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格闘技に必要な筋肉  教官との組み手 2


 ジューネスティーンと教官の組み手は、教官が優勢というより、ほとんど、教官が投げてジューネスティーンが倒され、そして、立ち上がって向かっていき、また、倒されていた。


 周囲の生徒達からしたら、最初の格闘技の授業の再来と、ジューネスティーンに対する鬱憤が一気に爆発したような様子で、一方的に教官を応援する生徒の歓声で包まれていた。


 その様子をカミュルイアンもレィオーンパードに近寄って見ていた。


「レオン。 ジュネスの様子だけど、少し変じゃないか? 真剣な様子だけど、なんだか、投げられても、落ち着いているっていうか、初日の授業の時より焦りみたいなものが無いんだ」


 レィオーンパードも言われて、ジューネスティーンの様子を確認した。


「そう言われてみれば、さっき、にいちゃんが言ってた、手首の返しというのを使ってない、ん。 ……。 それに、上半身の力は、あまり強く入れてないんじゃないかな」


 レィオーンパードは、ジューネスティーンと組み手を行う事が多い。


 それに、さっきまで、技の受け方に付いて話をしていたのだが、今、教官と組み手をしているジューネスティーンに、その手首の返しで防御する方法を取っていなかったのだ。


「ねえ、ジュネスって、時々、オイラたちと組み手をしている時、されるがまま、技を受けてくれて、投げられてくれるよね」


「ああ、あれって、俺たちの練習のためじゃないの?」


 カミュルイアンは、レィオーンパードの答えを聞くが、それが正解のようには思えないという表情をした。


「前に聞いた事があるんだけど、組み手の時って、練習だから、試合や実戦とは違うからって言ったんだ」


「ああ、そう言えば、腹だけで受けるようにしたら、相手の技の癖が良く分かるとかって言ってたかも」


「だろ。 あれ、きっと、教官の技の癖を吸収しているんじゃないか?」


 カミュルイアンとレィオーンパードは、ジューネスティーンの様子が、いつもの組み手の様子とは違う事に気がつき、その理由も何となくではあるが察したようだ。


「お前たちも気がついたか」


 レィオーンパードとカミュルイアンは、後ろから声をかけられたので振り返ると、そこには、シュレイノリアがドヤ顔で2人を見ていた。


 その様子をアンジュリーンとアリアリーシャが、ヤレヤレといった表情をして聞いていた。


「今、教官に投げられているのは、あの技を知り尽くそうとしているからだ」


 シュレイノリアは自分が、それを行なっているかのような様子で言った。


「そう言えば、今日の教官の使っている技って、いつもの技とは少し違うわよね」


「そうですぅ。 今まで、見た事のない技ですぅ」


 シュレイノリアに付いてきた2人が、話を聞いて2人も気がついたようだ。


「やっぱり、ジュネスは、教官の技を吸収しているみたいだね」


「そうだね、このまま、にいちゃんの様子を見てた方が良さそうだね」


 カミュルイアンもレィオーンパードも納得したような様子で、ジューネスティーンと教官の組み手を見ることにしたようだ。




 ジューネスティーンのメンバー達が、組み手の様子を伺っていると、組み手が始まった時より、ジューネスティーンの投げられる間隔が、徐々に長くなってきた。


 そして、教官が技を掛けにくそうし初め、表情にも最初の頃ほど余裕が伺えなくなっていたので、そのせいなのか、生徒達の歓声は、徐々に静かになり途中からはヤジも出てきた。


 始めたばかりは、教官の技がかかり投げられていたのだが、時間が経つにつれて、ジューネスティーンが、教官の技に耐えてしまい投げられるまでにいかなくなっていたのだ。


 生徒達は、特待生であるジューネスティーンが投げられる事でウサを晴らしていたのだが、それが無くなり、教官が苦しそうにし始めると、最初は応援するような歓声だったのだが、それが徐々にヤジに変わっていってしまったのだ。




 教官は技を掛けようとすると、その技に入る前の崩しの段階でジューネスティーンが防御し始めていたので、体勢を崩すことができずに技に入るので、教官の体型が崩れてしまっているのだ。


 投げられるというのは、相手の身体が倒れる力を利用して投げる。


 相手の重心の位置を、自分の腕や体を使って、相手の床を踏んでいる足の位置から外す事で倒れる事になるので、その力を利用して投げるのだ。


 それは、技になるまでの相手の体の重心を崩す事ができて成立するので、その崩しを防御してしまったら、圧倒的な力差が無ければ投げることはできない。


 その事をジューネスティーンは知っているのか、身体が無意識のうちに覚えたのか、教官の技を受け続けた事で理解してしまったのだ。


 そして、教官は技を掛けようと身体を動かすのだ、それだけでジューネスティーンの体勢を崩せなくなり、動かすだけで終わるようになって、その技と技の間隔も徐々に長くなってきた。


 派手に技が決まらなくなると、生徒達からため息とガッカリするような声も漏れ始めた。


 何度か教官が技を掛けようとして決まらなかった。


 そして、技に入ろうとして無理だと思い身体を戻そうとした、そのタイミングでジューネスティーンが教官の懐に張り込んだ。


 すると、そのまま、自分の胸を相手の胸に当てて押し込むと、教官の足は片足の踵に体重が乗った。


 その足をジューネスティーンは、踏み込んだ勢いで教官側の足を振り子のように跳ね上げ、戻る力で、そのまま、教官の体重の乗った足を刈った。


 教官は、体重の乗った足を刈られてしまったので、そのまま後ろに背中から落ちてしまった。


 完全にジューネスティーンに投げられてしまったのだ。


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