後期の武道大会 準々決勝に挑むジューネスティーン
ジューネスティーンの相手であるH組を勝ち上がった者は、3年生のランキング8位であり、カミュルイアンに勝って、その際にカミュルイアンが敗者復活戦を棄権する程のケガを負わせた相手だった。
あまり、綺麗な試合をする相手では無かった事から警戒するに越した事はない。
「ジュネス! 最初の対戦相手は」
シュレイノリアが注意を促そうとすると、ジューネスティーンは、それを制するように右手を上げた。
「分かっている。でも、こっちは初期型とはいえパワードスーツだからね。防御されて入る部分も広いから、カミューとは大きく違うよ。ガードされて入る部分が広いから、狙う部分も限定される。だから、防御も限定的になるよ」
ジューネスティーンは、この大会にフルメタルアーマーを改造したパワードスーツで参加していたが、他の生徒は、フルメタルアーマーのような重い装備をすることはなく、動きを重視した軽装備で挑んでいた。
大会の規定で防具について大きな制約はなく、相手を傷つけそうな装備でなければ問題はない。
対人戦闘となる大会において、寸止めルールでもあったので、故意に傷つけない限り、大きなケガにならないと考えると、革鎧のような軽装備で動きやすさを追求していた。
そんな中、ジューネスティーンだけが、フルメタルアーマーを使用していた事から、大会前には、ジューネスティーンを見て笑う者もいた。
しかし、フルメタルアーマーを装備していたジューネスティーンに誰も敵わず、重装備な為、重さによる速度の低下を見越した戦闘を仕掛けられても、その速度についていき、ついには、ベスト8にまで進出していた事から、底なしの体力の持ち主と囁かれるほどだった。
ジューネスティーンは、入学前にフルメタルアーマーを改造して、肘と膝に蝶番を外側に2本取り付け、腕と二の腕、スネと太ももを包み込むようにガードするように覆われており、その人口関節を人工筋肉で繋ぎ力の増幅を行わせていた。
部分的ではあるが、外部の装甲を工夫して自身の力を増幅させていた。
極めて限定的ではあるが、力の増強がなされた、初期型のパワードスーツである。
体の動きを補助するための魔法は存在するが、強すぎる力は、人の骨格に跳ね返る。
筋力増強の魔法は存在したが、人体に大きな副作用から、骨折や脱臼など、大きな反作用によって、ケガの療養に数ヶ月を要したり、場合によっては引退を余儀なくされる事もあり、身体強化の魔法は好まれる事がなく使う人は少なかった。
その魔法の強すぎる力の反作用を受ける人体を守るために、ジューネスティーンは、肘と膝に蝶番を使った人工関節を作り、人工筋肉を魔法紋で動かし人の力を増幅させていた。
その強すぎる力の反作用を腕や足の外側に取り付けた蝶番の人工関節によって引き受けさせた。
しかし、単純な肘と膝は、既存のフルメタルアーマーを利用して加工することが可能だったが、足首、股関節、肩のような複雑な動きに対応するには、フルメタルアーマーのパーツを加工するだけで対応する事は不可能だった。
その為、フルメタルアーマーと人体の構造から、全てを見直して、新たに設計思想から考えなければならなかった。
その構想を、始まりの村のギルド支部に保護されていた寮内で黒板に描いていたものを、大陸一の豪商であるジュエルイアンに見られ、その内容をギルドマスターのエリスリーンに詳細が報告されていた。
そして、ジュエルイアンから、エリスリーンにジューネスティーンをギルドの高等学校へ入学させるように依頼していた。
その際、パワードスーツもだが、そこに使われる予定のパーツに大きな未来があるとジュエルイアンは判断したので、ジューネスティーンを特待生にさせて経済的な負担を抑えさせようとした。
しかし、パワードスーツの構想が、ギルドの支部でも本部でも評価が低かった事から条件付けされてしまっていたが、そんな中でもジュエルイアンは、ジューネスティーンの構想が気に入った事もあり、自分の保護下に有ったエルメアーナという、腕のいい鍛冶屋をジューネスティーンの入学予定の学校付近に開店させて接触させようとした。
特に、ベアリングの技術について、あらゆる工業製品に転用可能と判断され、ベアリングの開発をジュエルイアンは大いに注目していた。
その開発を行わせるために引き抜いていたが、ジュエルイアンがセッティングする前にエルメアーナとジューネスティーンが出会ってしまい、エルメアーナがジューネスティーンの日本刀に惚れ込み自身で日本刀を作り始めてしまった。
その剣は、今までの斬る剣の概念を変えてしまい、鋭い斬れ味なら剣が折れる前に獲物を両断してしまうので、細く薄い曲剣でも十分に強度が保て、取り回しも楽になったと喜ばれ1振りの剣が売れた後、一気に注文が押し寄せてきたので、その生産に追われてしまっていた。
その結果、エルメアーナの作業時間が取れなくなり、ベアリングの開発が遅れてしまい、ジューネスティーンのパワードスーツは、パーツ接続部分の加工待ちとなってしまったのだ。




