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格闘技に必要な筋肉  握る


 ジューネスティーン達メンバーは、何時ものように昼休みは、綱上りを行なっているので、授業の後に格闘技場に移動していた。


 途中、アリアリーシャの無意識の色気を目撃したジューネスティーンは、気を取り直そうとしたのか、直ぐに綱を外しにかかった。


 今日も何時ものように、入り口近くにまとめられた綱を外して上れるようにすると、早速ジューネスティーンは、綱に手をかけて上りだした。


 そして、他のメンバー達も登り出し始めるのだが、カミュルイアンが、上ろうとして手をかけただけの状態でジューネスティーンの上るところを見上げていた。


 ジューネスティーンは、上りおわると、掴んだ綱を足で挟むようにして滑らせて降りてくるのではなく、また、腕を交互に下ろしながら降りてきた。


 下る時も自身の体を腕だけで支えて下りるのをカミュルイアンは、食い入るようにみて、床に着地するのを待っていた。


「ジュネス。 今、面白い握り方してなかった?」


 カミュルイアンは、気になった事を、素直に聞いた。


「ああ、今は、人差し指と中指を外して、3本の指で上っているんだ。 今日は、ちょっと、きつ目にしたいと思ったから、ちょっと、試してみたんだ」


 それを聞いて、カミュルイアンは、何でなのかと言う顔をしたのだが、ジューネスティーンとしたら、アリアリーシャの胸元の事を忘れたいと思っていたようだが、その事を口に出そうとは思っていなかったようだ。


 そこに、カミュルイアンの質問だったので、ちょうど良いという思いもあったみたいだ。


「これは、格闘技の授業の時に気がついた事なんだけど、相手の道着を握る時、小指と薬指で握るようにしているんだ。 そうすると、肩の力を抜くけど道着はしっかり握れるように思えるんだよ」


 その説明を聞いてもカミュルイアンは、そうなのかと思うような表情をしただけだった。


 すると、綱を一度上り終わって降りてきたレィオーンパードが、2人の話が気になったようだ。


「にいちゃん。 それって、腕から力を抜くってやつなの?」


「ん? ああ、そうだよ。 腕の力を抜くけど、道着を握る手は外されたくはないからね。 強く握るけど、肩からは力を抜くって難しかったんだけど、何度か試してみたら、どうも小指と薬指の握ると腕のそっち側の筋肉は硬くなるけど、親指側の筋肉は柔らかかったんだよ」


 レィオーンパードとカミュルイアンは、ジューネスティーンの言われた事を試していた。


「本当だ、小指と薬指だけで握った時と5本の指の時で、腕の筋肉が硬くなる場所が違うんだね」


 右手の指を握りながら、左手で腕の筋肉を確認したレィオーンパードが感心したように話した。


 そして、カミュルイアンも同じように確認していた。


「腕は力を入れないで、道着を握るって、何だか難しいと思ったけど、そんな事をしてたんだ」


 レィオーンパードは、納得するような表情をしていたのだが、カミュルイアンは、まだ、よく理解できてないのか、考えるような表情でレィオーンパードを見ていた。


 その様子を見ていたジューネスティーンは、もう少し説明した方が良いと思ったようだ。


「カミュー、格闘技の組み手の時だけど、腕とか肩に力を入れて組まれると、技をかけにくいと思わないか?」


「うん、そういう相手と戦うのは、苦手だよ」


 カミュルイアンとしたら、性格的に控え目な事もあり、腕に力を入れる相手は威圧しているように思えていたのだ。


「腕に力を入れている相手というのは、要するに棒と一緒なんだよ。 握っている場所を、スッとズラしてしまうと、直ぐにその中に入れるし、硬くなっている分、一旦、腕の力を緩めてから対応するから、反応が遅れるんだ。 だから持たれている位置から、外された瞬間は弱さが出るんだよ」


 ジューネスティーンは、肩を振って、腕に力を入れるタイプの人の組まれた時の外し方をした。


「腕に力を入れないなら、腕が硬くないから、防御し易い位置に握っている部分を動かしてくるから、その方が厄介なんだよ」


 そう言われて、カミュルイアンは、ジューネスティーンと組み手を行った時の事を思い出していた。


「そうだね、ジュネスとの組み手は、オイラが技を掛けた瞬間に力を入れてくるから、技を掛けられないね。 腕に力を入れてないのに、技が掛からなかったのは、……。 そういう事だね」


「握る時だけど、可能な限り小指と薬指で道着を握るようにしているんだ。 そうすると、強く握っても、腕や肩の力は強くなくても、握る力は強くできるように思えるんだよ」


 そう言うと、右の手のひらを見せて、小指と薬指だけを握ってみせた。


「こんな感じで握ると意外に腕や肩に力は入りにくいんだよ」


 カミュルイアンは、ジューネスティーンの握る手を注目していた。


「それに、握るにしても小指から握るようにすると、しっかり握れると思うんだ。 小指から薬指と順番に握った時の方が外され難いよ。 それと握るって格闘技だけじゃなくて、剣を握る時にも応用が効くんだ」


 剣と聞いて、レィオーンパードは特に気になったようだ。


「ほら、剣を握る時も、剣の柄を同じように小指から握るようにした方が、手のひらにしっくりくるから、振り回しても手から外れにくく感じるんだ」


 カミュルイアンは、弓がメイン武器ではあるが、サブとして剣も持っている。


 剣を使う場合、しっかり握って振らないと手から抜けてしまう。


 そのため、グリップを柄に付けてあるものもあるが、ジューネスティーンの剣には柄にグリップは付いていない。


 それでも問題が無いのは、ジューネスティーンが握る事に関しても考えているのだろうとカミュルイアンは思ったようだ。


 ジューネスティーンが、握る事だけでも深く考えていると分かり、自分とは気がつく部分が大きく違うと思ったのか、少し暗い表情をした。


「ジュネスは、一つ一つの事にも意味があると思っているんだね」


 カミュルイアンは、ジューネスティーンの考える力が、自分には無かったと反省したようだ。


「それに小指は、もっと大事な意味があると思うよ」


 そのジューネスティーンの話を聞いたレィオーンパードは難しい表情をし、カミュルイアンは、まだ、その先があるのかと、ジューネスティーンの考えの奥深さを、少し怖いと思ったようだ。


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