格闘技に必要な筋肉 弓矢の弾道
レィオーンパードは、鳥の羽は空気抵抗を受けるのでフワフワと落ちるから、地上では、鳥の羽と石を一緒に落としても落ち方が変わる説明を受けて、なんとなく納得はできたようだ。
だが、まだ、腑に落ちないという表情をしていた。
「でも、木と石でなら、重くても軽くても落ち方は変わらないの、か、な」
レィオーンパードは、考えていたことを思わず声にしてしまったようだ。
その様子を、ジューネスティーンはニヤニヤしつつ、カミュルイアンは真剣な様子で伺っていた。
「そうだね。 ある程度の重さのある物だったら、胸の高さ程度から落としたら、ほぼ一緒だろうね」
ジューネスティーンは、そう言うと周囲を見渡し始め、何かを見つけた様子で、自分の持っていた弓をカミュルイアンに渡すと、その場を離れていった。
そして、射撃場の先の地面に蹲み込んで、そこに落ちていた小石を拾って戻ってきた。
ジューネスティーンの手には、小さな小指の先の大きさの石と、その3倍の大きさの石を持ってきて見せた。
「この石だけど、どっちが重いと思う?」
レィオーンパードに聞くと、右手の人差し指で大きな石の方を指した。
「そうだな。 大きい石の方が重いよね」
そう言うと両手でその石を摘むと、石を地面に向けた。
「じゃあ、同時に手を離すから、よく見てるんだぞ」
「うん」
レィオーンパードが真剣な様子でジューネスティーンの摘んでいる石に集中した。
「じゃあ、3、2、1」
そう言うと、両方の石を同時に離した。
すると、石は同時に落ちると、加速も同じように早くなり、同時に地面に落ちた。
落ちると何度か飛び跳ねて止まると、レィオーンパードは納得するような表情をした。
「本当だ。 重い方が先じゃなくて、両方とも同じに落ちたよ」
少し感動するように話した。
「そうだろう。 だから、物が落ちる時は、重さに関係なく、軽くても重くても同時に落ちるんだ。 石なら空気の抵抗は、あまり考える必要は無いけど、鳥の羽とかになると、空気抵抗の影響で遅くなるだけなんだよ」
「ふーん。 だったら、空気の無い場所なら、石と鳥の羽は同時に地面に落ちるって事だね」
「ああ、そうなるな」
レィオーンパードは、物が落ちるという事について、説明と実験で納得したようだ。
「要するに、離れた時から今のように落ちていくんだ。 だから、矢も放った瞬間から落ちているんだよ。 ほら、オイラが遠くの的を狙っているけど、その落ちる分を計算して狙っているんだよ」
カミュルイアンも説明に加わってきたのだが、レィオーンパードには、弓が落ちているという説明には、納得できていないような表情をした。
すると、ジューネスティーンは、壁に掛かっている黒板を指差した。
「言葉だけじゃ理解できないだろうから、図で説明しようか」
3人は、黒板の前に移動した。
黒板に移動したジューネスティーンは、白墨で、黒板の右側に丸を描くと、丸の右側に下向きの矢印と、丸の上に左向きの矢印を描いた。
「この下に向かっている矢印が重力の方向で、左に向かっている矢印が矢の向かっている方向だとするだろ、左に向かっている矢は一定スピードで飛ぶだろ、だから、こうやって、時間毎でも同じ距離だけ進むんだ」
そう言って、丸から左に一本の線を描くと、等間隔に矢印を描いていった。
「だが、落ちるというのは、徐々に早くなって落ちていくんだ」
今度は、丸から真下に線を引くと、今度は、矢印を下にいく程間隔をあけた。
「これが、物を水平に投げた時に働く力だとすると」
そう言って、水平方向と垂直方向の矢印の先端部分が垂直に交わる部分に、点を描いていった。
その点は、左に行けば行くほど下に付けられると、丸の部分から、今描いた点を通るように線を描いた。
「ほら、これが、水平に放たれた弓の弾道になるんだ」
最後に描いた放物線を指してジューネスティーンは、レィオーンパードに説明すると納得するように頷いた。
「だから、弓は矢の弾道が落ちることを考慮して、少し上を向かって撃ち出すんだ」
「そうだね。 距離を確認して、どれだけ上に向けるかを計算して上に向けるようにしているね」
カミュルイアンは、ジューネスティーンの説明を聞いて、自分の経験を話した。
それによって、レィオーンパードは、弓を使わないが、弓に対するジューネスティーンの解説と、カミュルイアンの経験と繋がったので、なる程なあといった表情をした。
すると、射撃場で射撃音がしたので、3人はそっちの方に視線を送ると、そこには、アンジュリーンが弓を構えて矢を放っていた。
ジューネスティーンとレィオーンパードは、不思議そうに見ているのだが、カミュルイアンは、マズイと思ったような表情をしていた。
その表情に気がついたジューネスティーンは声をかけた。
「カミュー、アンジュのやつ、何で、また、矢を射っているんだ? しかもムキなっているよな」
ジューネスティーンに声を掛けられた瞬間、カミュルイアンはビクッとし、ゆっくりとジューネスティーンに顔を向けた。
その表情は、しまったといった表情だった。
「最初の一射だけど、アンジュは外したでしょ」
「「あっ!」」
ジューネスティーンとレィオーンパードも、その理由が理解できたようだ。
アンジュリーンは、最初の一射を的から外し、二射目と三射目を的に当てたが、カミュルイアンは一射目から的に当てていたのだ。
その事に気がついたアンジュリーンは、負けたと思ったのか、意地になって連射していた。
その事に気がついたジューネスティーン達3人はやりきれない思いを浮かべていた。




