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覚醒 3


 少年は、この黒い生き物が岩を登る方法を思いつくまで時間は用意できたのだが、炎天下の中、砂漠にある岩の上に居るのだ。


 それは、太陽に照らされる事により自身の水分の枯渇によって命を落とす可能性が高い事を意味する。


 とりあえず、岩の下にいる黒い生き物からは、逃れられただけなので、この先、長時間この場所に留まることは水分の枯渇によって不可能なのだ。


(どうする。今できることは、……。この状況を整理する。そして、対策を考える。それしかない)


 少年は、下にいる黒い生き物の姿を確認しつつ周囲を見渡した。


 そして、地平線の近くにみえる建物以外に、何かないか探し始めるため周囲を見回した。


(問題点の確認。その原因を突き止める。原因を見つけたら対策を立てる。対策の速やかな実行。今、わかっている情報からそこまでを考えるんだ!)


 岩の周りをガサガサと動き回る黒い生き物から、少年は、目を離さないようにして周囲の状況を確認していた。


(焦る! 怖い! 逃げたい! この問題から逃げたい!)


 少年の表情は、徐々に、絶望に変わりつつあったのだが、ギリギリ、もうダメだという表情になりかけたところで何か閃くような表情をした。


『忙しいは、言い訳にならない! 誰もが忙しい中、時間を作って方向性を導き出している! 忙しいを言い訳にしたやつは、問題を先送りにしただけで、現実逃避をしているだけだ! 今の状況を打破するのに、先送りにするような言い訳はできない!』


 絶望する直前に、少年は何かを思いついたような表情をした。


 少年は、今の状況を打破できなければ、岩の下の黒い生き物に襲われて食われるか、または、岩の上で砂漠の太陽にさらされて脱水状態になって死ぬしかない。


 少年は、解決策を見出さなければ待っているのは“死”だけになる。 


(考えろ! 考えろ!)


 絶望に見舞われ、感情が食われそうになったが、少年は何かに導かれるように思考を止め諦めることから逆転の一手を探し始めたようだ。


(問題点は、この黒い生き物に襲われている。捕まったら恐らく命は無い。原因は、見つかってしまったからだが、あの状況と時間的猶予を考えても見つからずにやり過ごす事はできなかった。時間を巻き戻してやり直すなんて事は不可能)


 少年は、歯軋りするように奥歯を噛みしめて黒い魔物を睨みつけていた。


 また、その表情には、この状況を逆転する一手を探すように、まだ、諦めていないと言わんばかりだ。


(この黒い生き物は、自分を狙っている。さっき、砂の中から現れて、自分を見た瞬間に、口の左右に付いているハサミを鳴らして威嚇して、走り寄ってきた。あれを敵意でないとは言えないし、それに岩に登っている時に、刃物のような尻尾を自分に向かって刺そうとしてきた。だから、味方とは絶対に言えない。あの黒い生き物は、自分を襲う為の行動をした)


 そして、一瞬、悔しそうな表情をすると、また、黒い生き物を睨みつけ周囲を確認するように、黒い生き物が現れたところを含めた周辺を、また、確認するように見ていた。


(原因は……、無理、思い当たらない。対策。この黒い生き物を倒す方法は? ……。無い。原因が分かってないのに対策なんて考えられない。……。だが、この岩の上なら、とりあえず、この黒い生き物の攻撃を受ける事は無いだろう。この場所にいる限り何とかなりそうだが、いつ迄続くのか? ……。この生き物が、諦めるまで! 砂漠の真ん中の岩の上、空は綺麗に澄み渡る青空なのだから、このままだと岩の上で脱水症状になって死ぬことになる。殆ど詰んでる)


 少年は、一瞬、怯んだようだったが、すぐに首を振った。


 それは、自分の弱い気持ちを振り払うような仕草だった。


(いや、詰んでるじゃない! 何か考えるんだ! 死なない為に何かを、生きている間は、足掻き、もがき、泥臭くても構わないから、とにかく、この場を生き残る事を考えろ!)


 そして、一瞬、ブルったように体を震わせた。


 それは、自分を奮い立たせたようだ。


(諦めたら、そこで終わりなんだ! ……。なら、別の視点で考えてみよう。この生き物が自分を狙う目的は何か? ……。この手の生き物なら考えられる事は捕食以外に無い。考え方を変えても状況は変わらないのか)


 もし、黒い生き物に捕食以外の目的が有るならば、何らかの交渉をしてくるだろうが、この黒い生き物は8本足で素早く移動して大きく反った尻尾と一対のハサミをカチカチと鳴らしている。


 声をたてることも鳴く事もなく意志の疎通はできるとは思えない。


 その黒い生き物は、どう考えても自分を捕食するための行動をしているとしか思えないのだ。




 襲ってきた、その黒い生き物は少年が登っている岩を一周した。


 時々、登ろうとしたが、その都度ひっくり返って仰向けに倒れていた。


 それを尻尾やハサミを上手く使って起き上がってくる。


 少年が相手をしても、勝てる要素が見当たらないのだが、その少年は貪欲な表情で、その黒い生き物を見ていた。 


(なら、相手の弱点を見つけるしかない。 その黒い生き物を観察して、弱点を見極め、その弱点を突いて逃げるしかない)


 何か無いかじっくりと見極めるために、黒い生き物を観察しているようだった。


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