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後期の武道大会  結果を解説するアリアリーシャ


 試合が終わったレィオーンパードは、狐につままれたような表情をしていた。


 まだ、何が起こったのか良く分からないようだ。


 そんなレィオーンパードを審判達が見ていた。


「君!」


 その様子を主審に注意されると、レィオーンパードは、呆然とした様子で自身の開始線の前に移動した。


 そして、相手の勝名乗りを聞くと、礼をして試合会場を後にした。




 控室の入口には、アリアリーシャとアンジュリーンが居た。


「負けてしまったのは、残念だったわね! でも、あなたは学年で2番目なのよ! 負けた事より、2番になれた事を喜ぶべきよ!」


 アンジュリーンは、励ましたつもりのようだった。


 本戦ベスト8に残った1年生は、ジューネスティーンとレィオーンパードの2人だけで、ベスト4を掛けた準々決勝にジューネスティーンは勝ち、レィオーンパードは負けてしまった。


 勝てばジューネスティーンと準決勝を戦う事になるのところだった。


 レィオーンパードとしたら、大会でジューネスティーンと戦いたいと思っていた事もあり残念そうにしていた。


「ねぇ、試合の終わった後ぉ、相手にぃ、何かぁ言われてなかった?」


 アリアリーシャは、試合が決まった後にレィオーンパードが何か言われていた事が気になっていた。


 相手は、アリアリーシャが6回戦で負けた相手でもある。


 それが、レィオーンパードに何か話しかけていた事が気になっていたのだ。


「うん。経験が足りなかったって言われた」


 それを聞いてアンジュリーンはムッとした表情をしたが、アリアリーシャは、納得したようだった。


「何よ! あいつったら、レオンが素人だと言いたかったわけ!」


 アンジュリーンは、ギロリと会場の向こう側の控室の方を睨んだ。


「あ、でも、次に戦ったら勝てないだろうとも言われたよ」


 それを聞いてアンジュリーンは、どういう事なのという表情をして、レィオーンパードの方に振り返った。


 レィオーンパードは、それについて何でなのか理解できないようだ。


「ねぇ、レオン」


 そんなレィオーンパードにアリアリーシャが声を掛けた。


「あなたはぁ、戦う前にぃ相手のぉ装備とかぁ確認したのぉ?」


「えっ!」


 その質問にレィオーンパードは、何でそんな事を聞くのかというようにアリアリーシャを見ると、アリアリーシャはガッカリした表情を見せると、上目遣いにジロリとレィオーンパードを見た。


「あんた、私とあの人の試合を見てなかったでしょ!」


 凄みのある声にレィオーンパードはマズイと思い、それが表情に出してしまった。


「ふん! あんたも、その程度だって事なのよ! 相手は、3年生のランキング4位なのよ。上位の人程、相手の事を研究するものなの! 勝ちを確定させるために相手の弱い部分を見つけて攻撃して、勝率を上げてくるのよ!」


 その解説をレィオーンパードは、まともに理解できていないという表情をして聞いていた。


 それは、側にいたアンジュリーンも一緒だったので、そんな自分の話についてこれない2人を見たアリアリーシャは面白くなさそうにした。


「全くもう! レオンもアンジュもぉ! つまり、レオンの相手は、相手の装備を見たり、相手の行動を見て対策を考えていたって事よ! それより、レオン! あんた、試合会場に入った時、相手が何処にいたか見ていた?」


 質問されたレィオーンパードは、驚きながら、少し引き気味になると、顔を横に振って答えた。


「ふん! あんたが、スタスタと試合場まで歩いて行く時、あの人はジーッとその様子を確認してから、体をほぐすようにしながら歩き出していたのよ! まるで、寝起きで体が鈍っているような様子だったわ」


 アリアリーシャの解説を2人は聞いているが、その理由について理解できない様子で黙って聞いていた。


「あの人は、戦う相手は全部確認していて、何種類かの戦う方法を考えて戦いに挑んでいるんじゃないかと思うの! そして、戦う寸前の様子を確認してから、どういった戦い方をしようか決めていると思うのよ! だから、あの人は控室の入口で立ち止まってレオンの様子を確認していたの」


 レィオーンパードは、指摘されて相手が会場を歩いている時、体をほぐしていた時の事を思い出していた。


 その様子から、試合前のウォームアップが出来てなかったのかと思ったようだが、それも作戦だったのかと思えてきたようだ。


「レオン! 相手の腰に剣が2本あったのだけど見ていた?」


「う、うん」


 その答え方から、アリアリーシャは面白くなさそうな表情を向けた。


「あんた、見てなかったわね」


「い、いや、見てたよ。それに抜いた剣が、にいちゃんの剣に似ているっていうか、そっくりだったんだ」


 その答えにアリアリーシャはガッカリしたので、レィオーンパードは、何でアリアリーシャがガッカリしてしまったのか分からないと表情に出した。


「最初の行動も、それにジュネスの剣と同じような木剣を使ったのも、腰に残してあった短剣に意識を向けさせないためだったのよ! あの人は、最初から、腰に残していた短めの木剣で仕留めるつもりだったの! 私の試合を見ていたら、短剣で攻撃されるだろう事は、頭に入っていたはずです」


 指摘されたレィオーンパードは、全くその通りだと反省したような表情をした。


 しかし、その話を聞いていたアンジュリーンは、何か疑問を感じたようだ。


「ねえ、アリーシャ。そこまで分かっていたのなら、なんであのランキング4位の人に負けてしまったの?」


 アンジュリーンには、素朴な質問だったのだが、その質問を聞いたアリアリーシャは、痛い所を突かれたと、苦虫を噛んだような表情をした。


「……」


「……?」


 アンジュリーンは、黙ってアリアリーシャの回答を待っており、レィオーンパードは、何でそんな質問をするのかと不思議そうにしていた。


 アリアリーシャが何でそんな表情をするのか疑問に思ったようだが、その沈黙が続くのをアリアリーシャが嫌った。


「わ、私も、試合の後に気がついたのよ」


 恥ずかしそうに、少し小さな声で答えた。


「ん?」


 アンジュリーンは、良く聞こえなかったので、聞き返すような仕草をした。


「私も最初は腰に付けた短剣に気が付かなくて、後から気づいたのよ!」


 開き直ったようにアリアリーシャは答えた。


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