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格闘技に必要な筋肉  小指 2


 この学校は、冒険者を育成するための学校なので、冒険者の生存率を少しでも上げるために、倒す可能性が低かったり、殺傷能力が低くても、知識として持たせるようにしている。


 武器が何も無くなってしまった時に、落ちていた石を投げただけでも、魔物が怯めば、その隙に逃げるようにと教える。


 ギルドは、馬鹿馬鹿しい事でも、生きられる可能性がゼロになる事を嫌うので、考えられる事は一通り教える事になっていた。


 投擲は、石であったり、場合によっては木の枝を削って投げ槍として使わせることも教えられる。


 そんな事もあり、ジューネスティーンは、投げるという動作にも小指を意識して投げていたのだ。


「へー、石なら人差し指と中指が重要かと思ってたけど、小指を中心にするのか」


 カミュルイアンは、そんな事にも真剣に取り組んでいたと思うと、その何事が、自分には見えない部分がジューネスティーンには見えてくる。


 それなら、ジューネスティーンが発見した事を聞いて自分でも習得して仕舞えば良いだろうと考えたのか、カミュルイアンが納得するような表情で答えた。


 ただ、そんなカミュルイアンの言葉を聞いて、レィオーンパードは、先に言われてしまったと思ったのか、少し面白くなさそうにカミュルイアンの顔を覗き込んだ。


「小指は、目立つような仕事はしないかもしれないけど、小指を意識できるかどうかによって、上達できるのかもしれないな。 何となくなんだけど、俺は、そんな感じで小指を常に意識しているんだ」


 ジューネスティーンは、自分の手のひらを見て話した。


「人の筋肉の動きって、実際には見えてないけど、表面の皮膚の動きを見たら、その波打ち具合で筋肉の動きを確認できるよね。 表面の動きで、その奥がどうなっているのかも知ることができると思うよ」


 カミュルイアンは、自分の指を開いたり握ったりしながら、自分の腕を見ていた。


 その時に腕がどう動くのか、一本一本の指の動ごかして確認していた。


「そうか、表に現れる現象を見て、その中でどんな事が起こっているかを想像するのか」


 カミュルイアンが納得するような表情をして呟いた。


「ああ、自分の腕の皮膚を切り開いて筋肉を見るなんてできないからね。 だから、皮膚の動きを見て、その中がどんな動きをしているのか想像するんだ」


 ジューネスティーンは、カミュルイアンの答えに満足したように答えた。


 2人の会話を聞いていたレィオーンパードも指を動かしながら腕を見ていたが、そのうち、反対の手で腕を触りながら、腕の筋肉の動きを確認していた。


「筋肉って見る事はできないけど、皮膚の動きで想像するなんて、考えもしなかったよ。 ……。 やっぱり、にいちゃんから話を聞くと、感心させられることが多いね。 昔から、そうだったけど」


 レィオーンパードは、感心したように言うのだが、隣にいたカミュルイアンはジロリと見た。


「レオンは、感心するだけなんだな。 オイラは、ジュネスと出会って1年にもならないけど、お前は、もう何年も一緒に居たのに、そこから自分で考える事とかは取り入れられなかったんだな」


 カミュルイアンは、レィオーンパードにも同じような考える力があれば、また、別の世界が見えたのかもしれないと思っただけだったようだが、話しの内容が少し見下すような話だったので、レィオーンパードは、面白くなさそうにした。


「そんなの、言われたり聞いたりしたからって、そうなのかと思うけど、だからと言って、にいちゃんみたいに考えられるわけないだろう」


 ムッとした表情でレィオーンパードはカミュルイアンに言い返した。


「そんな事言ったら、カミューはどうなんだよ。 今まで、にいちゃんみたいな事を考えた事あるかよ!」


 カミュルイアンも、ジューネスティーンのような新たな事を見つけたり思いついたりした事は無い。


 話をしている中で、ああそうなのかと思った事はあったが、自身で見つけたような事は無かったので、レィオーンパードと自分には、大差はないと思ったのか、少し落ち込んだような表情をした。


「ごめん、レオン。 言い方が悪かったよ」


 カミュルイアンは、素直にレィオーンパードに謝ったので、何か反論してくるだろうと思っていたレィオーンパードは、少し面食らってしまったようだ。


「あ、ああ。 うん」


 素直にカミュルイアンが謝ってきたので、自分の思い描いていた事とは違ったので、その答えに困ったのか、それだけ答えるだけが精一杯だったようだ。


 その反省からなのか、カミュルイアンは今の話から、もっと何かを聞き出そうと思ったようだ。


「ねえ、ジュネス。 筋肉の動きを皮膚の上から考えるのは分かったんだけど、それより、さっきの小指の働きって、どう考えているの? 小指が大事だと思ってるなら、その理由も何か分かっているんじゃないの?」


 カミュルイアンは、力強くない小指の重要性について見解を聞きたいと思ったのか話を戻してきた。


 ジューネスティーンもカミュルイアンに言われて解説してなかった事に気が付いた。


「ああ、小指か。 小指は、制御に必要なんじゃないかって思っているよ」


 そう言うと、ちょっと考えるような表情をした。


「ああ、でも、これって、自分の中だけで考えている事だから、正しいのかは分からないよ」


 自分の見解を話していただけだった事もあり、それが科学的な根拠がない事なので断りを入れた。


 ジューネスティーン自身も、小指の働きについて完全に理解して裏付けも取っていたわけではなく、自身の経験から、多分そうなんだろうと思っているだけだったのだ。


「うん。 でも、ジュネスって、急激に強くなったし、それは、ただ何となく練習や訓練したからじゃないでしょ。 ほら、この綱上りだってジュネスじゃないか。 きっと、小指についても、完全な間違いではないんじゃないかな」


「今、それをどうこう言ったって仕方がないよ。 にいちゃんに敵う相手が居ないんだから、今は、小指について、にいちゃんの考え方が正しいと思って練習すればいいよ。 これから先、違うと分かったら、その時に考え方を改めたらいいでしょ。 だから、今は、にいちゃんの考え方で、同じように練習していようよ」


 レィオーンパードが、正論を言ったので、2人は驚いたような表情で見ていた。


 言われた事は真理だった事もあり、2人は、お互いに顔を見合わせると微笑を浮かべ納得したというようにレィオーンパードを見た。


 しかし、2人は自分達が考えていた事を伝える事はなく、笑顔だけで答えただけだった。


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