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後期の武道大会  控室の入れ替え 2


 カミュルイアンは、アンジュリーンに呼ばれて次席の前に来た。


「初めまして、カミュルイアンです」


「ああ、もし、君が敗者復活戦に出てたら、面白い結果になったかもしれないね。でも、ケガだったら仕方ない。僕達は学校を卒業する事が目的じゃなくて、学校を卒業したところからスタートだからね。1年生の武道大会で無理する事は無いよ」


 カミュルイアンの様子を見つつ次席はカミュルイアンの棄権について肯定的な意見を述べた。


「もし、僕が、この大会で、同じようにケガをしてしまったら、きっと、君のように棄権するよ。通過点は、通過点の対応をする。無理してケガを悪化させたら、休む日数も増えてしまう。ケガを完全に治してベストの状態に持っていく。何が一番大事なのかを考えたら、学校の武道大会の一つや二つ棄権しても構わないさ」


 カミュルイアンは、3年生にとって最後の大会なのに、そこでの成績よりも、卒業した後の方が重要に思えたので、自身としては少し気持を落ち着かせられたようだが、次席の、そこまで割り切った考えでいた事に少し驚いたような表情をした。


 しかし、今の説明を聞いていたアンジュリーンは不安そうな表情に変わった。


「あのー、この大会ですけど、あなたは、片手間で参加しているのですか?」


 アンジュリーンは、片手間で対戦されて負けたのかと思って、思わず質問してしまった。


 その質問を聞いて、自身の言葉の意味を考えたら、アンジュリーンとの対戦は片手間で行っていたから槍を使ったのかと捉えられても仕方がないと思い、次席は、言葉を選び間違えてしまったと苦笑いをした。


「ああ、ケガをした時はって話だよ。試合には、万全な状態で真剣に取り組んでいるよ。だって、いい加減な気持ちで試合に臨んだら、僕がケガをしてしまうし、場合によっては相手にケガをさせてしまう。だから、試合はいつも真剣に取り組んでいるさ」


 それでもアンジュリーンの疑問は晴れない。


「では、何で、私の試合の時、槍を使ったのですか? 剣を使ったら、私は簡単に負けてしまったのではないですか?」


 その指摘に次席は、痛いところを突かれたと思った様子で顔を顰めた。


「ああ、あれは、この大会に勝ための手段だよ。槍に慣れておく必要も有ったから、君との対戦が、ギリギリのタイミングだったんだ。もし、あそこで槍を使わなかったら、僕は、勝ち進めないと思ったから使ったんだ。ま、でも、あれが、ここまでの試合で一番危なかったのは事実だ。君は、僕の槍術をギリギリまで追い込んだのだから、君は自身の強さを誇って良いと思うよ」


 アンジュリーンは、そうなのかと思っただけで、それ以上深く聞くのを止めた。


 そして、次席はアンジュリーンの様子を伺うようにしていた。


「あ、ありがとうございます」


 アンジュリーンは、次席に強いと言われた事を素直に喜んでお礼を言った。


 ただ、カミュルイアンは、黙って真剣な様子で聞いていた。


(今の話、何だか引っ掛かるけど)


「カミュルイアン君だったかな。ケガは、早く、完璧に治す! 学校は通過点で、僕達は冒険者として活躍する事が一番の目的だからね。その事を忘れないようにするんだよ」


 次席は、カミュルイアンが話を聞いて考え込んだのを見て声を掛けてきた。


「あ、はい。ありがとうございます」


 カミュルイアンは、声を掛けられてしまったので、その前に気になった事が抜けてしまった。


「それより、ここ、僕に使わせてもらえないだろうか?」


 別の事で話し込んでしまったが、本来の話に切り替える事で、余計な詮索をされないようにしていた。


「ああ、そうでしたね。すみません、時間を取らせてしまい、申し訳ありません」


「ああ、そうだったわね。直ぐに移動します」


「お話ししてくださりぃ、ありがとうございましたぁ」


 カミュルイアンが次席に言われて答えると、アンジュリーンもアリアリーシャも思い出したように答えた。


 そして、大して多くもない荷物を持って、その場から立ち去っていった。


 そんな中、今まで一言も喋らず、黙って会話を聞いていたシュレイノリアは、3人が出口に向かうのを確認すると、次席に一礼をして後を追いかけて行った。




 アンジュリーン達4人が控室を出ていくと、次席と一緒に控室に入ってきた生徒が近寄ってきた。


「おい、槍の事、何か聞かれていたみたいじゃないか? 大丈夫だったのか?」


 近寄ってきた生徒は、次席にだけ聞こえるように声をかけた。


「ああ、多分、大丈夫だと思う」


「……。思うって、どう言う事なんだよ」


「ああ、さっきの3人には、気付かれてはいないと思うけどね」


「3人? ああ、魔法職のシュレイノリアか。あれは、まともに話ができないそうじゃないか。だから、大丈夫じゃないのか?」


「ああ、それだと良いんだけどな」


「いずれにせよ、槍は最後まで取っておく事だな」


「そうするよ。あの2人以外は、授業でも手合わせをしているから、手の内をよく知っている。抜かりはないさ」


「そう有ってくれよ。今回の大会は優勝するチャンスなんだから、勝って卒業に花を添えてくれよ。それなら、俺達のパーティーも鼻が高いってもんだ」


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