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後期の武道大会  試合後の控室


 本戦準決勝の第2試合が終わりジューネスティーンは、決勝戦に進む事になった。


 この試合が終わった事によって、本戦と敗者復活戦の決勝戦と3位決定戦の組み合わせが決まり、ジューネスティーンは、本戦決勝戦で、3年生の次席と対戦する事になった。


 それは、アンジュリーンを5回戦で破った相手でもある。


 ジューネスティーンは、控室に戻るとメンバー全員が迎えてくれた。


「にいちゃん、決勝進出、おめでとう」


 ジューネスティーンは、その様子に少し驚いたような表情をした。


「凄いよ! 相手の剣を吹っ飛ばしちゃうなんて、力一杯、剣を振り回して、あんなことができるなんて思わなかったよ」


 レィオーンパードは、手放しで喜んでいた。


「ジュネスゥ、試合の後にぃ、相手の選手とぉ、何を話していたのですかぁ?」


 その質問には、ジューネスティーンは、少し困ったような表情をした。


 結果として、アリアリーシャの試合もレィオーンパードの試合もジューネスティーンの布石になってしまっていたので、その話をここでしても良いのかと思ったのだ。


 その様子をアリアリーシャは、何か気になったようだが、ジューネスティーンは、黙ったまま苦笑いをしているのを見て、ため息を吐いた。


「まぁ、いいわ。言いたくないならぁ」


 アリアリーシャは、ヤレヤレといった様子で両手を広げた。


 メンバー達が、ジューネスティーンの勝利に喜ぶ中、シュレイノリアは1人だけ冷静でいた。


「ジュネス! 試合場に上がるまで、なんで、スイッチを切った?」


 それを聞かれて、ジューネスティーンは、どうしようかという表情をした。


 相手の選手へ、パワードスーツに何か問題が生じたと思わせるためスイッチを切ったのだが、アリアリーシャの質問の後なので、その事を言って試合後に相手から言われた事を伝える必要に迫られるのではないかと思ったようだ。


「ああ、そのー、こっちに何か不具合が生じたと思わせようと思ったんだ。それでパワードスーツのスイッチを切って試合場まで歩いたんだ」


 シュレイノリアは、ジューネスティーンが何か言い難そうに言った事が気になっていた。


「でも、開始前にはオンにしていたから」


「ジュネスは、試合が始まる前に、もう、相手と駆け引きをしていたんだ」


 今の話を聞いて、カミュルイアンは気が付いた事を口にしたのだが、ジューネスティーンは、試合後に言われた事が頭に残っていたので、少し困ったような表情で頷いた。


 その間もシュレイノリアは、ジーッとジューネスティーンの顔色を窺っていた。


「面白い事を考えたのね。控室の前から開始線までの移動で相手を騙していたんだ」


 アンジュリーンは、人聞きの悪い言葉で称えたので、シュレイノリア以外のメンバーは苦笑いをしていた。


「アンジュは、口が悪い!」


「そうですぅ。騙していたなんてぇ」


 シュレイノリアが、直ぐに口を挟んできたので、アリアリーシャも釣られて非難するように言った。


 2人には、アンジュリーンが、もう少し言葉を選んで余計な事を言わなければいいのにという思いがあった。


 切れ長の目もだが、全てのパーツが整っており、小顔で美人なのに残念だと常々思っている事から、直ぐにツッコミを入れてしまっていた。


「その表現は、ちょっと微妙だと思う。にいちゃんが、ちょっと可哀想だと思う」


 2人の女子のツッコミを聞いて安心したのかレィオーンパードも、それに続いて自身の思いを口にすると、カミュルイアンは困ったような表情をした。


「オイラも、騙していたは、言い過ぎだと思う」


 最後にカミュルイアンも意見を述べるが、3人につられてだった事もあり、語尾の方は声が小さくなっていた。


 4人に否定的な意見を言われたアンジュリーンは、一瞬、呆気に取られたような表情をしたが、直ぐに面白くなさそうに頬を膨らませてしまった。


「まあまあ、表現は悪かったとしても、偽装していた事には変わりないんだから」


 ジューネスティーンは、それだけ言うと真剣な表情に変わった。


「それより、アンジュ。次席と対戦した時なんだけど、何か気になった事は無かった? あの人、アンジュの時だけ槍を使ったと思うんだ」


 決勝戦で対戦する次席は、アンジュリーンに勝った相手でもあったので、ジューネスティーンは、その時の対戦が気になっていた。


 アンジュリーンは表情が戻り、少し可愛いと思えるように胸の前で組んでから手前の腕を上げて、人差し指を頬に当てて考えるような仕草をした。


 そのわざとらしい仕草をシュレイノリアとジューネスティーン以外は、残念そうにアンジュリーンを見た。


「そういえば、最初は相手の槍をうまく躱して踏み込めたような気がするけど、だんだん、それも難しくなったような気もするわ」


 話を聞いてジューネスティーンは考え込むような表情をした。


「そう言えば、アンジュとアリーシャは、控室の入換の時、次席の人と話してたんじゃないの? 後からオイラも呼ばれて挨拶させられたけど」


 カミュルイアンに言われて、アンジュリーンは初めて気が付いたような表情をした。


「ああ、私たちのぉ場所をぉ使いたいからってぇ声をかけられましたぁ」


 アリアリーシャが先に話し始めてしまったので、アンジュリーンは少し面白くなさそうな表情をした。


「向こう側の試合観戦にも適したぁ場所でしたからぁ、次席の方もぉ、あの場所を使いたかったみたいですぅ。それにぃ、アンジュとの対戦のぉ話をぉしてくれましたぁ」


 その一言がジューネスティーンは気になった様子でアンジュリーンを見た。


 次席と話した内容を言われるまで忘れていたので、視線を感じたアンジュリーンは驚いたような表情をした。


「あ、ええ、私との対戦が槍を使うギリギリのタイミングだったような事を言ってたわ。勝つ為に必要だとか」


 それを聞いて、ジューネスティーンは、アンジュリーンを見ている表情が険しくなったので、アンジュリーンは何か悪いことを言ったのかと思ったようだ。


「ふーん。そんな事を言ってたのか」


 ジューネスティーンは一言ポロリと言うと、納得するような表情をした。


「ありがとう、アンジュ。とても、参考になったよ」


「ああ、そう、良かったわ」


 アンジュリーンには、ジューネスティーンが何でお礼を言ったのかよく分からなかった。


 そして、そんな会話を黙って聞いていたシュレイノリアは安心したように笑みを浮かべていた。


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