格闘技に必要な筋肉 格闘技の授業
ジューネスティーンの作った新しい弓は、昨日、アンジュリーンとカミュルイアンに渡った。
ただ、アンジュリーンは、何本もの矢を意地になって撃ちまくっていたので、今日は不調のため、腕をあまり上げようとしていなかった。
そして、誰かが腕を触ろうとすると、避けるようにしていた。
威力の重視した引きの強い弓は、今までの比ではなかったのに、ムキになって何本も撃ったので筋肉痛になってしまっていた事と、腕ばパンパンに張っていたので、いつもより太くなっていると自身で思っていたようだ。
そのせいか、顔色も悪かったので、ジューネスティーン達男子3人は、可能な限りアンジュリーンに近寄らないように遠巻きにしていた。
しかし、授業は平常通り行われていたが、その中に格闘技の授業があったので、アンジュリーンは、筋肉痛と戦いつつ授業を受けることとなった。
この時期になると綱上りの効果によって、格闘技の授業では、ジューネスティーンに敵う相手は、クラス内では誰もいなくなっていた。
練習相手になるのは、一緒に綱上りをしているパーティーメンバーだけになってしまっていたので、主に組み手の相手をしてくれるのは、カミュルイアンかレィオーンパード位になっていた。
誰もがジューネスティーンを投げることができず、投げられてばかりになってしまい、相手にならないからと避けられてしまっていたこともあり、レィオーンパードが組み手の相手をしていた。
「ねえ、にいちゃん。 にいちゃんと組み手をする時、他の生徒達とは違って、にいちゃんは、いつも組んだ腕の力が、ほとんど入ってないよね」
組んだ時のジューネスティーンは、握る力は強いが、腕には大した力が入ってないのだ。
「ああ、技を受ける時だけ力を入れるようにしているんだ。 肩や腕に力を入れっぱなしにしていると、反応が遅れるから、相手が技を掛ける瞬間に入れるようにしているんだ」
それを聞くと、レィオーンパードは、技を掛けようとした。
その瞬間、ジューネスティーンは、両方の手首を手の甲の方に返すと、同時に脇を締めるようにしてしまったので、レィオーンパードは、体勢を崩す事もできず、胸を当てることもできないので、腰が折れ曲がってしまっていた。
人を投げようとするなら、相手の体を伸ばすようにしなければいけないので、相手の腕を引くこともできず、変な格好になってしまい、技をかけようとしていたのをやめた。
「ほら、技を掛けようとした瞬間に変化が起きると掛けにくいだろ。 でも、最初から技をかけさせまいと力を入れていると、一旦、力を抜いてから次の動作をしなくちゃいけないんだ。 力が入ってないから、相手の技をかける瞬間に力を入れると、技を掛ける方は、それに対応しにくくなるんだ」
「うん、上手く入れなかったよ。 そういえば、他の人達って、結構、組んだ時に腕の力を入れているよね」
ジューネスティーンの解説について、レィオーンパードは理解ができた様子で答えた。
それを聞いて、ジューネスティーンは、何かを思いつたようだ。
「なあ、レオン。 ちょっと、腕の力を入れてみてくれないか?」
「えっ!」
「ああ、腕の力を入れて組まれた時の対策を教えてやるよ」
ニヤリとして、ジューネスティーンが言うので、レィオーンパードは、言われた通りに腕の力を入れて組んだ。
「うん、ほとんどの人はこんな感じだよね。 でも、上半身に力が入っているって事は、案外重心が上に来ているんだ。 それに反応が遅くなるからね」
そう言うと、肩の辺りを持っていた腕をポンと上に上げるようにして押さえられていた部分を肩の上に持ち上げると、懐の中に入り込み、肩から外された方とは反対の腕を引っ張り、ジューネスティーンの体が、レィオーンパードの胸に当たり、体が惹きつけられると、そのまま体が伸ばされてしまい、レィオーンパードの体は、宙を舞って床に叩きつけられた。
ジューネスティーンは、上から、レィオーンパードの顔を覗き込んだ。
「ほら、腕を突っ張るようにしていると、なかなか技を掛けにくいけど、一旦外されてしまうと、簡単に投げられてしまうんだ。 だから、相手の動きに対応させるために、握る部分は外されないように強く握るけど、肩も腕も力を抜いていると、反応が早いから投げられ難くなる。 でも、腕や肩に力を入れていると、反応が遅れるから、握られている部分を外されると弱いんだよ」
ジューネスティーンの説明を聞きながら、レィオーンパードは立ち上がった。
「そうだね、外されたと思った時に対応しようと思ったけど、間に合わなかったよ」
「襟や胸の辺りを握られている方の相手の腕は、防御の為に必要な腕になるからな。 それに肩の力抜いて柔らかく持つと、そのまま、技を掛けようとしてくれることもあるし、外されたとしても元の位置に戻すにも早いんだ。 だから、腕は、相手の着物から外されないように強く持つけど、腕や肩には力を入れないんだ」
「そうだったんだね。 そこまで考えてなかったよ」
ジューネスティーンの説明に答えると、レィオーンパードは考えるような表情をした。
「ありがとう、にいちゃん。 僕も試してみるよ」
すると、笛が大きく鳴った。
全員が、その笛の音の方に向いた。
そこには、ジューネスティーンとレィオーンパードを睨む教官が居た。
「随分と余裕そうだな! ジューネスティーン」
教官は、話しながら組み手を行っていた2人が気に食わなかったようだ。
「ジューネスティーン。 今度は、俺とだ!」
ムッとした様子の教官は、ジューネスティーンとレィオーンパードが、話しながら組み手をしていたことを気に食わなかったのだ。




