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後期の武道大会  脳内プランニング


 パワードスーツのパーツは、ほぼ形になっていた事もあり、後は接続部分を加工してベアリングを取り付けるだけになっていた。


 加工をするには、現物合わせの他には完成品の図面から、その部品を取り付けられるように加工する。


 しかし、用紙の無い、この世界に図面を提出するような事は不可能に近い。


 コピーも無い、紙も無い、有るのは高額な羊皮紙なので、その羊皮紙に図面を描くとなれば、高額な羊皮紙を購入して、専用の絵師に依頼し、描いてもらう事になるので、1枚の図面であろうとも高額な費用を請求される事になる。


 そのため、現物を見て、それに合わせて加工する方がコストは掛からない。


 そして、ベアリングが必要だと理解はしていたジューネスティーンも、その具体的なボールのサイズをハッキリと決めていなかった事に気がついた。


「そうだな。 可動部分と、ボールの大きさか。 考えて無かったな」


 呟くように言うと考えだした。


「肩、肘、手首、股関節、……。 ああ、股関節は、外装骨格になったから、人の股関節とは違って可動部分が多いのか。 膝、足首。 加重は? 体重とパワードスーツの重量? 足は、ジャンプした時の加重、着地した時の加重を考えるのか。 腕は、剣を振るう時の力? いや、殴る時の事も考えないと、向かってきた魔物を受け止める時の事も考える必要があるのか」


 代表的な部分を呟きながら考えていると、シュレイノリアは、それを見て安心した。


 そして、その様子を黙って見ている。


「それだけじゃないな。 パワードスーツの外装骨格は、人の骨格の動きに合わせるために、人には無い可動部分が有るんだ。 股関節のように、……。 そんな部分、全部を同じボールを使うなんて、……、無理なのか?」


 その呟きを聞くとシュレイノリアはニヤリとした。


 ジューネスティーンが黒板に描いたパワードスーツの図はシュレイノリアの頭の中にも入っている。


 そして、その設計段階でシュレイノリアも意見を出しており、尚且つ、駆動させるための魔法紋の開発はシュレイノリアが担当していた。


 ジューネスティーンの言葉を拾い、自分の考えているパワードスーツと照らし合わせる。


 それが、シュレイノリアには快感に思えた。


「まだ、製造の目処が立ってなくても、お前の考える事は沢山ある。 それに、部品を増やしすぎるのは、設計能力の低さからだ。 あらゆる検討を行なって、可能な限り同じ部品を使えるようにするのも、設計者というものだ。 今でも検討できる内容はいくらでもある」


 シュレイノリアの言葉にジューネスティーンは苦笑いをした。


 その部分の事だけを考えて設計するのは、設計を簡単に上げられる。


 しかし、もう一度振り返って、同じ部品を使えるようにしたり、部品点数や部品種類数を減らすというのは、その後の製造に大きく関わってくる。


 良い設計というのは、性能を満足する事は当たり前であり、製造する際に間違いを起こさせないための、似ている部品を無くして間違えないようにさせ、部品点数を減らす事もだが、部品の種類数を減らす事で、購入する際の手間を少しでも減らす。


 それも、設計において大事な作業になる。


 紛らわしい、作業性が悪い、手配が大変等という部分は、一つでも減らしておく事が、物を作るという事によって、トラブルや不良品の発生を減らすためには重要になる。


 ジューネスティーン達は、卒業後に冒険者パーティーとして活動するとなれば、メンバー全員のパワードスーツを製造することになる。


 全く同じとは言わないが、同じコンセプトから作るのなら、ギルドに提出するパワードスーツの段階から、部品の共通化は検討しておいた方が良い。


 後から量産化を目指すのではなく、試作品から量産を目指した設計をシュレイノリアはジューネスティーンに要求したのだ。




 自身の身体に合わせたシャツを作るにしても多くのパーツを裁断して縫い合わせる。


 金属を使った場合、布のように柔軟性が無いとなれば、人に合わせて作るパワードスーツは、そんな柔軟性は皆無といえる。


 胸囲、胴回り、腰回り、足や腕の長さ、肘や膝の位置は、人それぞれ違うとなれば、全て同じに作れる事はない。


 無いとしても、その違いをカバーできる何かを考えると、同じパワードスーツでも完成後に後から、微調整という形で対処可能となる。


 また、ジューネスティーンのパーティー内でも、レィオーンパード、カミュルイアン、そして、アンジュリーンは、まだ、身長が伸びる可能性が有り、その身体の成長に合わせて変更可能なようにする必要もある。


 そして、人は、日によって、身体に微妙な変化が起こる。


 微妙な身体の変化を吸収させる事も、完成後に必要になってくる要素となる。


 操縦席の椅子に座るのではなく、パワードスーツの中に入り、自身の身体と同化させるように動かすとなれば、その微妙な変化にも対応が必要になる。


 全く未知の製品を作る際、そんな細部にまで、パーツの段階で考えられる設計者は皆無に等しい。


 作ってみて失敗したから、もう一度、設計を見直して、問題点を変更して作るでは、時間も費用も掛かり過ぎる。


 それを何度も繰り返せば、ギルド側に疑問を生じさせる可能性があり、場合によっては、その疑問から、特待生の取り消しなり、パワードスーツ作成における費用について、ギルドから差し止められる可能性もある。


 2人は不安要素を考慮して、一発勝負に出ていたので、失敗は最小限として、当初の計画に大きな変動が起こらないように配慮していた。


 そのため、脳内で組み立てられた状況をシュミレーションして、問題点を確認し、その対応策を考える。


 紙の無い世界で、何度も原稿を作ることが出来ない世界では、脳内シュミレーションがモノを言う。


 自身の頭の中で考えた図面から、いけると判断したものを石板なり黒板に描き、問題点を洗い直し、問題部分を消しては描き直す。


 そんな環境に置かれたジューネスティーンとシュレイノリアは、脳内で立体シュミレーションをして、場合によっては、お互いに話をするだけで脳内シュミレーションを行なって問題点を見つけていた。


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