格闘技に必要な筋肉 女子の思考と男子達
レィオーンパードは、シュレイノリアとアリアリーシャの話を後ろで聞いていた。
そして、その2人の話を知らないで、何やらニヤニヤしているアンジュリーンを見ると、2人を避けるようにしつつ、ジューネスティーンとカミュルイアンのところに移動した。
「にいちやん、俺、ちょっと、女子の考えが良く分からなくなった」
少し気持ちを落としつつ、レィオーンパードは、ジューネスティーンに語りかけた。
その言葉に、ジューネスティーンは、少し残念そうにした。
「あのな。 女子の話を一つ一つ気にしてたら、男は生きていけないからな。 だから、気にしない事だ。 それに女子とは、特別な生き物だから、ちゃんと敬意を持って接するものなんだよ」
「そうだよ。 無闇矢鱈に反論するような事を言うと、とんでもない事になるんだ。 だから、腫れ物に触れるように、大事に接するようにしないと、大変な目にあうぞ」
ジューネスティーンが、コソコソとレィオーンパードに話すと、その話を聞いていたカミュルイアンも同じように2人にしか聞こえないように話した。
ジューネスティーンにしても、レィオーンパードにしても、今まで、近くで接してきたシュレイノリアは、いつも一緒に居たので、兄弟のような関係であり、ギルド保護下の時の担当者であったメイリルダも、歳の離れた姉のような存在だったこともあり、優しく接してもらっていた。
また、一緒に狩りをしていたセルレイン達のパーティーの女子達においても、メイリルダと同じか、それ以上の年齢だったこともあり、見た目が同世代に見えるアンジュリーンの、喜怒哀楽が表に出るような女子には抵抗力が無かった。
ましてや、それを見抜いて先に根回しをして、本人には面と向かって言うのではなく、サラッとやり過ごし、本人には聞こえないように本音を漏らされるところを見てしまうと、特に、最年少のレィオーンパードにとっては、この大人の女性の考え方に付いていけないのだ。
それは、ジューネスティーンも一緒のようだが、冒険者のイロハを教えてくれた冒険者パーティーのリーダーであるセルレインと一緒に居る事が多かった事もあり、女子に対する扱い方などもだが、リーダーとしてのあり方について聞く事が多かったので、アンジュリーンやアリアリーシャのような女子でも、一歩下がったところから考えて話をするようにしていた。
そんな事もあり、レィオーンパードほどショックを受けるような事は無かった。
だが、そこに、カミュルイアンの言葉を聞くと、ジューネスティーンはともかく、レィオーンパードは、無闇矢鱈に反論するなという言葉が気になってしまったようだ。
カミュルイアンの言葉を聞くと、何十年もアンジュリーンと一緒に暮らしてきた事もあり、アンジュリーンの事は良く知っている事もあり、その言葉には重みがあると感じているようだ。
ジューネスティーンにもレィオーンパードにも、アンジュリーンとアリアリーシャという2人の女子の存在は、女子の新たな側面を見た事になり、特に、レィオーンパードにとっては、その女子の言葉を、その通りに受け取ってしまわないように、言葉の裏に隠れている本音と建前についてのギャップを、まだ、受け入れられずにいるのだ。
「にいちゃん。 アンジュの服だけど、シュレ姉ちゃんに作らせるのは、俺たちの枚数と同じにするって、アリーシャ姉さんが言ってたよ」
ジューネスティーンは、その言葉を聞いて少し考えた。
「そうか。 レオン。 だったら、俺達は、あまり、服をシュレにお願いしないようにしような」
「そうだよ。 あのアンジュの顔は、何着も作ってもらえると思っているよ。 それだと、シュレに負担が掛かってしまうから、気を付けた方がいいよ」
3人は、アンジュリーンの様子を気にしつつ、シュレイノリア達を見ると、男子3人は、顔を見合わせて、お互いが納得したような表情をした。
そして、ジューネスティーンとしたら、今日は新しい弓の試し撃ちをするためにメンバーを呼んだのだから、アンジュリーンだけでなく、カミュルアンにも試し撃ちをさせなければと思ったようだ。
「そんな事より、カミューも弓を試してみてくれ。 ああ、アンジュが選ばなかった方な」
言われて、カミュルイアンも弓の試射を行うために弓道場に来ていた事を思い出したようだ。
「そうだったね」
そう言うと、アンジュリーンが弦を引いただけで作業台に戻した弓を手に取ろうとして思いとどまった。
カミュルイアンは、アンジュリーンの様子を確認すると声をかけた。
「ねえ、アンジュ。 こっちの弓は、オイラが使ってもいいかな?」
ニヤニヤしていたアンジュリーンは、その表情のままカミュルイアンを見た。
「うん、構わないわ。 私は、さっき撃った弓を使うわ」
アンジュリーンの了解も取れたので、カミュルイアンは、作業台に置いてある弓を手に取ると、射撃場に向かった。
途中で矢を2本選んで射撃場に立つと、アンジュリーンと同じように右手に矢を持つと弦を引いた。
そして、そのままの姿勢を保つのだが、矢を放つのではなく、一旦、戻すとジューネスティーンを見た。
カミュルイアンは、弓に何か違和感を覚えたようだ。




