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後期の武道大会  次の試合に備えるアンジュリーン


 敗者復活戦、A組の4・5回戦は、アンジュリーンの勝利で終わった。


 これで、カミュルイアンとアリアリーシャと同じ場所に立てた事になったので、もう1度勝つと覇者復活戦のベスト8になる。


 アンジュリーンとしたら、これで、やっとカミュルイアンと同じ立場になれたと少し喜んでいた。




 本戦の5回戦で敗退したアンジュリーンは、3・4回戦の勝者との対戦だったので、挑戦を受ける側だったが、4・5回戦を勝ち上がると、本戦6回戦の敗者との対戦となる。


 今度は、挑戦する側になるので入り口は反対側になる。


 そして、本戦とは違い、本戦ベスト8に直接対戦した敗者が対象者なので、各回戦は8試合しか無い。


 アンジュリーンは、一度トーナメントの山から自身の札が一つ上に上がって、6回戦の敗者に挑戦するようになっているのを確認すると、控室に戻っていった。


 控室といっても、身体を温めるために用意されている事もあり、広さは十分にある。


 先程は、4・5回戦だったので、挑戦を受ける側になったが、今回は、6回戦で敗戦した選手に挑戦する側になる。


 会場に入る扉も違う方向になるので、会場の反対側の控室に向かった。


 アリアリーシャは、6回戦での敗退だったので、アンジュリーンとは入場する扉が反対になってしまう。


 控室に入ると、次の試合に備え身体の確認を行う。


 今の試合でど、こか痛めていないか、試合中はアドレナリンが出ている事もあり、気にならなかっただけで、実はケガをしている事もある。


 その確認を、アンジュリーンは、ストレッチを行いながら自身の身体の確認を行なった。


(大丈夫みたいね)


 一通り身体の確認を行うと、次の対戦に備えていた。


「アンジュ」


 身体を軽く動かしていると自分を呼ぶ声が聞こえると、アンジュリーンは、声の主の方に視線を送ると、そこには、シュレイノリアが立っていた。


「どこか、痛い所は無いか?」


「ありがとう、大丈夫だったわ。 今、ストレッチをしながら身体を確認したから」


「そうか」


 シュレイノリアは、アンジュリーンの答えを聞くと一言答えた。


 そして、アンジュリーンの様子を黙って見ていた。


 アンジュリーンは、次の試合に備えて軽く剣を振り始めても、シュレイノリアは黙って、その様子を見るだけだった。


 その様子を見て、シュレイノリアは納得した表情をした。


「うん、良さそうだ」


 アンジュリーンが軽く身体を動かしているのをジーッと見ていたシュレイノリアは、一言、ぼやくように言った。


 それを聞いたアンジュリーンは、何を言っているのかといった様子で、振っていた木剣を止めると、シュレイノリアを見た。


「何?」


 動きが止まったアンジュリーンにシュレイノリアは近寄ると、持っていたタオルを渡してきたので、アンジュリーンは、ありがたく受け取ると、汗を拭い出した。


「いや、昨日のカミューの事があったから、痛みを我慢しているかもしれないと思った」


 それを聞いて、アンジュリーンは、少し嬉しそうな表情をした。


「大丈夫よ。 痛かったら、直ぐにシュレの所に行って、無理矢理でも癒してもらっていたわよ」


 その答えを聞いたシュレイノリアは、納得したような表情をした。


(おい、そこで、納得したような表情をするのかよ)


 アンジュリーンは、その表情を見て、少し、面白くなさそうな表情をした。


 心配して見にきてくれた事は嬉しかったが、自身の答えに対して納得するのではなく、軽くフォローして欲しいと表情に出てしまっていた。


 ただ、そんな気持ちをシュレイノリアは理解せず、ただ、アンジュリーンを見ていた。


「ここに来る前、F組の試合が終わってA組の試合が始まるところだった。 

もう、最後のE組の試合が終わったら、5・6回戦が始まる。 アンジュは、B組だから5番目だ。 敗者復活戦のルールだと、1・2回戦以外の各回戦は、常に8試合だからな。 アンジュのような事が無かったら、変に時間が変わる事は無い」


 アンジュリーンの対戦相手は、治療時間を使って試合時間を先送りにしていたが、そんな事が無ければ、試合は長引く事なく終わる。


 アンジュリーンとしても、次の試合が早く終わっても試合に直ぐに出れるように控室に入って備えていた。


 さっきは、アリアリーシャが、一緒の控室に入っていたが、アリアリーシャは、本戦の6回戦で敗退していたので、5・6回戦は、挑戦を受ける側になる。


 そんな事もあり、アンジュリーンの4・5回戦の時から控室に入って、アンジュリーンを使って自身もウォームアップをしても良かったと思っていたはずなのだが、アンジュリーンは、アリアリーシャの事も考えず、自分の事だけ考えてウォームアップをしていた。


「さっき、アリーシャ姉さんの所に顔を出した時、アンジュは、自分1人で勝手にウォームアップを終わらせて試合に行ったと言っていた」


 それを聞いて、アンジュリーンも気がついたようだ。


「ああ、そうよね。 アリーシャは、5・6回戦からだから、準備運動がてら、2人でウォームアップしても良かったのよね」


 アンジュリーンは、最初の自分の試合の事だけを考えていた事に気がついた。


 4・5回戦と5・6回戦に出場するのであれば、2人でウォームアップを行えば良かったと、少し反省気味の表情をした。


「アンジュも緊張すると、周りが見えないみたいだ」


 シュレイノリアに言われて、アンジュリーンは、自分が緊張していた事に気づかされたと分かった。


「緊張は、強すぎても、弱すぎても、能力が発揮できない。 緊張とリラックスを適度に保つ事が能力を最大にしてくれる。 アンジュは、それが、無意識のうちに出来ているみたいだ」


 シュレイノリアは、安心した表情でアンジュリーンを見ているが、アンジュリーンは、少し恥ずかしそうな表情になっていた。


「アンジュは、良い緊張感を保てるから安心だ」


 そう言うと、シュレイノリアは、珍しく笑顔をアンジュリーンに向けていた。


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