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格闘技に必要な筋肉  小指


 ジューネスティーンは、綱上りの時に人差し指と中指を伸ばして、薬指と小指、そして親指だけで上っていた。


 その話を指摘すると、小指は握るために重要な指のようだと言ったのだが、小指には、もっと違う役割があるような事を言うので、レィオーンパードは、興味を持つのだが、カミュルイアンは、自分の考えていることの更に先の事を考えていると思うと恐怖さえ覚えていたのだ。


「にいちゃん。 小指なんて、こんな小さい指なんだから、大して力なんて入らないでしょ」


 レィオーンパードの質問にジューネスティーンはニヤリとした。


 レィオーンパードは、この世界に転移してきた時からジューネスティーンとシュレイノリアの弟のように一緒に暮らしてきた事もあり、カミュルイアン程ジューネスティーンの天才性について驚いたり、怖いと思ったりはしない。


 レィオーンパードにとって、ジューネスティーンは、自分の知らない事を教えてくれる、優しい兄という立ち位置だった事もあり、そんな誰もが考えもしない事でも知っているだろうと思っていたので、興味深く聞いてきた。


「うん、力強さだけを取ったら、小指だけの力って、そんなに強いとは思えないね」


「じゃあ、何で小指が重要なんだよ!」


 レィオーンパードは、力強さだけを考えたら小指より他の指の方が重要だと思ったようだが、ジューネスティーンには、もっと別の考えがあったようだ。


 そして、表情には余裕すらうかがえた。


 しかし、レィオーンパードには、その理由が見えてこないので、少し不満そうな顔をしていた。


 そんな弟分のレィオーンパードの様子を、面白そうに見た。


「小指は方向を決めるのに都合がいいみたいなんだ」


 ジューネスティーンの答えにレィオーンパードは、ますます、分からなくなったようになったので、ジューネスティーンは、まだ、理解できてないのかと思い説明を続けようと思ったようだ。


「ほら、格闘技だと小指の方向に力を持っていくようにするんだ。 胸元を掴んだ手も、袖口を持った手も、どっちも小指の方向に向かって力を加えていないか?」


 レィオーンパードは、言われると両腕を格闘技の投げ技を掛ける時のようにして、そのまま、投げる動作をしてみた。


「うん、そんな感じだね」


 ジューネスティーンは、レィオーンパードの動きから、その理解度を確認していたようだ。


「それと、相手の足を払う技があるだろ、あれも最初は上手くいかなかったんだ。 でも、足の小指を先に出そうとすると、綺麗に足の裏が相手の足を捉えるんだ」


 ジューネスティーンは、右足を外側に上げると、足の裏を内側に向けて床を払うように右から左に、左足を中心にして回るように動かした。


 その時、足の裏は足を払う時の理想の形になって移動方向に向かっていた。


 それを見たレィオーンパードとカミュルイアンが、言われたように足の小指を意識して真似をした。


「あっ! そうだね。 今まで、中々、上手くいかなかったのは、そのせいなのか」


 レィオーンパードは、納得するような表情をした。


「今まで、足の裏で刈るんだって、言われていたけど、中々、裏で刈れなかったんだ」


 それを隣にいたカミュルイアンが、嫌そうな表情をするとレィオーンパードの顔を見た。


「そうだったのか。 レオンに足を刈られると、とても痛かったんだ。 お前、足の裏で刈ってなかったんだな」


 カミュルイアンに指摘されると、レィオーンパードは、まずいと思い、焦った表情をすると、図星を突いたと気がついたカミュルイアンは、ヤレヤレと思った表情をした。


 ガッカリ感を表情に出していたが、その事を追求しようとは思わなかったようだ。


「今度から、ちゃんと、足の裏で刈ってくれよ」


 カミュルイアンは、今までの事は無かった事にするから、今後は、足の裏で技をかけてくれと言いたかったのだろうが、それだけ言うとレィオーンパードの肩に自分の手を置いた。


「うん」


 レィオーンパードは、申し訳なさそうに答えたので、カミュルイアンは、許すと思った様子で、軽く笑顔になった。


「なあ、レオン。 相手の足を払う時って、足の裏は広いけど、足の裏を相手の足に向けないと当たる範囲は狭いだろ、広い部分で当たった方が、力が全体に加わるから、相手の痛みも減るし、力も伝わりやすくなるから、倒しやすくなるんだ。 でも、そういった部分が理解できてないと、技は決まらないし、痛い思いはさせるから、いい事は何もないんだ。 そんな、ちょっとしたコツでも理解して使っていたら、もっと強くなれるはずさ」


「うん」


 レィオーンパードは、ジューネスティーンの話を聞きつつ、今言われた足の小指を前に出すようにして足を払っていた。


 その些細な理由を知らなかった事によって、カミュルイアンは、痛い思いをさせられていたのだ。


 カミュルイアンは、レィオーンパードの様子を見て、これからは、足を痛めつけられずに済むと思うとホッとした表情を見せた。


 すると、ジューネスティーンは、何かを思い出したように閃いた顔をした。


「ああ、小指と言ったら、投擲の時だけど、その時は、小指を中心に手首を回すようにしているんだ。 その方が、何だか軽く投げられるような気がするし、遠くまで投げられるような気がするんだ」


 そのジューネスティーンの言葉に、カミュルイアンもレィオーンパードも何で投げる時に小指が重要なのかといった表情をしてジューネスティーンを見た。


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