後期の武道大会 弄られるアンジュリーン
アンジュリーンは、大会委員から次の試合について簡単な説明を受けた。
それは、3位決定戦に選手として出場するようにとの事、そして、その相手がアリアリーシャだと言われて驚いていた。
「えっ!」
アンジュリーンとしたら、トーナメント戦だった事から負けたら終わりだと思っていたので、3位決定戦の事が頭からスッポリ抜けていたのだ。
そして、アンジュリーンは、何でこんな事になったのか、全く理解できないといった様子でアリアリーシャを見た。
「ア、アリーシャ? 知っていたの?」
その言葉にアリアリーシャは、残念そうにアンジュリーンを一目見ると視線を落とした。
「私は、知らなかったアンジュが理解できないわ」
ここでも残念なアンジュリーンが出てしまった。
「姉さん、これがアンジュだ。超美人が何でも出来るようなら、私達のような一般人は立つ手がない」
アリアリーシャは、それもそうなのかと思い直したように顔を上げた。
「そうですよね。超美人が、何に関しても完璧だったら、私達は本当に、ただの引き立て役になってしまいます。ドジで美人なアンジュを支える私達がいるから、アンジュの美形も引き立つ訳ですねぇ」
そんな女子3人の会話をカミュルイアンは、少し引き気味に聞いていた。
(いやいや、アンジュの美形は理解できるけど、2人だってアンジュに劣らず美形だよね。シュレだって、可愛い系の美形に入るだろうし、座学ならジュネスとトップをはる程の才女でしょ。それに、アリーシャなんて、入学の時は、ガリガリの幼児体型だったのに、今じゃメリハリが有る体付きになって、周りからも小柄でグラマラスな美形キャラで通っているでしょ。オイラなんか、3人と一緒に居ると周りの男子から睨まれる事もあるよ)
カミュルイアンの様子を女子3人は、全く気にする事は無かった。
「ちょっと、2人ともドジドジ言わないでよ。ちょっと忘れていただけでしょ!」
アンジュリーンは、美人と言われて悪い気はしないようだが、ドジで残念なという部分が気に障っていた。
「私だって、ちゃんとやる時はやります」
そのアンジュリーンの反論を、アリアリーシャとシュレイノリアは、ジト目で見ていた。
「じゃあ、今晩の夕食の準備をお願いしましょうかしら? 私達のベスト4もですけど、この後のジュネスとレオンのお祝いも兼ねて、何か美味しいものを作りましょうか」
アリアリーシャが、提案すると、アンジュリーンは、困ったような表情をした。
「姉さん、それはダメだ。そんな事をしたら、寮が火事になってしまう。明日から私達の寝泊まりする場所が無くなってしまう」
「ああ、それなら、寮の厨房じゃなくて、中庭に釜戸とかを作って行って、後、シュレの水魔法を準備しておけば火事になっても大丈夫よ。心配ならアンジュの料理中は、シュレが天井代わりに上空に水の屋根を用意しておいたらいいでしょ」
「いやいや、それでは、包丁や料理道具が飛んでくるのを防げない」
「じゃあ、学校から大盾を借りて防げば良いでしょ。それなら調理器具程度なら、大盾を粉砕する事は無いでしょ」
「でも、食材がダメになって、結局、何も食べられなくなる。アンジュに調理をさせてはダメ!」
このツッコミには、アリアリーシャも流石に困ったような表情をした。
不器用なアンジュリーンに料理をさせる方法を考えてはみたのだが、機器や道具に対する対策は色々有ったが、食材については対策のやりようが無い事に気がついてしまった。
いや、2人は知っているのに、アンジュリーンを揶揄いたくて言ったようだ。
「うーん、困りましたぁ。やっぱり、アンジュは放置して、男子3人に手伝ってもらった方が安心してられますねぇ」
シュレイノリアとアリアリーシャが、アンジュリーンをネタに可笑しな掛け合いを始めると、カミュルイアンは、少しずつ後退りして、ネタにされているアンジュリーンは、表情が険しくなっていた。
カミュルイアンは、シュレイノリアとアリアリーシャの話を止めようと思うのだが、タイミングを外してしまい止められずにいたが、もう無理だと思うと、自身に被害が及ばないように考えた。
「ちょっと、2人とも、そこまで言うことはないでしょ!」
アンジュリーンが、低い唸るような声でアリアリーシャとシュレイノリアに声を掛けると、カミュルイアンはスルスルと離れていった。
「いや、大体は合っているぞ」
「そうですぅ。アンジュに料理をさせたら、今のような対策を行わないと危険ですぅ」
「いくら何でも、そこまで酷く言わなくてもいいでしょ!」
「いや、少しは盛ったかもしれないが、話の方向性は合っている」
「それより、何で、敗者復活戦の3位決定戦の話から、そんな話になるのよ! 私がドジなのは、分かっているから、そこまで言わなくてもいいでしょ!」
怒ったアンジュリーンを、シュレイノリアとアリアリーシャは、表情を変えずにみていた。
そして、お互いの顔を見た。
2人は、これ以上アンジュリーンを弄るのをやめておいた方が良いと思ったようだ。
何事にも、程々というものがある。
2人は、これ以上アンジュリーンを弄ったら、逆ギレされて洒落にならないと思ったようだ。




