表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

275/1356

後期の武道大会  アンジュリーンの5・6回戦


 アンジュリーンの前の試合は、H組なのだが、カミュルイアンの棄権によって、相手の3年生の25位が先程の4・5回戦で勝っていたので、勝ち名乗りを言い渡されただけで戻ってきた。


 その様子をアンジュリーンは目を合わせないようにして、自身の名前が呼ばれるのを待っていた。


 その横を不戦勝を言い渡された3年生が勝ち誇ったように、視線を合わせないアンジュリーンを見ながら通り過ぎていった。


(今の何よ! あいつは、何で、私を見たのよ!)


 視線は合わせなかったが、相手が自分を見ていたことは、アンジュリーンにも分かった。


 納得したような表情をした。


(ああ、本来なら、カミューの試合だったのよね)


 そして、少し寂しそうな表情をした。


(あの人、確か25位よね)


 すると、少しムッとしたような表情をした。


(カミューがケガしてなかったら、きっと、カミューが勝っていたわ! それなのに、さっきの態度は何! あんな顔して、何で私を見た!)


 カミュルイアンの棄権で、今の相手が不戦勝で勝った。


 そして、希少種であるエルフで、しかも男女の双子となったら、噂になっていた事もあり、今の3年生は、兄妹の片割れに勝てたと喜んでいたのだろうと気がついたようだ。


(あいつめ! 私と対戦したら、合法的に剣を当ててやるわ!)


 すると、アンジュリーンが呼ばれたので、会場に入っていった。


 ただ、今の3年生の25位はH組なので、次の対戦相手はA組の勝者となる。


 A組は、ジューネスティーンの倒した3年生の首席が勝ち残っており、順当に勝ち上がれば、今の25位の相手は首席となる。


 そのため、アンジュリーンと、この敗者復活戦で戦う可能性は殆ど無かったが、試合に向かったアンジュリーンは、その事に気付く事は無かった。




 試合会場に立ったアンジュリーンは、ムッとした表情をして相手選手を見ていた。


 それは、相手が持ってきた武器が槍だったので、その事が気に食わなかったようだ。


 アンジュリーンが負けた3年生の次席が持っていたのも槍だった。


 そして、慣れない槍との対戦によって敗戦してしまっていた。


 相手は、3年生の15位であり、そして、どんな戦い方をするか全く分からなかった事もあり、アンジュリーンは、相手が自分の負けた試合を観戦して対策を立ててきたのだろうと考えたのだ。


(こいつめ!)


 しかし、アンジュリーンは、口の端を少しつり上げた。


 美人が、そんな顔をすると、品位が下がると思われるが、試合においては関係ない。


 そして、相手は軽く槍の型を披露しつつ歩いていた。


(絶対に勝ってやる!)


 アンジュリーンの表情を見た相手は、勝ち誇ったような表情をしていた。


 相手の3年生は、本戦の6回戦で対戦する相手は、3年生の次席とアンジュリーンの勝者だったので、二人の試合は見ていた。


 そして、次席は、いつもの剣ではなく、槍でその試合に挑んでいた。


 最初は、防戦一方だったが最後にアンジュリーンが間合いを詰めて一太刀浴びせかけたが、それも阻まれ、間合いを開けようとした時に胸を突かれて敗戦しているところを見ていた。


 そして、次の試合で、この3年生の15位は自責に剣で負けていたが、その試合をアンジュリーンは見損ねていたので、相手が槍が得意だったのか、アンジュリーンが槍の相手が不得意と見て持ってきたのか分からなかったのだが、アンジュリーンとしたら、後者だと勝手に思い込んで相手を見ていた。


 そして、相手は試合場に上がってから、また、槍の型を披露したので、主審に注意された。


 その様子をアンジュリーンは、鬱陶うっとおしそうに見ていた。


(あの人、次席の人とは槍の扱いが、違う!)


 相手は、軽く槍を振り回し、どうだと言いたそうな態度を取ったのを見て、アンジュリーンは、ムッとしていた、


(ふん! やっぱり、私の負けた試合を見て武器を槍に変えたってわけね! そんな腕で勝つ事なんてできないでしょ!)


 アンジュリーンは、自身の持った剣を強く握るが相手のように見せびらかすようなことはせず、黙って相手を睨んでいた。


「あらーっ! エルフで美人なんだから、睨むより笑った方が、可愛いのに!」


 相手は、蔑むような目でアンジュリーンを見ると、独り言のようにつぶやいた。


 しかし、その独り言は周囲に聞こえる声の大きさだったので、当然、アンジュリーンにも聞こえており、そして、それを聞いた主審は注意をしていた。


(はー、挑発みたいね)


 アンジュリーンは、少しガッカリした。


(さっきの相手といい、今回の相手といい、どうして、挑発的な事をするのかしら)


 そして、ため息を吐くように呼吸をした。


(でも、今の一言のおかげで、少し落ち着けた、かな)


 鋭い視線が、少し柔らかくなった。


(そう、勝つためには、緊張とリラックスが必要なのだから、良かったと思う事にするわ! 緊張しすぎていたのに、それが、今ので少し緩められたわ!)


 すると、相手の様子を確認する余裕も生まれたようだ。


(あら、この人は、背中に大剣を背負っているわね)


 そして、視線を下に移していった。


(腰にも予備の短剣か)


 アンジュリーンは、少しガッカリしたような表情をしたが、周囲には伝わらないように配慮していた。


(まあ、いいわ)


 そして、やる気を漲らせるように目を光らせた。


 そして、自身の剣を中段に構えると、相手も、それにつられるように槍を構えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ