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後期の武道大会  ベスト8


 後期の武道大会は、ベスト8の戦いを残すのみとなり、準々決勝の4試合、準決勝の2試合、そして、3位決定戦と決勝戦となる。


 ベスト8に残ったジューネスティーンとレィオーンパードは、その戦いに備えているが、レィオーンパードは、その事にとても満足そうな表情をしていた。


 カミュルイアンとアリアリーシャは、気持ちを切り替えて、シュレイノリアと3人で2人のケアをしていたのだが、アンジュリーンだけは、面白くなさそうにカミュルイアンを見ていた。


 その事にアリアリーシャが気がつくと声をかけた。


「ねえぇ、アンジュゥ! あんたもぉ、シュレと一緒にぃ、ジュネスのケアをしてあげてよぉ」


 カミュルイアンと一緒にレィオーンパードのケアをしていたアリアリーシャが、アンジュリーンに声を掛けたが、動こうとしなかった。


 すると、アリアリーシャは、ヤレヤレという表情をした。


「あのね、アンジュは、3年生の次席と対戦して負けたの。 あの人、ジュネスの勝った人と常に首席を争っていたから、運が悪かったと諦めるのね」


 アリアリーシャは、いつもように語尾を伸ばす事なく伝えた。


 それでもアンジュリーンは、カミュルイアンの5回戦が面白く無かったようだ。


「まったくもう」


 するとアリアリーシャは、レィオーンパードのケアをカミュルイアンに任せてアンジュリーンの近くに寄ると、その手を引っ張って、頭を下げさせ、自分の口元にアンジュの耳を持ってきた。


「もし、カミューとアンジュのトーナメントの場所が変わっていたら、結果は逆転していたわ。 カミューは、3年生の7位だった人だったのよ。 3年生は、2強と言われていて、その後に3位から11位までのグループとは、頭一つか二つ落ちるって言われているの、レオンだって、5位の人との対戦だったから、なんとか勝てたってところだったでしょ」


 周りに聞こえそうも無いように言うと、アンジュリーンも少し納得できたような表情を浮かべた。


 その様子を見て、アリアリーシャは、もう少しかと思った。


「アンジュ。 あんた、誇ってもよかったのよ。 あの2位の人と僅差だったんだから、もし、あそこで勝てたら、決勝はアンジュとジュネスだったかもしれないの! それに、カミューと組み合わせが入れ替わっていたら、ベスト8に残っていたのは、アンジュもだったかもしれないのよ」


 決勝戦のカードが、もう少しでジューネスティーンとアンジュリーンになったかもしれないという言葉に、アンジュリーンはニヤケだし、その後のカミュルイアンと入れ替わっていたらベスト8だったかもという言葉に浮かれていた。


 しかし、その時のベスト8の相手は、アンジュリーンが負けた3年生の次席となるのだが、そこまで考えが及んでいないようだ。


 そんなアンジュリーンを、アリアリーシャはジト目で見た。


「そ、そうよね」


 アンジュリーンは、一言言うと、そのニヤケ顔でジューネスティーンのケアに向かった。


 その様子を、うんざりした表情で、アリアリーシャが目で追っていた。


「チョロ!」


 アンジュリーンが、ジューネスティーンのケアを始めるのを見届けると、ポロリと言い、レィオーンパードの元に戻ってケアを始めた。




 後期の武道大会のトーナメントは、3年生への花向けの意味もあるが、常に後ろから強い者が現れるので、気を引き締めろという意味もあったのだが、例年だと3回戦以上になると3年生ばかりになっていたので、運営委員会としても大半が例年通りに進むだろうと予測していた。


 トーナメントの山は、上位は常に後に当たるようにと決められていた。


 ベスト8ならば、3年生の1位と8位、2位と7位、3位と6位、4位と5位が当たるように組まれていた。


 そして、ベスト8を勝ち上がるのは、順当なら1位から4位となるので、1位と4位、2位と3位が当たるようになっている。


 そんな中、3年生の5位にレィオーンパードが勝ってしまった。


 ただ、3年生の3位以下は混戦だったので、5位と言っても、混戦のセカンドグループの9人の中の1人だった事から、運が良かったという事も有った。


 しかし、それは、アリアリーシャもカミュルイアンにも言えたことだったが、2人は、惜しくも負けてしまっていた。


 運営委員会側としたら、ベスト8に残るのは、1・2位は順当に残り、3位から11位の辺りで入れ替えが有るだろうと思っていたのだが、1位が初戦でジューネスティーンに負け、そして、セカンドグループの中にレィオーンパードが入ってきたという番狂せに少し戸惑いもあったが、運営に支障は無かった。


 そんな中、格闘技の教官だけが、このベスト8の顔ぶれに満足していた。


 教官は、トーナメントのこれから対戦する顔ぶれを見て、ニヤリと笑った。


(あいつが設置させろと頼んだ綱の効果が現れたみたいだな。 1年経たずにこの結果なら、ギルドの方も綱の効果を評価するだろうな)


 すると、2回戦の一番左の名前を見た。


(3年生の首席といい勝負になるとは思っていたが、まさか勝ってしまうとは思わなかったよ)


 教官は、2回戦でジューネスティーンが戦った、3年生の首席の名札を見ると、ベスト8の右端にある、3年生の次席の名札を見た。


(この次席と首席は、実力も均衡して、どっちが首席でもおかしくは無かったんだ。 順当なら、決勝戦で当たるのか。 まあ、後は、こいつか)


 教官は、5位の位置に置かれたレィオーンパードの名札を見た。


(5回戦の様子はギリギリだったから、次に勝てるか分からんが、でも、ここで勝ったら準決勝で兄弟対決になるのか)


 5位の対戦は、4位となり、その勝者は、1位と8位の勝者となる。


 1位の場所のジューネスティーンと5位の場所に居るレィオーンパードは、お互いに、次に勝つと対戦する事になるのだ。


 それを見て、面白そうな表情を浮かべていた。


(もし、その対戦が実現したら、準決勝と決勝は見ものかもしれないな)


 教官は、顎に手を当てて、トーナメントの山を眺めていた。


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