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後期の武道大会  シュレイノリアの言葉


 2人の話を聞いていたシュレイノリアがムッとしたような表情をしていた。


 シュレイノリアには、ジューネスティーンが言葉を選んでレィオーンパードに話している事が歯痒はがゆく思えたようだ。


「レオンは、考えが浅かった。それに観察する事を疎かにしていたから負けた。次に戦う相手だというのに、姉さんとの戦いを見てなかったのは大きい。姉さんとの戦い方と同じような戦い方をしていたのだから、見ていたらあんな子供騙こどもだましのような手に引っ掛かることはなかったはずだ」


 シュレイノリアは、ジューネスティーンの言い方がまどろっこしいと思い直接的な言葉で言った。


「それに、戦う前に相手の様子を確認していたら、持っている武器は何が有ったか、使われる可能性を考えていたら、短刀を使う事を考慮して戦えていたはずだ。レオンは、観察する事も考える事も足りてなかった。だから負けた。お前は、この敗戦を大事にして次に繋ぐことだ!」


 シュレイノリアは、目的の言葉だけを綴るのでジューネスティーンは苦笑いをした。


 そして、レィオーンパードは、凹んだような表情をした。


「レオン! お前は、この世界に来て4年しか経ってない! 経験が足りない! それを克服するためには、観察する事、考える事が大事なんだ! 足りない経験を観察し考える事で、経験の差を埋める。それが足りなかった事が、今回の敗戦になった。その事を肝に命じておく事だ」


 シュレイノリアの正論にレィオーンパードは、反省の色を隠せなかった。


 しかし、その言葉を聞いていたアリアリーシャにも引っ掛かっていた。


 アリアリーシャの敗戦も、相手の大剣を振り回しているのを見て、腰に付けていた短刀を注意できていなかった事で敗戦していた。


 シュレイノリアの言葉は、レィオーンパードの敗戦についての話だったのだが、アリアリーシャにもグサリと刺さる言葉だった。


「だが、今のお前なら、誇っても良い結果だ。お前と違って、私は2回戦負けだ。私に勝った相手は4回戦で負けてしまったから、姉さん達のように敗者復活戦にも出れなかった。そんな弱い私の言葉など、負け犬の遠吠えでしかない。気にするな!」


「気にするな?」


 レィオーンパードは、苦笑いをした。


 そして、近くに居たアリアリーシャも同じ表情をしていた。


「いや、姉ちゃん。そこまで言って、気にするなは無いでしょ!」


 シュレイノリアは、魔法職であり、その魔法は学校内では圧倒的な力であり、他の魔法職の及ばない能力を持っている。


 学校にある書物により、始まりの村では知る事ができなかった魔法知識を得て、メンバー達が体力作りをしている時、自身は魔法の研究を行う事もあり、その分筋力は5人より劣っていた。


 その結果として、体力面では、一般の1年生より多少強い程度となっていた事から、この大会では良い成績を残す事はできていなかった。


 しかし、大半の1年生が2年生を相手にした1回戦を勝つ事ができていなかった中、魔法職のシュレイノリアが剣を使って1回戦を勝ち上がったのは快挙と言って良かった。


 魔法に関するこのような大会が有れば、学校内では誰も敵わなかっただろうが、希少な魔法職を対象とした大会は行われていなかった。


 それには理由があった。




 希少な魔法職は、どの国でも貴重であり国民が5歳の時に国が魔法適性を検査する。


 その中で見つけられた魔法適性のある子供は、各々の国の管理下に置かれ魔法の教育を受けるが、伸びる見込みが無く、大した価値が無いと判断されれば親元に戻される。


 残った子供達は、国の魔法師団なり、魔法研究や魔道具の開発等、魔法に関する仕事が与えられる。


 しかし、ギルドの高等学校では、魔法適性の無い冒険者にも魔法と魔法概念を教える。


 中には授業を受けていた際、魔法適性無しとされた人の中から魔法を使える者が稀に出てくるが、基本は魔法の概要を教え、戦闘における魔法職の利用方法を教え考えさせていた。


 魔法が使える冒険者は、各国では使い物にならないと判断された魔法職なのだが、それがギルドの高等学校で伸びている事が知られてしまう事を嫌った事から、魔法に関する大会は行なってない。


 もし、学校で魔法大会を行って各国の目に止まった場合、問題が起こる可能性がある事から、魔法に関する大会は行われていなかった。


 ギルドとしても、魔法が使える冒険者を国の魔法士として取られてしまった場合、冒険者の生存率が下がる事もあり、各国に公開するような大会は開かれていなかった。




 シュレイノリアは、強力な魔法を使える。


 それは、魔物を倒す程度の魔法ではなく、最大であれば地形を変えてしまうほどの戦略級攻撃能力を持っている。


 一般的な魔法職は、剣や槍のような武器を使う授業も受けるが、自身が魔法職だという事から、一般的に筋力を強化するなら、自身の魔法を強力にする事を考えるので、武術系の強化の為に時間を割く事は無い。


 そんな時間があれば、自身の魔法を練習している。


 シュレイノリアは、ジューネスティーンのパワードスーツ開発にあたり、駆動用や防御用等の魔法紋の開発を行っていた事もあり、メンバーが体力作りをしている際に魔法紋の開発を行っていた。


 それは、ジューネスティーンの特待生として学費等の免除は、卒業までにパワードスーツを完成させて納品する必要があり、それが守られなかった場合、免除されていた費用の全額を返還する事になっていた事から、シュレイノリアは、魔法紋の開発を優先していた。


 そんな事から、他のメンバーより体力作りに時間は割いてなかった。


 それでありながら、2年生と対戦する1回戦を勝ち上がった数少ない1人だという事を知っているレィオーンパードとメンバー達にしたら、2回戦で負けたシュレイノリアの言葉でも重く感じていた。


 体力作りである綱上りも魔法の研究のため、メンバー達の10分の1程度しか行っていなかった事から、筋力的体力的に劣ってしまっており2回戦を勝てなかったが、それでもギリギリの試合を行なっていた。


 1年生の魔法職として、剣を使った大会で2年生の剣を使う相手に勝てたのだ。


 同じように体力作りをしていたら、技術的には剣技も良いものを持っているシュレイノリアが2回戦で負けるとは思えないとメンバー達は思っていた。


 そんな人の言葉だった事もあり、レィオーンパードもアリアリーシャも重く感じていた。


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