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後期の武道大会  転生した2人のエルフ


 ギルド歴777年に、初めて2人一緒に転移が確認された。


 それまでは、転移していくる人は1人だけだったので、ギルドの歴史上初めてのことだった。


 ギルドは転移者の保護も行なっており、転移者を見つけてくれた人や冒険者には高額な報奨金を出していた。


 そんなギルドの歴史の中で、初めて2人同時に転移者が現れたと、当時のギルドでは話題になっていた。


 中には、転移者だと偽ってギルドに子供を渡して、高額な報奨金を得ようとする輩も居るが、声を掛けたら直ぐに偽りだと分かってしまう。


 転移者は、転移前の言葉を使うので、その言葉の言語体系は大陸の、どの言語にも属さない事、そして、過去の転移者の言語について研究も進んでいた事から、何種類かの言語はギルド側に理解されていた事から、ギルドの目を欺く事は不可能に近かった。




 ギルド歴777年に転移してきた2人は、容姿の似ていたエルフの男女1組であり、後のカミュルイアンとアンジュリーンとなる。


 転移者は、常にその種族の10歳程度であり、人や亜人とエルフでは、成長が大きく異なっていた。


 エルフは、子供の頃の成長は、人や亜人の半分程度になるので、人の5歳程度となる事もあり、成長の遅いエルフは、ジューネスティーンやシュレイノリアよりも、もっと小さな、やっと物心が付いた程度の少年と少女だった。


 また、エルフは、第二次成長期を過ぎると、更に歳のとり方遅くなる。




 2人が同時に転移して、魔物に襲われた際、協力して魔物から逃げる為に魔物が上ることの出来ない近くの岩に上り、通り掛かった冒険者に助けてもらいギルドに保護された。


 そして、保護先のギルドから言語と一般常識を教えてもらい、数年が経過した時、2人は自身の将来について考える必要に迫られた。


 2人の選択は、冒険者になる事だった。


 冒険者になると、成長が遅いにも関わらず、小さな身体でも可能な狩りの方法を見出し、コツコツと魔物討伐を行なって、ギルド歴808年に、やっとの思いでギルドの高等学校に入学できた。


 しかし、入学してパーティー決めの際、ジューネスティーン以外のパーティーからは、全部断られてしまった。


 それは、40代のエルフは、人でいう15歳前後と同じ見た目な事もあり、身体も成長段階だったことによる。


 エルフの成人となれば、60代からと言われているので、冒険者としてパーティーメンバーに加えるには40代では若すぎる。


 中には、一緒にパーティーをという生徒も居たが、明らかに貴族の子弟で、自身の経歴の為に入学してきた輩であり目的は別の所にあった。


 エルフは男女共に整った顔立ちなことから、誰もが羨む事もあり貴族の間ではエルフを情婦とする人も居た。


 貴族の子弟ともなれば、若いエルフならば、そして、アンジュリーンもカミュルイアンも美形であり、自身が歳を取っても常に若いエルフを愛でることが可能と考え、卒業後は、家に連れていきたいと考えていた。


 入学時にパーティーになると、卒業後も一緒に活動することが多いとなれば、自身の領地の魔物狩りを理由に連れ帰る事も可能性が出てくる。


 口八丁で自身の領地に連れ戻れれば、その後は、情婦か小姓のように扱えると考え声を掛けてくる上級貴族の子弟は居た。


 そんな下心が見える相手は、大した実力も無いし、授業も卒業できる程度にしか考えておらず、授業よりもギルドとの繋がりを持つことに重視していた。


 アンジュリーンは、そんな相手の様子を見抜き、明らかに身なりの良い体つきが細い人からの誘いは断っていた。


 そして、メンバーに入れて欲しいと思ったパーティーからは断られていた。




 ギルド歴777年に、2人は転移してきたアンジュリーンとカミュルイアンは、その国も言葉も覚えた。


 生きていくための選択肢が限られている中、まともに職を得るには最低でも50年は掛かる。


 冒険者であれば、魔物のレベルを考えながら狩を行えば生き残れる。


 しかし、それ以外の選択肢となれば、容姿の良いエルフの子供という需要のある職業といえば違法な娼館となる。


 エルフの転移後の選択肢として、他人に自身の身体を預けるだけの生活をするか、50年もの下積みをしつつ冒険者になるかが、転移してきたエルフの選択肢といってよい。




 アンジュリーンは、その選択肢から冒険者になる事を選び、カミュルイアンは、アンジュリーンの考えに賛同した。


 そして、子供のエルフとして冒険者としての苦難の日々を過ごすことになった。


 そんな中、小さな子供の力では、剣や槍のような近接戦闘には向かない事に気がつき、2人は弓を選択するようになった。


 子供の力で届く弓では大した距離は稼げないが、隠れた場所からの狙い撃ちならば、そして、2人が別々の場所から狙う事によって、狩りの精度は上がった。


 最初に何方かが狙った獲物にヒットすれば、それで良いが、外した際は、もう一方が、その同じ獲物を狙う。


 別々の方向からの攻撃によって、相手を混乱させ、その隙を狙う事で狩りの効率を高めていた。




 しかし、ジューネスティーン達と一緒にトレーニングを行なったことから自身も強くなっており、この後期の武道大会の敗者復活戦とはいえ、ベスト8に残れ、優勝候補の一角に名を連ねられた。


 そして、今、準々決勝をアリアリーシャが勝てた事から、一時は喜んでいたが、その勝ち方についての解説を聞き、そんな事を自分が考えて戦っていなかった事から自信を失った。


 しかし、カミュルイアンに言われて、また、気持ちを取り戻せていた。




 カミュルイアンは、自分のケガによって出場を見送った。


 ギルドの高等学校に入学するまでの、31年間の長い道のりは、決して楽ではなかった。


 2人は一緒に苦楽を共にしてきたので、アンジュリーンが敗者復活戦とはいえベスト8に入れた事を見て報われたと思っていた。


 そして、自分の事のように嬉しく思えていた事から、アンジュリーンにはもっと勝って欲しいと考えていた。


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