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後期の武道大会  準々決勝に挑むジューネスティーン2


 次席と対戦した7位の選手が控室に戻ってくると、大会委員に第2試合に出るジューネスティーンが呼ばれた。


 ジューネスティーンは、フルメタルアーマーを改造したパワードスーツだった事から、歩く度に関節の擦る音や、左右の足が軽く当たる音がしたり、歩く振動によって、防具が揺れる音がしていた。


 しかし、動きは重い鎧を着込んだ兵士のように重そうに動く事は無かった。


 そんな中、控室に居る他の選手と、その付き人達は、ジューネスティーンの動きを観察するように見ていた。


 ジューネスティーンのメンバー以外は、重いフルメタルアーマーを着込んでいるのに、ベスト8に進出したジューネスティーンに興味があった。


 対人戦闘の試合であり、使う武器は木製となれば重装備は必要無いと誰もが思っていた。


 一般的なフルメタルアーマーであれば、装備の重さから反応速度が劣るだろうと思っていたが、ジューネスティーンは、見た目は重そうな装備なのに軽装備の相手とも速度で劣るような事も無く、むしろ、他の選手より早いのではないかと思う生徒もいた。


 間近で見る事ができると考えた生徒は、その理由を知ろうと視線を外す事なく動きを見ていた。


 しかし、その理由までは、歩いているジューネスティーンを見ただけで、理解できる様子は無かった。


 ジューネスティーンが運営委員の前に行くとお決まりの簡単な説明を受けている間も、パワードスーツを知らない生徒たちは物珍しそうに装備を見ていた。


 その説明が終わると、ジューネスティーンは会場に入って行った。




 ジューネスティーンが控室を出ていくのを控室にいた全員が見送っていた。


 そんな中、カミュルイアンだけが微妙な表情で見送っていたのを、レィオーンパードが見逃さなかった。


 レィオーンパードは、カミュルイアンの側によってきた。


「カミュー」


 カミュルイアンは、レィオーンパードが声を掛けるまで、ジューネスティーンの立ち去った扉を見ていたので、声を掛けられるまで近くに来ているレィオーンパードに気が付かなかった。


「大丈夫?」


 カミュルイアンは、自分が負けた相手と試合を行うジューネスティーンに特別な思いがあった。


 試合中に受けた剣が、そのまま押し切られて腕に当たった事により深傷を負ってしまい、結果として、その後の敗者復活戦を棄権していた。


 その相手と対戦する事になったジューネスティーンに、勝って欲しいという期待と自分のようにケガをさせられるのではないかという不安があった。


「う、うん。オイラは大丈夫だけど、ジュネスはどうなのかと思ってただけだよ」


「にいちゃんなら、大丈夫だよ。必ず勝って帰ってくるよ」


 不安そうなカミュルイアンにレィオーンパードは安心した様子で答えた。


「にいちゃんは、あまり、感情を表に出さないけど、大事に思っているカミューにケガをさせたあいつの事を面白く思っていないはずさ。実は、腹の中は煮えくりかえっていると思うよ」


 カミュルイアンは、入学からの付き合いで、まだ、1年も経っていないが、レィオーンパードは、転移後からの付き合いで寝食を共にしていた事もあり、カミュルイアンの知らない部分をよく知っていた。


「そうだね。ジュネスは、きっと、無事に勝って帰ってくるよね」


 カミュルイアンは、安心した表情になった。


「じゃあ、一緒に、にいちゃんを応援してあげよう」


 レィオーンパードに促されて、カミュルイアンも観戦のためにアンジュリーン達の方に行き観戦用の窓に並んだ。




 会場に入ったジューネスティーンは、中央にある試合場にゆっくりと歩いていく。


 会場の観客は、次席の試合が終わった後ということもあり、多くの生徒は、隣同士で会話を楽しむ者と、今の次席の試合についての解説をお互いにしていた。


 ジューネスティーンについて、観客の反応は冷ややかで、首席を倒した1年生だからと注目している者も居たが、まだ、首席の初戦だったこともあり、ジューネスティーンは運が良かった程度にしか見てない生徒が多かった。


 そして、貴賓席の来賓達も1年生のジューネスティーンより、卒業が迫っていた相手の8位の生徒の方に注目していた。


 来賓達にもジューネスティーンが特待生である事を知らされており、卒業まで2年以上もあり特待生となれば、ギルドの囲い込み冒険者となり、自国の軍に勧誘しても靡いてくれるかも分からない事と、各国としても、そんな特待生を無理矢理勧誘してギルドと対立関係になる事を嫌厭した。


 ギルドは、魔物のコアの召喚獣以外にも、便利な魔道具を販売していた事から、その魔道具の輸出が止められたり輸出規制されても国として問題が発生しかねない事から、特待生に対して下手な勧誘はしていなかった。


 その為、来賓達の興味は、ジューネスティーンではなく、相手の選手に向いていた。


 ジューネスティーンの相手選手も、その事は理解しているので、観客席に自身の強さをアピールするように、軽く剣を振る剣舞を披露しつつ入場してきた。


 そんな相手をジューネスティーンは、特に気にする様子もなく、相手の剣舞に受けるような剣舞を舞う事もなく、ただ、呆然と、その様子を見ていた。


 そして、その剣舞が終わると、ジューネスティーンは、ガッカリしたようにため息を吐いた。


 その様子は、あからさまに相手に分かるようにしていたので、相手の選手は、面白くなさそうな表情でジューネスティーンを見た。


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