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後期の武道大会  ジューネスティーンの解説


 レィオーンパード、アリアリーシャ、アンジュリーンの3人が入口付近で話していると運営委員に注意された。


 次の対戦者が会場に入るのに邪魔だと言われ、3人は、ジューネスティーン達の方に移動した。


 戻ると、ジューネスティーンは、窓の外の試合を観戦する窓の前に立って会場を見ていた。


「にいちゃん。負けっちゃったよ」


「ああ、見ていたよ。残念だったね。でも、ベスト8だったんだから、良かったじゃないか。お前、確か、最近14歳になったよな」


「うん」


「1年生で、しかも14歳でベスト8なら、学校創立して初めてじゃないのか? きっと、14歳でのベスト8は初めてだと思うよ」


 ギルドの高等学校は、冒険者育成のための学校であり、13歳でも入学可能ではあるが、大半の生徒は、その年齢の時には、入学金も学費も支払える能力が無い。


 その年齢で入学可能な人といったら、商人か貴族の子弟となる。


 一般人が入学しようとすると、10年以上冒険者として活動して費用を貯めてから入学してくるので、大半の生徒は20歳を超えている。


 ある程度、冒険者として活動していたならば、それなりに体力も強くなり、20歳前後ともなれば筋力のつき方は、育ち盛りで身長も伸びているレィオーンパードの年代と比べたら比較にならない程強くなる。


 それを、ジューネスティーンと一緒に体力作りを行なった事により、年齢的なハンデを克服し、自身の特性を活かして勝ち上がってきていた。


 しかし、そんなレィオーンパードでも、3年生の上位との対戦は簡単に勝てるものではなかった。


「でも、やっぱり悔しいよ」


 ジューネスティーンは、俯いているレィオーンパードを見ると、また、すぐに試合会場の方に顔を向けると安心したような表情を見せた。


「レオン、負けて悔しいなら、その負けた理由を、しっかり、確認しておくことだ。悔しだけで終わらせないで、その理由を追求したら、お前は、また一歩前進する。もし、今の相手と次の大会で対戦したら、今度は、お前が勝ったと思うよ」


 それを聞いてレィオーンパードは、怪訝そうな表情をした。


「にいちゃん。そう言えば、試合が終わった後、相手の人にも次の対戦では、自分は勝てないって言われたんだ。……。何でなの?」


 ジューネスティーンは、納得するような表情をすると、一瞬、レィオーンパードに顔を向けようとして思い止まり、何かを思いついたような表情をした。


「レオンは、さっきの自分の試合について最初から説明できるか?」


「うん、試合開始と同時に、スピード重視で相手に剣を入れに行ったんだけど、それを躱されて反撃されたんだけど、こっちの回避が早かったから攻撃を受けなかった。その後は、相手の様子を探ろうと思ったんだけど、仕掛けてきそうもなかったから、こっちから仕掛けたんだ」


 その話をジューネスティーンは納得するような表情をしつつ会場を見ていた。


「それで、相手を撹乱しようと思って、ジグザグに向かっていって仕留めようと思ったんだ」


「ああ、あの人の最初の一撃を受けつつ、もう一方のレオンの剣を最初に受けた部分を中心に柄側を動かして両方の剣を受けたのは本当に凄かったよ。一瞬、レオンが勝ったと思えたからね」


 ジューネスティーンもレィオーンパードの攻撃が良い方法だと思ってたと分かり、レィオーンパードはホッとした表情を見せた。


「それで、相手が剣を押してきたから、その力を利用して間合いを取ろうとしたら、踏み込まれてきて慌てて両方の剣をクロスして受けたんだ。そしたら、相手のもう一つの剣が首に当てられてて……」


「そうだな」


 ジューネスティーンは、レィオーンパードが正確に説明した事には満足していたが、物足りなさを感じていた。


「決められたのは、腰に付けていた短刀だったな。使っていた木刀を両手剣で受けた時に相手の3年生は、一旦両手で押すようにした後、片手でその短刀を使ってレオンの首を取ったんだ」


 そこまで話すとジューネスティーンは、少しいやらしそうな微笑を浮かべた。


「ところで、レオン。その短刀に気がついたのはいつだった?」


 その質問にレィオーンパードはビクリとした。


 アリアリーシャにも似たような事を言われていた事から、自身が何も考えずに試合に挑んでいた事を指摘されたと思ったようだ。


「アリーシャ姉さんに言われて気が付いた。試合の時は、相手が手に持った剣がにいちゃんの剣と似ていると思ったから、腰にもう一本あるな程度にしか気にしてなかった。それに前のアリーシャ姉さんの試合は、……」


 レィオーンパードは、そこまで言うと黙ってしまい、それを聞いていてジューネスティーンは、納得したような表情をしていた。


「見てなかった」


 そして、申し訳なさそうに小さな声で答えた。


 それを聞いていたジューネスティーンは満足そうに聞いていた。


「そうか、じゃあ、もう、次は、今回のような失敗は無いだろうな。次に、あの人とレオンが対戦したら、レオンが勝つだろうね」


 それを聞いて、レィオーンパードは不思議そうな表情をした。


「にいちゃん。相手の人にも同じような事を試合の後に言われたんだ。何で、そんな事が言えるの?」


「ああ、そうか。それは、レオンが、ただ、強いだけだったからだよ」


 その答えにレィオーンパードは、何の事だという表情をした。


「戦いというのは、単純に力の強い弱いで決まるわけじゃ無いんだ。俺は、その前の段階で決まっていると言っていいと思っているんだ。相手がどんな攻撃を得意としているかとか研究して対策を立ててから戦うなら、自分の持っている力以上の相手にも勝つ事が可能なんだよ」


 レィオーンパードは、そうなのかと思った様子でジューネスティーンの顔を覗き込むように近付いた。


「強い相手と対戦する場合、相手の情報を集めて精査する必要があるんだ。得手不得手を見極めて、相手の不得意な部分で戦うようにするとか、自分の得意な部分との戦力差を確かめて確実に勝てるかを考える。人と戦うという時は、常に相手の戦力の分析が重要なんだよ。むしろ、実際に戦うより、その戦いの前に勝敗の行方は分かっているものだよ」


 レィオーンパードは言われた事は理解できたようだが、納得できないのか理解できなのか、ジューネスティーンの言葉を心に刻むように考えていたが、その2人の会話を快く思わない人も居た。


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