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後期の武道大会  敗者復活戦ベスト4


 アンジュリーンとアリアリーシャが入ってきた時、ジューネスティーンとレィオーンパードの控室では、2人のウォームアップを終えていた。


「2人とも、もう少しで決勝戦だったのに、惜しかったね」


「でも、2人とも3位決定戦に出るから、3位と4位だよ」


 アンジュリーンとアリアリーシャを見てジューネスティーンが声を掛けたので、レィオーンパードもつられて話し出した。


 しかし、その言葉を聞いてアリアリーシャは、少し面白く無さそうな表情をした。


「社交辞令は要りません! 私は、もう少しじゃなくてぇ完敗でしたぁ。考えられる事をぉ全部行ってもぉ、その上をぉ行かれてしまいましたぁ」


 語尾は伸びていたが、その声は低かった。


 アリアリーシャは、今の言葉を明らかに嫌味として捉えていたようだ。


「姉さんは、本気で考えて準決勝に臨んだが、アンジュは、のぼせ上がって戦ったから負けた。決勝に進めたはずなのに、油断から負けた」


 シュレイノリアは、状況を冷静に分析した結果だけをオブラートに包むような事もなく伝えたのでアンジュリーンはイラついた。


「ちょっと、何で、私は油断して負けたって事になっているのよ!」


「それが事実だ!」


 アンジュリーンの反論にシュレイノリアはアッケラカンと答えた。


「剣を忘れて会場入りして、対策している相手に、前回と同じ技を使って、簡単に逆撃を喰らって、自分の剣を叩き落とされてしまい負けている。それも、周りから使うなと忠告を無視して負けた。それに準決勝での敗戦は3位決定戦に回ることも忘れてた」


 アンジュリーンは、反論をしたそうにしているが、事実を簡潔明瞭に伝えられてしまい反論の余地がないので、顔を引きつらせて拳を握っていた。


「シュレ。その位にしておいてあげなよ。準々決勝で初めて決めた難しい技なら、もう一度使ってみようと思う事は良くある事だよ。まあ、試合中に初めて成功させたってところがアンジュらしいじゃないか。誰も練習で決まった事が無かった技を試合で使うなんてしないよ。そのアンジュの度胸の良さを褒めるべきだと思うよ」


 シュレイノリアは、黙ってジューネスティーンの話を聞いていた。


 ジューネスティーンとしたら、練習中に決まらない技を試合で使うようなことは行えないが、アンジュリーンは試合を行いながら、その技を成功させていたことから逆境に強い印象を持った。


 アンジュリーンの強気の性格だから、リスクを考えるより、成功した時の快感を求めて突っ走った事、無謀な賭けに出て勝利したが、続けて次の試合で使ったら、今度は逆撃を喰らうという経験をした。


 来年以降の大会もだが、卒業後の事を考えたら、この失敗は、アンジュリーンにとって良い経験をしたと言えるとジューネスティーンは考えた。




 ジューネスティーンの言葉は、試合直後のアリアリーシャからも、同じような事を聞いていたので、シュレイノリアは、少し言い過ぎてしまったと思い表情を曇らせた。


「そうだな、もう少し言い方を変えた方が良かったな。アンジュ、悪かった。許して欲しい」


 ジューネスティーンの言葉を聞き、シュレイノリアは、自身の言葉を思い出すと反省した様子でアンジュリーンに謝った。


 それを、アンジュリーンは、何とも言えないというように、表情を引き攣らせて聞いていた。


「もう、シュレはぁ、ストレートに言い過ぎですぅ」


「でも、1年生の後期の大会での失敗なら、良かったんじゃないかな。失敗は、早い方が被害が少ないからね。使い所を間違えたら、こんな負け方をすると理解できた経験の方が貴重だと思うよ。決勝に行くより、この負けは意味があるさ。きっと、この先、アンジュの準決勝の試合が役に立つはずだよ」


 シュレイノリアにストレートに言われたが、ジューネスティーンにフォローされた事で、アンジュリーンも少し落ち着いてきた。


「負けた事を、しっかり反省して、次に繋げることが出来れば、次はもっと良い成績をあげられるよ」


「そ、そうね。反省よね」


 アンジュリーンは、ジューネスティーンの反省という言葉が引っ掛かったようだ。


「アンジュ? なんだか、面倒臭そうな顔ですぅ」


 アリアリーシャに図星を突かれ、顔を少し引き攣らせ、それを、アリアリーシャがジト目で見た。


 その視線を嫌そうにしながら、周りと視線を合わせないように上を向いてしまった。


 そんなアンジュリーンを見ていたレィオーンパードは、不思議そうな表情をして、カミュルイアンに寄り添った。


「アンジュは、閃きだけで突っ走るから、試合の反省なんてできるの?」


「うーん、ちょっと難しいかも」


 2人は内緒話をするように言ったつもりだったが、当人には聞こえてしまっていた。


「ちょっと、2人とも、聞こえているわよ!」


 アンジュリーンは、2人の話を聞いてしまい釘を刺してきた。


 これ以上、2人に話をさせたら、レィオーンパードがカミュルイアンから自身の過去を話させるような気がし、それ以上の事を言わせないようにした。


「まあ、その位にしておこうよ。アンジュとアリーシャも3位決定戦で戦うんだし、レオンだって、これから準々決勝なんだから、お互いに今は、これから先の試合の事を考えようよ」


 変な話になってしまった事をジューネスティーンが話を切り替えた。


「ここからは、本戦の準々決勝と準決勝になるし、それが終わったら、アンジュとアリーシャの3位決定戦だからね。反省会は大会が終わった後にしようよ」


 それには、メンバー達も納得した。


 まだ、4人の試合が残っているので、試合に向けた方向に思考を戻していった。


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