後期の武道大会 大会の概要とギルドと各国の関係
後期の武道大会は、各学年のランキングに大きく影響してくるので、何回戦まで勝ち上がったか、誰に負けたか、その時の試合内容、その負けた時の対戦者が何処まで勝ち上がったのかが大きく影響する。
2年生の一部以外は、この後期の大会が3回目の大会となり、過去の大会から何回戦まで上がれたかも、対戦相手等の考慮も入る。
しかし、1年生は、一部を除いて前期の武道大会に出場はしていなかった事から授業中の模擬戦等から教授陣の採点のみでランキンが決まっていたが、全員が参加する後期の武道大会の結果は、ランキングに大きく影響する。
ベスト8が確定しているジューネスティーンとレィオーンパード、6回戦のアリアリーシャ、カミュルイアン、5回戦のアンジュリーンより上位の成績の1年生は居なかった事から5位までの顔ぶれは確定している。
他の生徒は、何回戦まで勝ったか、負けた相手が何処まで勝ち上がっているかにより分類され、同等の成績ならば大会前のランキングを参考にされ決定される。
そして、3年生にとって、この後期武道大会は集大成となり、卒業後に魔物を狩る事を生業として生きていくため、結果を残したいと誰もが考えていた。
そんな3年生には冒険者になる以外の別の道も待っていた。
それは、観客の中には各国の重鎮や、その護衛の親衛隊、中には軍の人事部も含まれる事もあり、その目に止まれば、場合によっては大陸のいずれかの国の軍への入隊も考えられる。
大陸では国家間の戦争よりも、自国の魔物への対応の為に軍隊を組織している傾向にあり、ギルドの高等学校の卒業生の中に有望な人材を見つけては、自国の軍隊へ引き抜いていた。
軍隊であれば、安定した収入を得れるという事から、提示された給与や階級によっては入隊する生徒もいる事から、各国の来賓の中には人事権を持った軍人も含まれていた。
そんな来賓達は、今年の3年生は有望だという話から、いつも以上に多かった。
今年の卒業生の首席次席の2人の戦い方を見る目的もあったが、セカンドグループにおいても有望と前評判が高かった事から今年の来賓の数は多かった。
しかし、序盤で大きな番狂わせのお陰で、ギルドとしては急いで敗者復活戦を立ち上げていた。
ギルドとして、学校の卒業生が冒険者ではなく、各国の軍隊に入ってしまったとしても問題は無い。
各国の軍隊の目的が、他国との戦争のためではなく、自国の魔物の討伐が主な目的となっている事と、各国の軍隊が狩った魔物のコアは、必ずギルドが買い取る事になるので、ギルドの高等学校の卒業生が冒険者になっても各国の軍に入隊しても問題は無かった。
それは、魔物のコアの活用方法はギルドが独占している事による。
ギルドが集めた魔物のコアは、ギルドが召喚獣として元の魔物の形に戻るが、魔物のように人を襲う事はない事から、ギルドの魔物は労働力として提供しており、その収益が莫大なものとなっている。
魔物のコアによって召喚される労働力としての魔物は、ギルド以外にノウハウがない。
ギルドは、魔物のコアから召喚された魔物について、人の命令を聞かせる方法を独占しており、そのノウハウを完全秘匿した事によって莫大な利益を得ている。
各国の研究機関でも研究は行われているが解明までに至ってない事から、各国の軍隊が魔物を倒して得た魔物のコアは自国で召喚できない為、ギルドが買い取り召喚獣の労働力として提供している。
それは、多くの農業奴隷が行なっていた重労働が無くなり、道路の整備のような各種インフラの整備の労働力を、ギルドが貸し出す召喚した魔物が行なっている。
魔物が、田畑を耕したりインフラ整備の労働力として働く事になった事により、人は重労働から解放された。
中には、自身の土地を持ちたいと、農地ではない土地を購入し、ギルドから借りた魔物の強力な力を利用して、新たな土地を開墾していく者も出て、場合によっては、国策として新たな開墾もギルドから借りた召喚した魔物の労働力によって行われていた。
その結果、各国から飢餓が大きく減り、そして、各国の経済も安定していた。
ギルドの高等学校を卒業して冒険者にならず、各国の軍隊に入ったとしても、ギルドとして冒険者の不足につながる事はなく、軍隊で組織的に討伐される事によって、魔物のコアの供給量が減ることはない。
軍隊が倒した魔物のコアは、軍から、その国にあるギルド支部が買い取る事になり、全てギルド本部に運ばれる事になっていた。
そして、ジューネスティーンが入学する前の年に、大陸で唯一ギルド支部の無かった大ツ・バール帝国にもギルド支部が出来たことで、大陸全ての国にギルド支部が出来た。
ギルドは大陸の全ての国から魔物のコアを買い取る事が可能となった。
ギルド支部は、購入した魔物のコアを、全部、ギルド本部に運んでいた。
秘匿している魔物のコアの召喚術は外界から遮断されたギルド本部内で加工していた。
ギルド本部は、建物というより外界から遮断された都市となっており、魔物のコアから、人の言う事を聞く魔物の召喚術を完全に秘匿するために、ギルド本部内で自給自足可能な都市を作って、ギルド本部の内部へは人の出入りが不要になっていた。
ギルドは、徹底して魔物のコアの召喚術を秘匿していた。
ギルドの高等学校を卒業した生徒が、冒険者にならずに各国の軍に入ったとしても、魔物を狩る各国の軍が強化される事になるので魔物のコアの収入が増える事に変わりはない。
むしろ、冒険者パーティーよりも、軍という大きな組織によって効率的に魔物を狩ってもらった方が良いので、卒業生の進路についてギルドも学校も束縛する事は無い。
その為、ギルドの武道大会の会場には、貴賓席が設けられており、その大会の中から自国に引き抜きたい生徒を見つける場となっていた。
ただし、特待生や転移者については、ギルドが目を光らせており、各国へ引き抜かれないようにしていた。




