後期の武道大会 ジューネスティーンの感性を考えるアリアリーシャ 2
人に技を教えるということは、相手が強くなるので、生徒同士では、なかなか、教えようとはしない。
教える事によって相手が強くなってしまうと、自身の成績より上になってしまうと考えるから、なかなか教えようとはしない。
しかし、ジューネスティーンは、誰に対しても自身の知っている事は教えている。
それは、教える事によって自身の技の工程を再確認するためであり、自身が見落としている部分が無いか、もっと気をつけなければならないところが無いか、力加減や力を掛ける方向など、自身の理想の形になっているか、教えた相手を見てチェックしている。
そして、それを説明したり、実演しただけで、完全にマスターできる者は居ない事も分かっていた。
説明されたり、実演されたりして、直ぐに、マスターできるなんて事は不可能に近い。
体型も異なり、付いている筋肉も異なり、その人には不向きだったりする。
技に対して必要な筋力が足りているか、そうでないか。
それに見落としも有るので、完全にコピーするには、その後、何度も繰り返して練習する必要があり、自身の体型を含めて微調整を行う必要がある。
教えてもらった相手の技を、自身の技にするためには、教えてもらった後に、大きな努力が必要になるが、大半は、思ったように出来ないと思って、途中で挫折してしまう。
ジューネスティーン達は、昼休みに筋力強化しているが、そこまで努力するというのは稀な例であり、そんな体力作りも出来ていなければ、体力的な問題も有って、教えても、その通りに使える生徒はいない。
人は、技については詳しく聞くが、その技を使うために必要な事は見落としがちである。
その技に必要な筋力は何かまで気にしていなければ、その技を使うことができたとしても、決まる事は少ない。
ジューネスティーンは、メンバー以外の生徒達から技について聞かれれば、その都度教えるが、大半の生徒は、その技について聞いても、その技を成立させるための筋力強化について聞かれる事は少なかった。
そのため、ジューネスティーンは、誰に聞かれても、その都度丁寧に聞かれた事だけを教える。
教える事によって、自身の技が徐々に完成度が上がる事を、レィオーンパードから気が付いていた。
レィオーンパードも同じ事を何度も聞き、ジューネスティーンは、その都度答えていたが、技が完成するまでには時間がかかり、そして、同じ事を何度も聞いてきた。
そんな事例を持っていたことから、ジューネスティーンは、聞かれたら積極的に教えるようにしていた。
教えられる側は、教えられた事の半分も覚えられなかったりするが、教える側は、教える事によって、理解が深まる事から、新たな発見に出会える事がある。
その事を身をもって体験していた。
アリアリーシャは、ジューネスティーンから聞いた、見る事からも発見があるという事から、自身の前の試合を真剣に観戦していた。
(本当に、人の試合を見たら、強くなれるのかしら?)
見ている試合は、お互いに重い大剣型の木剣を振り回し、剣が当たる度に大きな音を立てていた。
すると、その衝撃に耐えられなくなったのか、相手の一人が衝撃に耐えきれず、撃ち合った瞬間に剣を跳ね飛ばされて、切先を突きつけられ勝敗が決まった。
(あんなに強力に撃ち合っていたら、衝撃が腕に伝わって、直ぐに握力が無くなるから、弱い方が先に剣を落とす事になるわ! 力任せだったら、力の強い方が勝つだけでしょ。 もっと力加減を考えるなり、撃ち込まれる場所を考えながら受けるなり、受けた力を受け流すなり考えれば、……)
アリアリーシャは、前の試合の結果を見ていた。
(何? 私は、今の試合、負けた方の相手の問題点を考えていた?)
試合の結果を見て、何かに気が付いたような表情を浮かべた。
(そうか、こうやって対戦の内容を解析することも強さに繋がるって事を、ジュネスは言いたかったのか)
試合が終わり、C組の5・6回戦は、順当に本線の6回戦で敗退した選手が勝った。
その選手が控室に戻ってくると、アリアリーシャは会場に上がるように促されると、ゆっくりと会場に向かった。
D組のアリアリーシャもベスト8をかけた6回戦で敗退しているので、4・5回戦の勝者との対戦を受ける側となっている。
自身もC組に続いて順当に勝ちたいと考えていた。
(もう、前回のような失敗はしないわ!)
アリアリーシャは、真剣な表情で会場に立と同時に会場に入ってきた相手の様子を確認した。
相手は、一般的な大剣を持っていた。
しかし、腰の後ろから、わずかに剣の柄が見えていた。
(こいつも、私の負けた時の試合を見ていた見たいね)
アリアリーシャは、少しウンザリしたような表情をしたが、直ぐに真剣な表情に戻した。
(彼の狙いは、私が負けた時の戦法の可能性が高いのか)
そして、一瞬、視線が鋭くなった。
(なら、狙いは一緒ね)
相手は、余裕そうに自身の持つ大剣を、自身の前に立てて、そこに両手を置き、まるで剣を見せびらかしていた。
主審は、二人の様子を確認した。
「構えて」
その言葉を聞くと相手は、大剣を両手で持ち、左足を下げ、腰を下げると、切先をアリアリーシャに向けた。
直ぐに飛び出せるように構えた。
一方、アリアリーシャは、刃渡り50センチの片手剣を両手に持つと、左手は前に出し、切先を上に向け、右手はダラリと力を抜いて下げていた。
アリアリーシャとしたら、左手は防御にあてて、右手は攻撃にも防御にも回せるように動きやすいように構えた。
二人は合図とともに戦えるようになった。




