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後期の武道大会  アリアリーシャの準々決勝 2


 アリアリーシャが控室に戻ると、メンバーの3人が迎えてくれた。


「おめでとう、アリーシャ」


 扉の一番近くにいたカミュルイアンが、最初に声を掛けてきた。


「よかったわ、アリーシャが勝ってくれたから、弾みがついたわ」


 アンジュリーンは、アリアリーシャが勝った事で、自分も勝ちたいと思う気持ちが強くなってきたと感じていた。


 自分自身も第4試合が待っている事もあり、事前に仲間の勝ち試合を見れた事で気持ちも上がってきていた。


「なかなか、面白いことを考えたな」


 2人が勝ちを祝福している中シュレイノリアは、少しニヤけた表情で声を掛けた。


「次の試合の事を考えていたのか」


「そうですぅ」


 シュレイノリアの言葉にアリアリーシャは嬉しそうに答えた。


 アリアリーシャは、その一言で自分の考えていた事がシュレイノリアが理解してくれていて嬉しかった。


「あれは、冷静に対処してくる相手には不向きな技だ! ジュネスは、2回戦で使ったが、それ以降は使ってないからな」


 シュレイノリアは、自身が使ったような口ぶりで話し始めた。


「あの技は、使い所を間違うと叩き落とせない! その為に、入場も、あの試合だけ、ゆっくりにしたのだな」


「そうですぅ、シュレにはぁ、分かってしまったみたいですねぇ」


 アリアリーシャは、いつものように相手に合わせて早足で会場に入るのではなく、自分の歩幅に合わせ、歩くテンポも早くせずに向かった事によって、相手を焦らすことができた。


 相手の精神状態を乱す事により、ジューネスティーンが使った技を自身も使う為に最善の形を取った事になり、そして、思惑通り、相手は焦れてしまい、正常な判断を通常より出来ない状態に追い込んだのだ。


 全ては相手の剣を絡めて落とすための布石を控室から出た時から考えての行動だった。


 シュレイノリアは、一部始終を見て、その結果から、その前の行動を考えると話した通りの結論に至った。


 そして、この試合は、アリアリーシャにとって、次の試合に結ぶための布石でもあるのだ。




 アリアリーシャの身長は130センチと、一般的なウサギの亜人の100センチに比べると長身の部類に入るが、他の種族からしたら子供程度になってしまう。


 そのため、冒険者になるウサギの亜人は少なく、居たとしても魔法が使えるならという条件が付いていた。


 体の小さなウサギの亜人は、力が弱く冒険者に向かないと言われていた。


 そんな中、冒険者になってしまったアリアリーシャは、入学前も入れてもらえるパーティーも無くソロで活動していた。


 可能な限り小さな魔物を目標としていたが、そうなると、その性質上、敏捷性の高い魔物が多かった事もあり、体の小ささと体重の軽さから、動き回って相手の死角をつく事を得意としていた。


 そして、ギリギリの生活によって、ギルドの高等学校へ通えるだけの資金を調達して入学してきたのだが、誰もが、アリアリーシャの耳と身長を見るとパーティー加入を断られてしまった。


 そこに、あぶれていたジューネスティーンが声を掛けてくれたのでパーティーを組むことになった。


 最初は、弱いと見られていたが、ジューネスティーンの筋力作りに付き合うことになり、そして、食事の心配も必要無くなるとアリアリーシャは、筋力も付ける事ができ、今まで生かしていた敏捷性にも磨きがかかった。


 そして、ジューネスティーンが、開発した鋼鉄と軟鉄の貼り合わせるこ事により、軽量かつ強度も保てる剣を開発していた。


 その剣の製法を学校近くに鍛冶屋を営んでいた、帝国出身のエルメアーナに作り方を教えた事により、そのお礼として、完成度の高い剣をメンバー全員に作ってくれた。


 その後は、その剣に似合った剣技もジューネスティーンから教えもらえ、その中に曲剣の反りを利用して相手の剣を絡める剣技を教えてもらっていた。


 アリアリーシャは器用だった事もあり、ジューネスティーンの剣技は、ほとんどマスターしていたので、その剣技の長所と短所もよく理解していた。


 この剣技は成功の確率が低い事も理解していた、アリアリーシャとしては、何度も使いたいと思うような技では無かった事もあり、この大会において、今まで使う事も無かった。


 しかし、これが首席との対戦で確実に成功する可能性と考えたら、ジューネスティーンに使われて負けている首席に対して、アリアリーシャが同じ事を行なって成功する可能性はゼロに近い。


 首席を取るような相手が、同じ技で2度も負けるとは思えなかった。


 それなら、準決勝で当たる前の、この準々決勝で、その技で勝ったと見せつけることが、一番有効な手段だと言える。


 相手に、お前が負けた時の技を自分も持っているのだと、見せつけることによって、相手にプレッシャーを与えることになる。


 その心理的な効果を狙って、アリアリーシャは使ったのだ。


 そうでなかったら、成功率の低い剣技を、リスクを背負ってまで使おうとは思っていなかったが、成功した事によって、首席の選択肢が一つ減ることになる。


 アリアリーシャは、そんな事を考えていたので、次に対戦する首席と対戦するにあたり大きな布石となった。


 その事をシュレイノリアも見抜いていた。


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