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格闘技に必要な筋肉  教官との組み手


 ジューネスティーンは、レィオーンパードに組み手の時のノウハウを教えながら行っていたのだが、それが、教官には面白くなかったようだ。


 喋っている事で、真面目に取り組んでいるように見えなかったのか、教官が相手をすると言い出したのだ。


 ジューネスティーンは、クラス内では敵なしとなっていた事もあり、教官としては、その鼻柱を折っておきたいと思っていた事もあった。


 ただ、教官もジューネスティーンの強さは感じていた事もあり、授業以外の時間には、身体強化のためのトレーニングを行っていた事を人伝で聞いていた。


 そして、最近になって教官の体格も一回りか二回り程大きくなっていた。


 それは、急激に力をつけてきたジューネスティーン達に、教える側としてのプライドから、何とか自分が上だと周囲に知らしめたいと考えていたからなのだ。


 そんな中、空いた授業時間には、ジューネスティーン達に知られないように新たに設置された綱も使っていたようだが、元からの体格の良さから、体重が重かった事もあって、ジューネスティーン達のようには上手く腕だけで上ることはできていなかった。


 綱に腕だけで上れなかったのは、体重を支えるだけの筋力が足りなかったので、決して腕力が無いから上れなかったのではなく、自身の体重を支えて上るには腕力が足りてなかっただけなのだ。


 見た目の体型は、教官の方が圧倒的に大きい。


 体格差だけ見たら、圧倒的に教官に武がありそうなのだが、今までも時々、ジューネスティーンと教官は組み合っていた。


 どちらかというと、教官の方が強かったが、それも日を追うごとに差は縮まっていた。


 その縮まり方に教官としても気がついていた事もあり、自身も身体強化に努めていたのだ。


 そして、力の差を示そうと考えていたのだ。




 ジューネスティーンの組み手の相手を教官がする事になると、周囲は練習をやめて観戦に回った。


 大半の生徒達は、ジューネスティーンの体格も良くなってきたとは思っていたようだが、教官が今まで以上に筋力の強化のために体を鍛えていたことで、ジューネスティーン以上に大きな体になっていたこともあって、本気になった教官なら、自分達の敵わないジューネスティーンだったとしても、教官の方が有利だと見ているようだった。


 そして、生徒達は、授業の初日にジューネスティーンが、コテンパンに教官にやられ、その後の授業でも、しばらくは大した強さでは無かった事もあり、大半の生徒に投げられていた。


 どちらかというと、弱い方から数えた方が早かったのだが、綱上りのおかげで、上半身の筋肉が付いてきて、今では生徒達の誰も敵わなくなってしまった。


 そのため、当初は弱かったが、今では勝てなくなってしまった事から、見学している生徒としたら、初日の授業のように、圧倒的な強さで叩きのめしてもらえればと思っているようだ。




 大半の生徒は、アリアリーシャやアンジュリーン達のように苦労して冒険者をしながらコツコツお金を貯めて入学してきた。


 苦労して入学した側からしたら、若いうちから特待生として入ってきたジューネスティーンは、入学当時の授業の様子を見ていても、大した実力があるとは思えなかった事もあり、いまだに気に食わない存在だと思われているのだ。


 また、ギルドとの約束である開発予定のパワードスーツは、完成には程遠い事もあり、そして、その製作の為に空き教室を使って作っていた事も、周囲の生徒には気に食わない理由であり、尚且つ、何を作っているのか、フルメタルアーマーのような形の物を作る程度にしか思えなかった事もあって、そんな物を作ったから何なのだと思われてしまっていた。


 パワードスーツは、後から入ってきたアンジュリーン達にも最初は理解し難いものだったのだが、シュレイノリアの魔法紋の開発の一端を確認するため、最初のフルメタルアーマーの改良型パワードスーツによって、通常以上のパワーを見せつけられて、やっと、パーティーメンバーも理解できたので、メンバー達は納得できていた。


 しかし、彼ら以外の生徒達は、ただのフルメタルアーマーに何の価値があるのかと思われてしまった事も、周囲から煙たがれていたのだ。


 そんな状況で、特待生に空き教室を当てがわれて、空き時間や放課後などは、その空き教室を使っている事も、周囲の生徒からは面白いと思われていなかったのだ。




 そんなジューネスティーンを格闘技の教官が仇を取ってくれると思うと、周囲の生徒達は面白がっていたのだ。


 向かい合ったジューネスティーンと教官は、お互いに相手の出方を伺うように離れていた。


「ジューネスティーン! 今回は、以前のようなハンデは無しだ。 こっちも本気で行くから、そのつもりで掛かってこい!」


 教官は、表情からも本気が伝わってきた。


「はい、よろしくお願いします」


 ジューネスティーンは答えると、教官に近付いていき、襟を掴もうとすると、その手を教官は握ってしまった。


 そして、その手を引きながら体を回転させると、そのまま担いで投げ飛ばした。


 投げられたジューネスティーンを見て、周囲の生徒からは歓声が上がった。


 それは、また、入学式の翌日の再現だと思った事と、自分達より強くなった気に食わない特待生がやられる事で、自分達の仇をうってもらったような気になったからだ。


 だが、その様子をレィオーンパードは、何かが違うといった表情で見ていた。


 一方、投げられたジューネスティーンは、綺麗な受け身を取って、その時に掴まれていた腕を振り払って、以前のように持たれたままにはせず、すぐに起き上がった。


 そして、間合いを詰めて、今度は、慎重に相手の腕や襟を取りいった。


 お互いに良い組み手になったところで、教官は、ジューネスティーンを左に振ると、それを抑えようと反発するところを右に入って、また、投げられてしまった。


 周囲は、大歓声で教官を応援していた。


 以前のようにはいかないが、今回も教官の圧倒的な力にジューネスティーンが倒されることになるだろうと誰もが思ったようだ。


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