国の重鎮も来ており、彼らにも休憩がてら情報交換をさせるための時間を用意している。


 どの国が、今度の卒業生からスカウトしたいのか、互いの国の様子を伺わせるためにも時間は用意しており、ギルドとしては、その各国の動きを探るには都合が良かった。


 試合と試合の間に時間を持たせる事によって、来賓達はラウンジに向かい喉を潤したり、軽い食事をしたりしている。


 その際には他国の来賓同士の会話も有る。


 来賓達は、自分達が目を付けた生徒の評価を他国がどのように見ていたのかを知るため短い会話をしたり、場合によっては軽食をしつつ話をする事も有った。


 そうやって、他国の動きを探ったり牽制したり、または、根回しを行ってもいる。


 その様子をラウンジに居るギルド職員が伺っていた。




 そして、審判団においても、真剣に試合を確認する必要があるので、その集中力を養うためにも休息は重要となる。


 選手達への配慮もあるが、それ以外の人達にも大いに有効な時間となっていた。




 その間、ジューネスティーン達は、格闘技室で身体を動かして冷やさないようにしていた。


 ただ、アンジュリーンとアリアリーシャは対戦相手という事もあり、お互いに視線を合わせないようにつつ、アンジュリーンはシュレイノリアが手伝い、アリアリーシャはレィオーンパードが手伝っていた。


 そして、ジューネスティーンは、カミュルイアンに見守られつつ剣を振っていた。


 その動きは、左右に剣を立てたまま振るようにしている事が多かったので、カミュルイアンは、その動きが気になっていた。


 カミュルイアンは、黙って様子を伺っていたが、ジューネスティーンが一息付いたところで話し掛けた。


「ねえ、何で、そんな剣の振り方をするの? 攻撃するというより、防御に徹したように見えるけど」


 軽く一汗かいたところに声を掛けられたので、ジューネスティーンは笑顔を向けた。


「ああ、多分、次の試合は、ちょっと重要になりそうだからね」


 ジューネスティーンは、そこまで言うと左手を上げて話を終わらせて欲しいというようにした。


 カミュルイアンは、その様子を確認すると、それ以上の事を聞こうとしなかった。


 ジューネスティーンは、カミュルイアンの側に寄った。


「すまないね。ここには他の生徒もいるからね。あれは、次の試合を想定して振ってみたんだ」


 格闘技室をウォームアップに使う生徒は、ジューネスティーン達だけではなく他にも居た。


 流石に3年生の次席は別の場所を使ったようだが、この後に試合を控えている選手が居た。


 その選手も自身のパーティーと思われる人達に囲まれて、ウォームアップがてら軽く身体を動かしていた。


 そして、それを見ている生徒もいた。


「こんな場所で、手の内を解説するわけにはいかないだろ」


 カミュルイアンは、そう言われて周囲を見回した。


 言われて、出場者のパーティーだけにしては人数が多い事に気がついた。


 野次馬と思われる生徒もおり、応援の声を掛けている人もいたが、そんな中に黙って選手達の様子を伺っている生徒もいた。


「ああ、ジュネスの様子を見ている人も居るかもしれないね」


 カミュルイアンが理解してくれたので、ジューネスティーンは満足そうにした。


「そうさ。もう、試合は始まっているんだ」


 その言葉に納得するカミュルイアンなのだが、言われて何か気がついたようだ。


「じゃあ、こっちも同じように次席の練習を見に行った方が良かったんじゃないの?」


 それを聞いて、ジューネスティーンは、僅かに鼻で笑うような表情をした。


「ああ、でも、こっちのメンバーは、顔が知られているだろうし、それに次席は、きっと、誰にも見られないようにしていると思うよ」


 そのジューネスティーンの言葉をカミュルイアンは気になった。


「こっちも、いつもの動きの中に、次席を想定した動きを入れたんだ。カミューのように、いつも見ている人には分かるけど、これだけしか見ていなければ、今の動きが何を意味しているか分からないようにはしていたんだ」


 カミュルイアンは、そんなものなのかと思ったような表情をして、また、格闘技室内を見渡した。


「そう言えば、さっき、ジュネスと戦った人は、3位決定戦になるはずだけど、ここには居ないね」


「ああ、あの人は次席と一緒じゃないかな。お互い対戦する事も無いし、情報交換もあるだろうし、試合の対策をするには丁度いいんじゃないかな」


 それを聞いてカミュルイアンは不安そうな表情をした。


「それって、さっきの試合の事を聞いているって事じゃないの? そうなったら、ジュネスが不利じゃ」


 ジューネスティーンは、カミュルイアンの言葉を途中で止めた。


「大丈夫だよ。さっきの試合は一太刀で終わっているし、それに奇襲の要素が多かったから、参考にはならないと思うよ。むしろ、その奇襲的要素に気を取られてもらえたら、こっちの勝率が上がるだろうからね。むしろ、情報交換してもらった方がいいんだ」


 その説明を聞いてカミュルイアンは、そんなものなのかと思ったようだ。


「授業で基礎を覚えて、体力作りをして身体も出来上がってきて、パワードスーツの動きもシュレが魔法紋の改良をしてくれているからね。今まで以上に動けている。向こうは、パワードスーツとの対戦は初めてだから、アドバンテージは、こっちにあるさ」


 カミュルイアンは、言われてジューネスティーンが使っているパワードスーツは、自身で考えて作った物だという事に気がついた。


 世界に存在しない装備を使うジューネスティーンであり、どの実技授業においても他の1年生を寄せ付けない程に成長して、決勝戦まで勝ち上がっていた。


 そんなジューネスティーンが、世の中に一つしかないパワードスーツを使った試合となったら、負ける要素が極めて少ないのではないかと思ったようだ。


 すると、試合を行うので集合するようにアナウンスが流れた。


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