後期の武道大会 敗者復活戦の準々決勝
敗者復活戦のベスト8に進出した8人により、準々決勝が始まり、今度は全員が試合会場に付属している控室に常駐しているようにと言われていた。
そして、これからは試合間隔も短くなる事から、シュレイノリアとカミュルイアンが付き人になった。
準々決勝は、第2試合のアリアリーシャも、第4試目のアンジュリーンも同じ控室になった。
それは、D組のアリアリーシャとB組のアンジュリーンなので、準決勝も同じ控室になる事から、付き人のシュレイノリアもカミュルイアンも、少しの間、一緒に居れる事になる。
シュレイノリアとしたら、ケガをしているカミュルイアンの様子も気になっていたので都合が良かった。
2人が別室に移るのは、D組のアリアリーシャが決勝戦に進んだ時だけとなる。
そして、優勝候補の首席は、アンジュリーン達とは反対側の控室に入り、第1試合が首席の試合となっている。
そして、第2試合のアリアリーシャ勝ったら次の相手は、この勝者となるので、4人は控室の窓から覗ける場所に移動して、観戦できるようにしていた。
敗者復活戦、準々決勝の開始が主審によって宣言されると、アンジュリーン達の控室から、首席の対戦相手である、ランキング25位が呼ばれ、控室から試合会場に向かって行った。
その様子をアリアリーシャが、面白くなさそうに見ていた。
「ああ、ダメだ」
そう小さな声で呟くとアリアリーシャは、窓から離れて身体を動かし始めた。
「ねえ、アリーシャ。 試合、見ないの?」
カミュルイアンが心配そうに尋ねた。
「ダメよ! あの様子だと、瞬殺されるわ! だから、私の試合の用意よ! こっちは、ランキング5位との試合なの! そんなに簡単に勝てる相手じゃないの! だから、万全を期す必要があるのよ!」
アリアリーシャは、ムッとした様子で答えると、ストレッチをして、身体を伸ばしていた。
「ああ、一応、カミューが確認しておいてね!」
そんなアリアリーシャを見ていたカミュルイアンは、そんなものなのかと思うような表情をしつつ窓の方に顔を向けた。
準々決勝の初戦は、A組対H組となる。
首席と25位の対戦となるが、首席の5・6回戦の相手であるランキング16位よりも下位の相手となる。
そして、アリアリーシャは、控室を出る25位を見て直ぐに準備のためのストレッチを始めた。
(あの25位は、直ぐに試合は終わるわ)
試合会場に向かう25位の様子を見て、その表情から勝てる見込みがなさそうだと判断すると、今まで通りの試合結果になるだろうと予想したのだ。
そうなれば、自身の試合が早いと思った事から、いつでも試合に出れるように身体を動かし始めていた。
そして、身体を動かし始める事で気持ちも作っていき試合に備えるのだ。
「アリーシャ!」
身体を動かしていたアリアリーシャにカミュルイアンが声を掛けると、アリアリーシャは、身体の力を抜いて整体すると大きく深呼吸をし、声を掛けてきたカミュルイアンに真剣な表情で視線を送った。
「決まったよ! 首席の勝ちだ」
カミュルイアンは、前の試合の結果を伝えると、アリアリーシャは、試合の結果も、その掛かる時間も予想していた通りだと言わんばかりの表情をした。
「アリーシャ」
アンジュリーンは、心配そうに名前を呼ぶが、アリアリーシャは自信に満ち溢れた表情をしてアンジュリーンを見た。
「アンジュ! よく見てなさい! 強さを見せつけるって、どんな事だか分からせてくるわ」
アンジュリーンは、対戦相手が5位と3年生の中でも、かなり、上位だった事が気になっていた。
「何、心配しているのよ! レオンが勝った相手よ! 私が負けるわけないでしょ!」
アリアリーシャは、いつものような語尾を伸ばすような喋り方はせず答えると、実行委員から会場へ入るように言われた。
「じゃあ、行ってくるわ」
アリアリーシャは、控室から会場に向かった。
それを黙ってシュレイノリアは見送ると、アンジュリーンの様子を伺った。
その表情には、僅かだが不安が有るとシュレイノリアは思ったようだ。
「アンジュ! あれは、問題無い! 勝って戻ってくる」
シュレイノリアが、心配そうなアンジュリーンに声を掛けた。
アンジュリーンは、納得するような表情をしたが、まだ、少し心配そうな部分は残っている。
それは、4試合目は自分の試合となるので、自身の試合に対する不安も残っていた。
(アリーシャが勝てたら、私も勝てるような気がするのよ! だから、勝ってよ!)
アンジュリーンとしても、初めての大会で、しかも準々決勝という誰もが注目する試合となり不安な気持ちが隠せないのだ。
表には現れにくいので判別しにくいが、心の中では不安な気持ちはある。
今までは、カミュルイアンに勝ちたいという気持ちから、それを物色できていたが、カミュルイアンが棄権しており、敗者復活戦ではアンジュリーンの成績が上になった事から、これから先は、自身の気持ちに勝つ必要がある。
そんな気持ちを高めるために、アリアリーシャが勝って、自身にも勝ちたいという気持ちを高めたかった事から、そんな願いを込めて、アンジュリーンは、アリアリーシャを見送っていた。
その様子をシュレイノリアは、ジーッと見つめていたが、会場の方から主審が、選手に声を掛けたので、直ぐに視線を会場に戻した。
今、この敗者復活戦に残っているのは、アリアリーシャとアンジュリーンだけなのだ。
シュレイノリアは、2人を勝たせたいと思っていた。
そのアンジュリーンの表情の変化を気にしつつ、アリアリーシャの試合に集中した。
(今、私の考える事は、アリーシャ姉さんが負けた時に、アンジュの気持ちを高めるための事を考えておけばいいのか)
アリアリーシャが勝ったなら、アンジュリーンの気持ちは、自身も勝ちたいと盛り上がっていくだろうが、アリアリーシャが負けた場合、自分も負けるのではないかと思う気持ちを抑えさせる事だけを考えれば次の対処は簡単になる。
シュレイノリアは、考えをまとめると、アリアリーシャの試合に集中した。




