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後期の武道大会  アンジュリーンのメンタルコントロール


 アンジュリーンの準々決勝は、4試合目に組まれていた。


 相手は、3年生のランキング10位となる。


 そして、その前の3試合目は、11位が14位を下していた。


 11位は、アンジュリーン達と同じ控え室だった事もあり、勝ち上がって控え室に戻ってくると、余裕そうにアンジュリーンを見てから、その控室から荷物を整理して、反対側の控室に向かっていった。


「アンジュ、勝てば、今の人が準決勝の相手だよ」


「ええ、そうね。それに、これから戦う人も、今の人と同じ、セカンドグループの人よね」


 カミュルイアンとアンジュリーンは、勝ち上がったランキング11位の去っていった扉を見ていた。


 3年生のランキングは、首席と次席がしのぎを削っており、その下にセカンドグループとして、3位から11位の9人がトップ2より劣りはするが、こちらも順位を入れ替えながら、こちらもしのぎを削っていた。


 今、勝ったランキング11位も、アンジュリーンがこれから戦おうとしているランキング10位もセカンドグループに名を連ねている。


 このグループに入っているという事は、11位も3位に劣らない実力を持っている事になる。


 アンジュリーンにとって、これからの試合は、負けた次席より落ちるにしても、勝ってきた相手はセカンドグループにも入らない相手だったが、敗者復活戦に入ってから、その相手にも少し苦戦をしていた。


 そして、アリアリーシャのように次の試合を考えて、目の前の試合を勝つような策も無い。


「アンジュ! 今の人の事なんて気にしちゃいけないよ。あれは、きっと、アンジュのメンタルを落とそうと、余裕ぶっていただけだと思う。アンジュなら次の試合も勝って、今の人にも勝つよ」


 カミュルイアンは、珍しく少し怒ったような言い方をしていた。


「アンジュ! 絶対勝って、今の人をギャフンと言わせてあげようよ! アンジュなら、次の試合に勝って、あんな目をしたアイツも倒せるよ」


 その言葉に、アンジュリーンは、救われたようだが、言われた相手がカミュリアンだった事が気に障った。


「カミュー、当たり前でしょ! 2人で頑張ってここに入学したのよ」


 アンジュリーンは、当たり前のように答えたが、表情は固かった。


「入学した事で終わりじゃないし、この大会だって、私達の通過点なのよ! それに、私達は、1年生なの! この大会が終わっても後4回有るのよ! 大会も、この学校も、どれも、私達の通過点なのよ!」


 アンジュリーンは、自分に言い聞かせるように言うと、その答えを聞いてカミュルイアンは安心した。


 また、少し、メンタルを落としていたように思えたのだが、それも無くなって、いいメンタルで試合を行えると思い、自分達が生きるための選択肢の一つとして、この学校への入学だった事を思い出させた。


 学校の大会が全てではなく、学校の大会も卒業も通過点にしか過ぎない。


 自分達の人生の中の、ほんの僅かな時間、ギルドの高等学校を使ってスキルアップする為の手段に過ぎない事を、カミュルイアンは思い出して救われたと思ったのだ。


 通過点の一つの大会、そのタイミングでケガをして棄権しただけだと思えたことはとても大きかった。


 そんなカミュルイアンとは別に、アンジュリーンは、気持ちを高めていた。


「カミュー! あんたの悔しさ、私にちょうだい! あなたの分も含めて勝ってくるから!」


 カミュルイアンは、そのアンジュリーンの言葉に救われたと思った。


「ああ、頼むよ! オイラの分も勝ってくれ!」


 カミュルイアンは、本気でアンジュリーンに答えていた。


 ここで終わりではないと、まだまだ、先が有るとアンジュリーンが自分に分からせてくれた事が、とても嬉しかったので、本当にアンジュリーンには優勝して欲しいと思えていた。




 第3試合が終わり、次の試合の準備が済むと、アンジュリーンが呼ばれた。


 第4試合を始めるから、選手のアンジュリーンを試合会場に行くように促された。


 呼ばれたアンジュリーンは、軽く肩を回すと控室を出て試合会場に向かった。


 その様子をケアを受けていたアリアリーシャも、ケアをしていたシュレイノリアも、アンジュリーンが呼ばれた事で、そのケアをやめてアンジュリーンを見送った。


「おい、カミュー! アンジュの奴、随分と良い顔をして出ていったな!」


 シュレイノリアは、アリアリーシャの身体のケアをしていたので、アンジュリーンの様子は見ていなかったが、その表情から気合の入った良い状態で試合に挑めていると感じた。


「いや、特に何も無いよ」


 カミュルイアンも晴れ晴れとした表情をしていたので、シュレイノリアは、その様子からカミュルイアンが上手くアンジュリーンのメンタルコントロールをしてくれたと思ったようだ。


「そうか」


 それだけ言うと、アリアリーシャのケアの続きを始めようとすると、アリアリーシャが、立ち上がって試合が見える場所まで移動した。


 その様子をシュレイノリア見ていただけだった。


「シュレ? アンジュの試合ぃ、見ないのですかぁ? 勝てるようにぃ祈ってあげましょうよぉ」


 シュレイノリアとしたら、今のアンジュリーンのメンタルなら勝って帰ってくると思ったので、アリアリーシャのケアをしようと思ったのだが、アリアリーシャは、仲間の試合を見たいと思った。


 2人の思いに少しギャップが有った。


 そんな気持ちの違いが、シュレイノリアには嬉しく思えた。


「これが、パーティーというものなんだな」


 シュレイノリアは、2人に聞こえないような小さな声で呟くと、立ち上がって2人の横に行きアンジュリーンの試合を見ることにした。


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