後期の武道大会 ジューネスティーン達の快進撃
敗者復活戦のベスト8が出揃った。
その中に、1年生のアンジュリーンとアリアリーシャの名前もあった。
二人の強さに対する評価は、大会前には、例年通り1年生では上級生に勝てるとは思われてなったが、大会の本戦で、ジューネスティーンとレィオーンパードがベスト8に進んでおり、敗者復活戦でも女子でありながら1年生が勝ち上がったことから、大会前の予想を大きく裏切っていた。
ギルド本部も3年生の首席が敗退した報告を受けて、急遽、敗者復活戦を組み込むほどに、大会に対する注目度が上がっていた。
そして、本戦も敗者復活戦もベスト8に進んだ1年生が4人とも同じパーティーだと聞き、さらに噂が広まっていた。
大会が始まって生徒達からは、特に3年生の首席から勝ったジューネスティーンについて賛否両論となり、優勝候補だと言う者が出始める一方、一瞬で勝ってしまった事から、そして、首席の初戦という事から、相手の油断に上手くつけ込んだと言う者とに分かれていた。
そして、本戦が進みベスト8まで進むと驚かれたが、3年生の次席と上位ランカーが勝ち上がっていた事から、1年生の快進撃はここまでだという意見が大半を占めていた。
しかし、敗者復活戦でも、ベスト8に1年生女子が2人も入り、その2人が同じパーティーだった事、そして、同じパーティーの1人がケガで棄権しており、敗者復活戦に出場権利があった1年生3人が同じパーティーだった事、そして、本戦でも5回戦と6回戦まで勝ち上がっていた事から状況が変わってきていた。
本戦ベスト8を決める6回戦に3人が残り、その前の5回戦で敗れた1人も次席と対戦して敗れていた事が分かると、このパーティーは何者なのだとなっていた。
そして、卒業を控えている3年生より、2年生の中で、この躍進が大いに気になっていた。
目立った話にはなっていなかったが、ジューネスティーンの3回戦の対戦相手は、2年生の首席だったが、ジューネスティーンは、その試合もあっさり勝っていた。
魔法職のシュレイノリアでさえ、1・2年生が対戦する1回戦は勝ち上がっており、2回戦で敗退してはいたが、その試合はどちらが勝ってもおかしくなかった。
今の2年生の実力では、ジューネスティーン達のパーティーメンバーに誰も勝てていない事から、次回の武道大会を気にする者が出始めていた。
2年生達は、3年生が卒業して最高学年になるが、ジューネスティーン達が2年生に上がって、最初に来る前期武道大会は、この6人が上位に入るのではないか?
2年生達は来年に向けて大会の上位に上がれるか、そんな不安を抱かせていた。
しかし、ジューネスティーン達のパーティーから4人も上位に入った事について面白く思っていなかったのは1年生達である。
1年生の殆どが、この大会からの参加となり、大半の生徒は1回戦を勝てずに敗退し、1回戦を勝てた人でも2回戦で3年生と対戦して負けていた。
そんな中、ジューネスティーン達は、6人の内5人が5回戦以上という成績を残していた。
入学当時の様子から、ジューネスティーン達6人に対しては、魔法を使えるシュレイノリアだけならメンバーに加えても良いと思っていたが、他の5人についての評価は最低だった事もあり、他の生徒達はパーティーに誘う事は無かった。
魔法職であるシュレイノリア以外のメンバー5人中4人が本戦と敗者復活戦のベスト8に進み、エルフのカミュルイアンも6回戦まで勝ち上がっており、もし、棄権していなかったら、敗者復活戦のベスト8に3人が名前を連ねていたのではないかと囁かれていた。
入学式の後に行われたパーティー決めの際、身長は有るが細身で力の無さそうなジューネスティーン、13歳と最年少だったヒョウの亜人であるレィオーンパードは完全な子供と見られ、アンジュリーンとカミュルイアンは、エルフの41歳だった事から、見た目は15歳程度にしか見えなく、まだまだ、発展途上であり、これから20年は戦力にはならないと判断されていた。
そして、アリアリーシャは、戦闘力が低いと言われているウサギの亜人だった事と、体の線も細かった事から貧弱すぎるからと戦力外に見られていた。
入学時は、自分達のパーティーに入れたら、お荷物になりそうだと敬遠した5人全員が、この大会で自分達より上位になっていた。
その事が悔やまれていた。
なんで、一人だけでもパーティーに入れておかなかったのか。
そのように囁かれていた。
しかし、ジューネスティーン達6人が、ここまで強くなれたのは、入学後の努力によるものであり、このパーティーとして一緒に行動していなかったら全員が後期武道大会で好成績を残せたとは思えない。
その辺りを理解している1年生は、まだ、少なかった。
人の強さというものは、毎日の鍛錬によって構築されるが、そんな努力を見えてなかったり、見る事を拒絶してしまっている人も多い。
そんな中、突然強くなった人が居たら、妬むような事を考えるのではなく、強くなった理由を考え同じ事をしたなら、その強さに追随するようにはなれる。
自身を反省し、強い相手から学び、全く同じ事を同じように行ったとしたら、それに近い強さは持てるだろうが、それ以上に強くなろうと考えたら、その強くなった人の行動以上の事をする必要がある。
何となく強いのではなく、6人は日頃の鍛錬によって今の強さを身に付けた事を知っているか?
大会後に、ジューネスティーン達の快進撃を見て、素直に教えてくれと言うか、嫌なら遠くから様子を探り何をしているか確認して、自身も同じように鍛錬するなら、それなりに力を得られる。
しかし、妬むだけで、変なプライドから自身の行いを悔い改めなければ、それ以上強くなる事はなく、むしろ、下位からの追い上げが増すことになり、気が付いた時には、当初の成績にはいられず順位を落とすことになる。
頭角を表す人が現れた場合、明確にその強さの秘訣を学ぶ姿勢が無ければ遅れを取り、その強さの秘訣を学んだ弱かった人達に追い越されてしまう。
ジューネスティーン達の躍進を見て、真摯に受け止め教えてもらおうとする者と、入学時に弱そうだとパーティー決めの際、彼らの誘いを断ってしまい、誘いを断ってしまった事を根に持ち自分の失敗を逆恨みする者と、今後は別れることになる。
後期の武道大会は、ジューネスティーン達が、どんどん成長してきた、その強さを結果として表した。
周囲は、その強さを受け入れ、その強さを自身のものにしようとする者達と、それを面白く思わない者達とに分かれてしまった。
それにより、自身の強さも伸びる前者、認めない事から自身の強さが伸び悩む後者に分かれる事になる。
1年生達にとっても、この後期武道大会は大きな転機になっていた。




