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格闘技に必要な筋肉  カミュルイアンの弓の調整


 納得した表情のカミュルイアンは、また、射撃場に立つと弓矢を構えた。


 そして、狙いが定まると、そのまま直ぐに指を離した。


 弦の弾かれる音と微かに滑車の回る音、そして、矢の風切り音を残して、矢は一気に的に向かって放たれた。


 その矢は、僅かな放物線を描いて的に向かって飛んでいくと、的の中央から僅かに下に当たると、その的を二つに割って、後ろの壁に突き刺さった。


 カミュルイアンは、割れてしまった的を見つつ、納得するような表情をした。


「なるほど、アンジュの射撃が参考になったよ」


 カミュルイアンは、つぶやいたが、それを聞いたものはいなかった。


 それ程、小さな声でつぶやいたのだ。


 そして、隣の射撃場に場所を移すと、もう1本の矢を弓に添えると構え、一呼吸程で、また、矢を放った。


 その矢は、的の中央を撃ち抜き、的を二つに割って、また、後ろの壁に突き刺さった。


 それをジューネスティーンは、感心した表情で見ていた。


「さすがだな。 初めての弓でも外さないなんて、本当に上手いな」


 撃ち終わったカミュルイアンにジューネスティーンは声をかけた。


「うん。 アンジュが先に撃ったのを見たから、おおよその弾道も予想できたからね。 アンジュのお陰だよ」


 それを聞いて、ジューネスティーンは、苦笑いをしながら、一瞬、アンジュリーンを見た。


 ただ、アンジュリーンは、いまだにニヤニヤしているだけだったので、ジューネスティーンは、少し残念そうな表情をした。


 カミュルイアンは、アンジュリーンに気を使ったのだが、その事がジューネスティーンにも理解できたようだ。


 ジューネスティーンは、カミュルイアンの様子を確認しつつ、弓を気にしていた。


「この弓はどうだった?」


 カミュルイアンの要望に応えて滑車の取り付け方を変更し、手前の弦の位置を変えた事による微妙な変化がどうなのか気になったようだ。


「うん、少し、弓の戻りが違うように思えるから、少し調整してもらった方がいいかもしれないかな」


 それは、ジューネスティーンも予想はしていたのか、納得するような表情をしていた。


「ああ、やっぱり、取り付け位置の違いで、弓を放った後の戻りに掛かる力が変わるかと思っていたんだ。 でも、カミューのその言い方なら、調整で何とかなりそうだね。 じゃあ、ちょっと見るよ」


 受け取るとジューネスティーンは、調整を行い始めた。


 本来であれば、滑車を付けて弦を反対側にまで伸ばした場合、3分の1程度の力で構わないはずなのだが、それ以上にカミュルイアンもアンジュリーンも腕の力を付けてきていたこともあり、射程距離と矢の破壊力を優先させたのだ。


 そのため、とても強い反発力を持つ弓となっていた。


「ねえ、ジュネス。 これだけ強い力で撃てる弓なら矢の重みも増やしても構わないかもしれないね。 その方が、衝撃力が高くなるかもしれないよ」


 ジューネスティーンは、錬成魔法で弓の形を僅かに変形させて、引き具合を確認しつつ聞いていた。


「ああ、そうだな。 矢も検討した方がいいだろうね。 でも、重くなったら初速も落ちるだろうから射程距離は短くなるだろうね」


「ねえ、にいちゃん。 それは重いから早く落ちるって事なの?」


 ジューネスティーンの答えを聞いて、今まで黙っていたレィオーンパードが声をかけてきた。


「重い矢なら、それを弦から飛び出す時、重い方が飛び出す時に速度が落ちるから、そのせいで速度が落ちるからだよ」


 カミュルイアンが、ジューネスティーンより先に答えた。


 ジューネスティーンは、弓の調整を行っていたので、その作業の妨げにならないようにとカミュルイアンは配慮したようだ。


「え、カミュー。 重い物の方が、軽いものより早く落ちるんじゃないの?」


「いや、そんな事は無いよ。 引力によって落ちるのは、重さが関係しないんだ。 軽い物でも重い物でも、同時に同じ高さから落としたら一緒に落ちるんだよ」


 カミュルイアンが答えてくれたので、レィオーンパードもカミュルイアンと話を始めた。


 しかし、レィオーンパードは、あまり、納得できていないような表情をしていた。


「でも、飛んでいる鳥に石をぶつけた時、抜けた鳥の羽はゆっくり落ちてくるよ」


 不思議そうな表情でレィオーンパードは、自分の経験を思い出したようだ。


「それは、空気抵抗があるから変わるんだ。 鳥の羽は、空気の影響で漂うように落ちるから、石だとかと比べたら、ゆっくり落ちるんだ。 だから、羽と比べられると、他の物の方が早く落ちるから、石と木とかで比べてみるといいよ」


 作業が終わったジューネスティーンも話に加わってきた。


「空気抵抗?」


「ほら、風が吹いたりすると、鳥の羽は飛ばされるじゃないか、でも、石とか木は、強い風じゃないと転がらないだろ、でも、鳥の羽は少しの風でも舞うじゃないか。 だから、鳥の羽は空気の影響を受けやすいから、重力の影響を見るには適さないんだよ」


 カミュルイアンは、一番年下のレィオーンパードとは良く話していた事もあって積極的に話に参加してきた。


 カミュルイアンからしても、13歳のレィオーンパードは、見た目は直ぐ下の弟のように見える事もあり気が合うようなのだ。


 アンジュリーンは性格がキツイ事もあり、それに兄弟とはいえ、男女という事もあり、学校の寮においても別の部屋を利用しており、接触も少なくなった事もあり、パーティーメンバーの中で同性で見た目も年下に見えるレィオーンパードは、カミュルイアンにとって良い話し相手でもある。


 そして、空いた時間とかは、2人で剣の練習をしたり、遊んだりしていたのだ。


 そんな事もあって、レィオーンパードの質問には積極的になれたようだ。


「ふーん、空気って有るか無いか、よく分からないけど、そんなところで影響が出るんだね」


 レィオーンパードには、鳥の羽と空気の関係について説明を受けて少し理解できたような、なんとなく、納得するような表情をした。


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