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格闘技に必要な筋肉  カミュルイアンの感性


 カミュルイアンは、構えた弓を一旦戻して、ジューネスティーンを見た。


 ジューネスティーンは、どうかしたのかと心配そうにカミュルイアンを見ると、何を言ってくるのか気になった様子で、カミュルイアンの言葉を待っているようだ。


「ねえ、この弦だけど、手前の2本を少し避けるようにガイドを付けられないかな。 ちょっと、矢を引いた時、少し近すぎるから離してもらえるといいかもしれない」


 その言葉にジューネスティーンは、嬉しそうな表情をした。


「弓としては、優秀だと思うけど、もう少し工夫が必要だと思う。 これだと場合によっては矢の羽根が交差している弦に引っかかるかもしれないよ」


 話しを聞くと、ジューネスティーンは、カミュルイアンの近くに行って、弓を確認した。


「そうか、分かったよ。 そういった細かな部分は、やっぱり、カミューじゃないと気が付かないな」


 それは、カミュルイアンには聞こえただろうが、少し離れているアンジュリーンには聞こえない程度の声で語りかけていた。


 ジューネスティーンとしたら、カミュルイアンの繊細な感覚に期待していたのだが、アンジュリーンの性格を考えたら、二つの弓を用意したからといっても先に選ばせないと機嫌を損ねると思ったカミュルイアンは、先に触ることもしなかった。


 アンジュリーンの選んだ後の弓でカミュルイアンは、余った方の弓を手にしたのだ。


 どちらの弓も大差はないのだが、それを先にアンジュリーンに選ばせてから残りを自分が使うことで、アンジュリーンに気を使った。


 それが、カミュルイアンの優しさといえよう。




 ジューネスティーンとしても、パーティーメンバーとなった時から3人について、性格も含めて、長所も短所も把握しようとしていた。


 そんな中、カミュルイアンの繊細な感性を感じたのだ。


 カミュルイアンであれば、その繊細な感性から、普通なら見落としてしまうような事も見つけ出してくれるだろうと考えたのだ。


 特に、弓に関する事であれば、アンジュリーンの感性で気がつかない事でもカミュルイアンなら見つけてくれるだろうと思っていた。


 しかし、カミュルイアンの性格ならアンジュリーンを立てる事を考えるだろうと思っていて、試しにカミュルイアンに先に試射を行えるように計らった。


 その結果として、ジューネスティーンの思い描いた通り、カミュルイアンは、二つの弓を2人に与えると言うとアンジュリーンより先に弓を手にとるような事はなく、アンジュリーンに先にどちらかを選ばせて残った方の弓を自分の弓にした。


 カミュルイアンは、ジューネスティーンの思った通りの行動をした。


 そして、自分で手に取った弓の弦を引いただけで、微妙な部分についても気がついてくれたのだ。


 ジューネスティーンは、その事に満足しているようだ。


「そうか、だったら、滑車を斜めに配置して、後ろの弦と前の弦の位置をズラすところから始めるか」


 そう言って、考えるような素振りをした。


 今の弓では、滑車は弓の中心線と並行になるように配置してあり、滑車から反対側に伸びた弦を弓の側面に取り付けていた。


 手前側でクロスしている弦は、弓の厚みの分だけズレるようになっていたが、矢を添える部分は、ズラして取り付けられている部分の半分程度となる。


 矢に取り付けられている羽根によっては、引っかかるかもしれないとカミュルイアンに判断されたのだ。


 そんなカミュルイアンの指摘だったが、ジューネスティーンは言われて直ぐ考え出したが、直ぐに代案が閃いたようだ。


 ジューネスティーンは、満足そうな表情をしながら、カミュルイアンから弓を渡してもらうと、滑車の位置を確認するように弦の滑車の近くを手に持ち、そして、反対側の手を滑車の部分にかざした。


 すると、滑車がゆっくりと斜めに配置を変えていった。


 ジューネスティーンは、錬成魔法を使って弓の滑車の部分を変形させたのだ。


 変形を確認すると、今度は弓の反対側に移すと同じように滑車の取り付けられている部分を錬成魔法で変形させた。


 変形が完成すると、弓の弦を視線と同じにして、上下の滑車の変形させた角度を確認してどちらも同じ程度の角度になった事を確認した。


 その角度に納得すると、その弓をカミュルイアンに手渡した。


「こんなもんでどうだ? これなら、前の弦と矢の間に隙間が大きくなった」


 カミュルイアンは、手に取った弓を左手で持って側面側から確認すると、すぐに不安そうな表情をした。


「ねえ、今度は、手前の滑車から戻ってくる弦なんだけど、少し近すぎないかな。 矢を放った瞬間って弦が震えるから、その震えた時に反対側の弦と擦れるかもしれない。 弦は繊細だから、お互いに擦れるのは耐久性に影響するかもしれないよ」


 滑車の角度を変えただけではカミュルイアンは納得できなかったようだ。


 それについてもジューネスティーンは、ムッとするような事もなく、なる程と思った表情をした。


「わかった」


 そう言うと、手を出して、また、カミュルイアンから弓を受け取った。


 そして、今度は、弦が取り付けられている部分を片方は手前にして、滑車の車軸に近い部分に固定位置をズラし、もう片方は、滑車から離れるように固定位置を変更した。


 それによって、弦は交差する事はなく並行に配置するようになった。


 再修正を行いカミュルイアンに戻すと、カミュルイアンは、先程と同じように弓を持った。


 そして、自分の思った通りに修正されたと納得したようだ。


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