後期の武道大会 控室に使っている格闘技室
格闘技室にアンジュリーンとアリアリーシャが入っていくと、シュレイノリアが凹んだ様子で隅の方に座っていた。
アンジュリーンは、シュレイノリアを見つけた。
「ああ、シュレ! 勝ったわよ!」
アンジュリーンは、凹んだ様子のシュレイノリアを気にする事なく声をかけていた。
「私も、アリーシャも、ベスト8よ!」
試合前にシュレイノリアは、アンジュリーンの動揺を誘うような発言をしていたことを反省していたのだが、アンジュリーンは何も無かったようにシュレイノリアに声をかけた。
ただ、アンジュリーンとしたら、シュレイノリアを探していた時、最初に目に付いたジューネスティーン達の中に居たカミュルイアンが目についていた事もあり、ベスト8に進めた自分が、少し嬉しくもあった事から、機嫌良くシュレイノリアに声をかけていた。
「そうか、よかった」
シュレイノリアは、少しホッとしたようだ。
アンジュリーンの5・6回戦の前にアリアリーシャに対する気の使い方に文句を言ってしまい、口喧嘩をしても良いとまで思っていたのに、アンジュリーンが大人の対応をして乗ってこなかった事から口喧嘩にならなかった。
しかし、その事を後から、試合前にとんでもない事を言ってしまったと反省していたところに、アンジュリーンは勝って戻ってきた事で自身の責任から解放されたと思ったのだ。
そして、その時の事を気にするような様子も無く声をかけてくれた事により、さらに落ち着いた。
シュレイノリアは、アンジュリーンに寄って来た。
「さっきは、悪かった」
シュレイノリアは、素直にアンジュリーンに謝ったのだが、アンジュリーンは、何の事という表情でシュレイノリアを見た。
「試合前に言う事ではなかった」
そこまで言われて、アンジュリーンは思い出したという表情をした。
「ああ、そういえば、そんな事もあったわね」
すると、アンジュリーンはアリアリーシャを見た。
「アリーシャ、ごめんね。 私、自分の事だけ考えていて、アリーシャの事を何も考えてなかったわ。 準備運動がてら、アリーシャの相手もしたら良かったのに、私、本戦の時、5回戦で負けていたから、4・5回戦を勝つ事しか考えてなかったのよ」
「ああ、問題ないですぅ。 あの後にぃ、槍に対する研究も出来ましたからぁ、私もぉ、5・6回戦を勝てましたぁ」
お互いに勝てた事から、アリアリーシャも余裕があり、試合前のアンジュリーンの態度を特に気にするような様子も無かった。
それは勝利によって、多少の嫌なことなど忘れさせてもらえたようだと、分かった事からシュレイノリアも安心した。
「時間が空いたみたいじゃないか」
3人が集まって話をしており、その話もまとまったと見たジューネスティーンが声を掛けた。
「ええ、何でなのかは分からないけど、予定より時間が空いたみたいなの」
「ああ、ジュネスゥ、聞きたいことがぁ、ありましたぁ」
アンジュリーンが答えていると、アリアリーシャが声をかけながら、ジューネスティーンの方に寄って行った。
「首席とぉ、対戦した時の事をぉ、教えてぇ欲しいぃですぅ」
アリアリーシャは、いつにも増して、語尾を伸ばすようにしゃべっていた。
その様子をアンジュリーンは、面白くなさそうに視線を送りつつ、シュレイノリアの手を取って、ジューネスティーン達の方に向かった。
「ああ、首席の様子は私も聞きたいわ! 決勝戦で戦う事になるかもしれないから、一緒に聞かせてよ」
それを一緒に聞いていたレィオーンパードとカミュルイアンが驚いた表情でアンジュリーンを見たが、ジューネスティーンは落ち着いた様子で聞いていた。
2人は、ベスト8に入っただけなのに、準々決勝と準決勝が控えているのに、もう、決勝戦の事を考えているので、最初の2戦は勝ったつもりでいるのかと思ったようだが、ジューネスティーンとしたら、上を狙うつもりでいるアンジュリーンの志が良いと思ったようだ。
「ねえ、アンジュの山って、結構、厳しい山じゃないの? 今から決勝の事を考えるより、その前の準々決勝と準決勝の相手の事を考えた方が良いと思うよ」
「そうだよ、アンジュ姉ちゃんの対戦相手って、3年生のランキング10位だし、それに勝ったとしても、11位と14位の対戦でしょ」
「どっちも、3年生のセカンドグループが相手になりそうじゃないか」
カミュルイアンとレィオーンパードは、次の対戦相手の事を確認していたので、その対戦相手の事を差し置いて決勝戦の話をしてきたアンジュリーンに先走りすぎだと言いたかった。
しかし、アンジュリーンには、それが面白くなかった。
「何よ! そんな事言ったら、アリーシャの対戦相手は、ランキング5位よ! 私の10位と11位より、そっちの方が厳しいと思うけど! それに、ランキング5位を倒したのはレオンじゃなかったの? だったら、最初にレオンに相手の様子を聞いてからじゃないの?」
準々決勝の対戦相手として、最初に当たる相手は、アリアリーシャの方がランキングは高い。
しかし、2人は、どちらもランキングの3位グループということもあり、注意が必要だと言いたかったようだが、それが上手く伝わらなかった。
そして、正論もついていた。
「でもぉ、レオンがぁ、相手の事をぉ、よくぅ、覚えているとは思えないしぃ」
それを聞いて、レィオーンパードはムッとした。
「そんなぁ、俺だって、色々有るよ!」
「じゃあ、どうやって勝ったかぁ、教えてくれるかなぁ」
レィオーンパードは、一瞬、考えるような表情をすると、直ぐに困った表情をした。
「あ、ああ、グッと行って、パパって感じで、……、ガッてなって、ボンって感じだった」
それを聞いて、カミュルイアンは残念そうな表情をするが、アリアリーシャはやっぱりといった表情をしていた。
そして、言ったアンジュリーンは、レィオーンパードの語彙力の低さ思い出したというように、しまったという表情をした。
「アンジュ、レオンと5位の試合は、姉さんは前の試合になるから、控室で見ていただろうし、それなら、様子もよく分かっているんじゃないかな」
話が変な方向に進んでいたので、ジューネスティーンが話に入ってきた。
「だったら、もう対策は考えているだろうから、次の対戦についても考慮しておきたかったんだよ」
ジューネスティーンが、それらしい事を言ったので、アンジュリーンも納得するような表情をした。




