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後期の武道大会  敗者復活戦に備えるアンジュリーン


 敗者復活戦は、順調に行われた。


 2・3回戦には、3年生の首席と2年生の首席の対戦となった事もあり、2年生の応援が多かったが、その試合も3年生の首席が順当に勝ち上がっていた。


 今年の3年生の首席と次席は、学校でも久しぶりに強い世代になったと言われており、卒業後はギルドのAランクを取得するだろうと言われていた。


 ただ、2年生も強いとは言われていたが、今年の3年生ほどではないと言われいた。


 そして、1年生においては、ジューネスティーンと、そのメンバーの躍進が大きく、2人も本戦のベスト8に進んでいた。


 特にレィオーンパードは、1年生の中では最年少だった事もあり、この躍進には、誰もが驚いていた。


 中には、ジューネスティーンの強さは本物かもしれないと言うものも居たが、ベスト8の試合で、ジューネスティーンもレィオーンパードも負けるだろうと誰もが予想していた。


 しかし、敗者復活戦に3年生の首席の試合が出来た事によって、2部であろうと、その3年生の首席の試合が見られるのならと、その時の試合だけは、観客は多かった。


 そして、敗者復活戦も、3・4回戦が終わると、4・5回戦になる。


 そこには、本戦の5回戦で3年生の次席に負けたアンジュリーンが、B組のトーナメントに出場となった。


 前の3・4回戦では、2年生と3年生の試合が行われて、辛うじて3年生が勝ち上がってきていた。


 ただ、その3年生は、3年生の中では平均的な強さだったが、2年生は次席だった。


 2年生の方が優勢に試合を運んでいたが、決定打を与える事ができずに逆転負けをしていた。


 最後にスタミナ切れをしたところ、不意をつくようにして3年生が勝ち上がっていた。


 アンジュリーンは、次の対戦相手の試合を確認してから、ムッとした表情で立ち上がった。


「アンジュ、今の試合を見てぇ、どう思った?」


 一緒に観戦していたアリアリーシャが声を掛けた。


 いつものアンジュリーンなら、何か強気の発言でもすると思っていたが、そんな様子もなく黙って準備に入ろうとしていた事が気になったようだ。


「あの3年生は、曲者かもしれないわ。 きっと、最後まで、大した攻撃もせずに、ズーッと相手の攻撃を受け流していたわ。 終盤に相手が疲れてきたところを突いて逆転勝ち。 周りは、運が良かっただけだと思ったかもしれないけど、あれは、作戦勝ちよ」


 アンジュリーンの冷静な分析を、アリアリーシャは、快く思って聞いていた。


「じゃぁ、アンジュはぁ、対策できそうね」


「当たり前でしょ。 昼休みに、あんな綱上りまでして、体力作りさせてもらえたのよ。 それに、あんな強力な弓まで引けるようになったから、その分の結果位欲しいでしょ」


 アンジュリーンは、当たり前だと言わんばかりに答えると、歩き出して観客席から外に向かった。


 その後をアリアリーシャが追いかけるように付いていく。


 身長差が有るので、アンジュリーンの歩く速さに合わせようとするが、いつもより早足だったので、アリアリーシャは、やっとの思いでついて行っていた。


「可愛い冒険者には、程遠いけど、そうなれなかったのなら、それなりの結果は残すわ」


 アンジュリーンは、独り言のように吐き捨てたので、その言葉は、アリアリーシャには聞こえなかった。




 アンジュリーンは、5回戦で3年生の次席に敗れたので、パーティーメンバーの中では、シュレイノリアを除けば、一番成績が悪かった。


 1年生で、弓使いのアンジュリーンとしたら、予備武器の剣での参戦だった事もあり、善戦したと言えるはずなのだが、同じ弓使いのカミュルイアンが、5回戦を勝って、6回戦まで進んでいた事が気に食わなかった。


 最前線で剣を使うジューネスティーン、遊撃戦として、接近戦を剣で戦うレィオーンパードとアリアリーシャが自分より上なのは許せても、同じ条件のカミュルイアンが自分より上に居るのはプライドが許さない。


 そんな事もあって、アンジュリーンは、何としても、敗者復活戦を勝ち上がろうと考えていた。


 4・5回戦も、2・3回戦と同様にC組、D組、G組、H組、B組、F組、A組、E組の順番に試合は進んでいた。


 そして、アンジュリーンは、試合の直前になると、軽く汗をかくように体を動かしていた。


 剣による試合なので、自分の木剣を使って、相手が居る事を想定した動きをしていた。


 その様子を、アリアリーシャが見ていた。


「ねえ、アンジュ。 私が、軽く相手をしようか?」


 何も言わずに、1人で剣を振り回していたので、面白くなさそうにアリアリーシャは声を掛けた。


 しかし、アンジュリーンは、それに応える様子もなく、木剣を振り回しているだけだった。


 すると、アリアリーシャは、頬を膨らませた。


「ねえ!」


 アリアリーシャは、大きな声で呼びかけたので、アンジュリーンは、木剣を止めた。


「あ、何?」


 その声に、初めて気がついたといったような反応したので、アリアリーシャは余計に面白くなかったような表情をした。


「軽く付き合おうかって、聞いたのよ」


 面白くなさそうに答えるアリアリーシャだったが、アンジュリーンには、その理由が分からないという表情で見た。


「ああ、ありがとう。 でも、もういいわ。 試合に合わせて、軽く体を動かしたかっただけだから、もう、終わりにするわ」


「そうね」


 アリアリーシャは、アンジュリーンの役に立たなかった事が不満そうだった。


「せっかく、用意してもらった試合だから、決勝戦でアリーシャと対戦したいから、こんな所で負けてられなから」


 アリアリーシャは、アンジュリーンが、そんな事を考えていたのかと思った表情をした。


「ああ、そうだったわね。 私たち、決勝戦でしか対戦できなのね」


 それだけ言うと、アリアリーシャは、嫌そうな表情をした。


「ねえ、アンジュ。 あんた、私と決勝戦を戦おうと思っていたの?」


「ええ、そうよ」


 アンジュリーンは、あっさりと答えた。


 しかし、アリアリーシャは、嫌そうな表情をしたままだった。


 アリアリーシャは、D組なので、決勝戦に上がるには、ジューネスティーンが倒したA組に居る3年生の首席の組と準決勝で当たる事になる。


 この敗者復活戦の最有力候補である3年生の首席を倒さなければならない。


 もし、この首席が倒されたとしても、首席を倒して勝ち上がった相手に勝てるのかと思ったので、アリアリーシャは、その事を思うと困ったような表情を隠せなかった。


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