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格闘技に必要な筋肉  座学中の訓練


 ギルドの高等学校は、冒険者になるために必要な事を教えるための学校である。


 それは、戦闘以外の内容にも及ぶ、ギルドの高等学校のある、南の王国は、大陸の南部に位置しており、大陸には他の国も存在する。


 一番新しく建国された、大陸の中央に位置する大ツ・バール帝国、そして、北には大国の北の王国、それ以外にも大小の国が存在している。


 そして、大陸には、人の入り込めない東の森が存在しており、そこに発生する東の森の魔物は、今まで倒された記録が無い。


 その東の森より先は、人が住んでいるのかも分かっていない未知の土地となっている。




 冒険者のためにあるギルドの高等学校では、倫理、歴史、地理、数学、科学、各国の言語、そして魔法に関する座学もカリキュラムに含まれている。


 何も知識を持たない力は、暴走を起こす。


 知識の無い力は、ただの暴力になりかねないというギルド創設者の意向を元にギルドの高等学校には座学による知識に関するカリキュラムも多くあった。


 そのため、ジューネスティーン達も座学の授業も受けていた。




 しかし、ジューネスティーンは、授業の話を聞きながらでも身体を鍛えられる部分は鍛えていた。


 授業を聞きつつ、時々、石板に白墨でメモを取るが、それより教授の授業内容を、集中して聞いている事の方が多かった。


 メモを取るための道具が石板程度なので、多くの内容を記入する事ができない事から、教授が黒板に書いた内容を目に焼き付け、話した内容を記憶に残す事が最大の勉強となる。


 そのため、見て聞いて覚えることが重要になってくる。


 そんな中、ジューネスティーンは、授業に集中しつつ、簡単なメモを取る時以外は、手首を返す事を行っていた。


 いつもなら両手を机の下に置いて行っているので、誰にも気が付かれる事は無いのだが、今日は、メモを取った時に手を机の上に置いてしまっていたので、その状態で手首を返す事を繰り返していた。


 そして、隣に居たレィオーンパードが、その事に気がついたが、授業中だということもあり、その様子を見ただけで、直ぐに授業に集中し始めた。




 授業が終わって昼食になると、クラスの生徒達は、急いで教室から出て行った。


 食堂は常に混むので、誰もが我先にと食堂に向かっていくので、ほとんどの生徒達は、早々に教室を出ていくが、ジューネスティーン達は、綱上りを行った後に食堂に行くので、周囲の生徒より急いで移動はしない。


 昼の食事時に綱上りをしようなんて考えるのは、ジューネスティーンだけで、メンバーは、それに付き合っているのだ。


 授業の片付けをしていると、レィオーンパードがジューネスティーンに声をかけた。


「ねえ、にいちゃん。 さっき、机の上で手首をはねるように動かしていたけど、……」


 質問されて一瞬手が止まるが、見られてしまった事を、少し恥ずかしいと思ったのか、僅かに口元が緩んだ。


「ああ、あれか。 ……。 そうか、机の上でやってたか」


 レィオーンパードに聞かれても、あまり、気にするような様子はなく、片付けを続けた。


「あれ、格闘技の授業の時に教えただろ、手首の返しで防御する方法だけど、あれだったら、いつでもどこでも訓練できるだろ、教室の移動の時でも、手を使わない時なら何時でもできるから、今は、無意識にしちゃっているんだな」


「ふーん」


 レィオーンパードは、そんなものなのかといった表情をした。


「ああ、手首もだけど、足の指も、椅子に座っている時でも握るようにしているんだ」


 ジューネスティーンは、ついでだというようにレィオーンパードに話し始めた。


「ほら、格闘技の投げるという行為の中で、一番最後に力を入れる部分が、足の指だと思うんだ。 背負って投げる時、身体を前に折るようにして投げるけど、最後の最後は、足の指で床を支えるように立っているから、足の指の力を付けた方が良いと思ったんだ」


 その話を聞いて、レィオーンパードは、投げる時の足の指の事を考えたようだ。


「そうだね、格闘技って爪先立ちの時が多いね」


 すると、前の席で2人の話を聞いていたカミュルイアンが2人の方に向いた。


「ジュネス。 爪先の力って、走る時も最後まで残っているのは、爪先じゃないの? 最後に地面を蹴って前に進むのって、爪先でしょ。 だったら、その足の指を握るようにして、指の力を付けるのって、走るのにも影響が出るんじゃ無いかな」


 カミュルイアンは、爪先の力と聞いて、走る時の事を考えたようだ。


 走る時は、足を前後に動かすが、その際、地面を最後に蹴るときに使うのは爪先であって、最後に地面を蹴る時に必要になるのは足の指の力ではないかと思ったのだ。


 ジューネスティーンのは、漠然と格闘技を受けていた訳ではなく、全体的な事と部分的な事を含めて考え、どんな時でも必要な部位の強化に繋がるなら鍛錬を怠らなかったのだ。


 そして、そのカミュルイアンの質問を聞いたジューネスティーンは、納得するような表情をした。


「そうだね、試した事は無いけど。 走る時にも指の力が強い方が、早く走れるようになるかもしれないね」


 カミュルイアンの話を聞いて考えながらジューネスティーンは答えた。


「うん、試してみるといいかもしれなな」


 そう言うと片付けができたので、立ち上がって移動しようとした。


「何ですぅ? 足が速くなる方法があるんですかぁ?」


 足の速さの話だったので、体が小さい割に足の早いアリアリーシャが興味を示してきた。


「ああ、検証はしてないけど、走る時に最後に地面を蹴る時は、爪先に力を入れるから、足の指の力が強くなったら速く走れるんじゃ無いかって話だよ」


 アリアリーシャは、その話を聞いて自分の足を見ながら、右足の踵を上げて爪先立ちにした。


「そうね。 走る時って、一番最後まで、足の指が地面に付いているし、地面を蹴って走るんだから、最後は、足の指の力がものを言うのかもしれないわね」


 何時ものように語尾を伸ばす喋り方をせず、足を見ながら集中していたため、忘れてしまったようだ。


「それで、その足の指を強くするために、何をすれば良いのかしら?」


 アリアリーシャは、ジューネスティーンに聞いた。


 その真剣な表情を見て、何時もの優しい表情ではなく、知りたいという欲望が表情に現れたアリアリーシャにジューネスティーンは気圧されたようだ。


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