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後期の武道大会  アンジュリーンとカミュルイアン


 アリアリーシャの準々決勝について、シュレイノリアの解説を聞いていたアンジュリーンは引き気味にしていた。


(ちょっと、どういう事なのよ! なんで、そこまで考えて戦えるのよ! しかも、今の相手は、3年生のランキング5位よ! 格上の相手に、そんなことまで考えて戦ってたの?)


 今、アリアリーシャが対戦したのは、ランキング5位だったが、アンジュリーンの対戦相手は、3年生のランキング10位となる。


 3年生は、首席と次席のトップ2と3位から11位のセカンドグループが有名だった。


 5位と10位とランキングに違いがあるとはいえ、セカンドグループと言われるのだから、その中で順位の入れ替わりはあったと思われる。


 本戦で負けた3年生の次席と、いい試合はしたけれど負けており、敗者復活戦で戦った相手は、3年生の63位と15位になり、そこにアンジュリーンは少し手間取っていた。


 また、本戦2回戦で戦った34位と3回戦の31位には勝っていたが、次席と対戦して前に勝てた2人の3年生とは、圧倒的な力差を感じていた。


 アリアリーシャが、次の首席との対戦に対しての策を講じながら戦っていた事を考えると、アンジュリーンは、次席との敗戦が頭をよぎり、初めて対戦する3年生のセカンドグループに不安を感じた。


「アンジュ?」


 その様子に気がついたカミュルイアンは、隣で不安そうにしているアンジュリーンに声をかけた。


 しかし、アンジュリーンは、その声に気がつく様子がない。


「アンジュ!」


 今度は、少し大きめの声だったので、アンジュリーンは、肩を跳ね上げるようにした。


「カミュー! 隣で大声出さないでよ」


 ビクッとした事を誤魔化すようにアンジュリーンは強い口調で答えた。


「アンジュが、何か思い詰めていたようだから気になったんだ」


 カミュルイアンは、アンジュリーンの顔を覗き込んだ。


「やっぱり、準々決勝、不安なんだろ!」


 アンジュリーンは、図星を突かれたという表情をした。


「な、な、何を、言うの、かな」


 明らかに動揺していた。


「あのね、オイラもアンジュもメイン武器は弓なんだから、剣の試合でここまで勝てた事は誇っていいと思うし、剣や槍を使う人達からしたら羨ましい話しだと思うよ」


 カミュルイアンも弓がメイン武器であり、6回戦で負けてしまい、その時に負傷してしまっていた。


 そして、敗者復活戦の出場権利も有ったが、今回は出場辞退している。


 もし、出場して5・6回戦を勝ち上がっていたら、準々決勝で首席を相手にしていたかもしれないのだ。


 準々決勝に上がっていたらと考えると、カミュルイアンは悔しさがあった。


 しかし、その様子を表に出すような性格ではなく、そして、勝ち上がったアンジュリーンとアリアリーシャには、もっと勝って欲しいと思っていた事もあり、不自然な様子のアンジュリーンの気持ちを元に戻してあげようとしていた。


 アンジュリーンは、予備武器の剣で上位に上がれたと言われて、その通りだと思ったようだが、カミュルイアンに言われて気がついたと思う事が気になり、手放しで喜べてはいなかった。


「まあ、実戦で弓だけしか使わない状況を作り出せればいいけど、万一、前衛を突破された時のために剣も覚えておいて損は無いと思っていたわ。だから、剣だって真剣に取り組んでいたわよ」


 何か、無理やり自身の気持ちを隠すように、無理矢理絞り出したようにアンジュリーンは答えた。


 それを聞いていたカミュルイアンは、アンジュリーンを落ち着かせるために何かないかと考えていた。


「ねえ、アンジュは、トーナメントの山の配置って、どうなっているか分かる?」


 カミュルイアンが聞くと、何を聞くのかという表情をした。


「アンジュの位置って、右端だったよね」


 言われて、その通りだと納得していた。


「それに、A・B・C・D・E・F・G・Hって別れていたでしょ。あれって、ランキングによって本戦は組まれていたから、最初は、1位から8位が振り分けられるんだよ。だから、アンジュのB組って、順当なら優勝する相手と最後に対戦する位置なんだよ」


「ああ、そういえば、あの対戦相手を決めるのって、どうやって決まってたのかしら」


 アンジュリーンの反応にカミュルイアンは少し残念そうにした。


 トーナメントの決める際に抽選もせず、運営側が決めていたのは、学内ランキングにより順位決めされており、その順位によって当てはめていた。


 誰もが知っている事だったのだが、アンジュリーンの反応は、今、初めて聞いたという態度だった事がカミュルイアンには少しショックだった。


「アンジュ、1年生のランキングは、教授たちが授業の成績を見て決めているはずなんだけど、アンジュはB組で勝ち上がったから、あの中ではランキング2位と同じ扱いなんだよ」


 その説明を聞いて、なんとなく、理解はできたような表情をするのだが、完全に理解したとは言い難い表情をした。


「だから、準々決勝の対戦は、A組対H組、B組対G組、C組対F組、D組対E組なので、1位と8位、2位と7位、3位と6位、4位と5位が対戦するように組まれているから、アンジュは、2位の場所に居るんだよ。アンジュは、そんな強敵を倒して、学内の2位の位置に居るんだよ」


 そこまで説明を聞くとアンジュリーンも納得できたようだ。


(まあ、敗者復活戦だから、学内ランキングとしたら、9位辺りなんだけど、敗者復活戦には首席もいるし、それに、アンジュが、その気になってくれたら、それでいいか)


 カミュルイアンは、アンジュリーンの表情を確認しつつ、試合に向けてのメンタルアップに努めていたが、それは、アンジュリーンには伝わっているようには見えなかった。


「ああ、そうなのか」


 そして、ニンマリとした。


「私は、ランキング2位と同じ待遇だって事なのね」


 カミュルイアンは、アンジュリーンが、やっと、理解してくれたと思うとホッとした表情を見せた。


(なんで、アンジュは、いつもオイラが説明しなければいけないのかなぁ! でも、不安は消えたみたいだね)


 そして、カミュルイアンは、何かを思い出すような表情をした。


(まあ、アンジュは昔から、こんな感じだったから、仕方のない事なのか)


 カミュルイアンは、少し残念そうな表情をした。


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