格闘技に必要な筋肉 2人の女子が考えるアンジュリーン
アンジュリーンの表情が良い方向に向いたことで、その場に居るメンバー達はホッとしたようだ。
ただ、その表情は完全に戻ってはいなかった。
「アンジュ。 腕の部分は、細い袖の服を着ると太さが際立つ。 袖の太い服を着たら目立たなくなる」
今まで沈黙を守っていたシュレイノリアが声をかけてきたが、アンジュリーンは、その話を聞いても、あまり嬉しそうにしていなかった。
「でも、そんなに都合よく、私の体型に合うような服なんて見つけられるかしら」
アンジュリーンは、休暇はブティックを回る事にしていたこともあり、おおよその店のラインナップは判っており、最近は、腕の太いブラウスを探すのにも苦労していたのだ。
「ふん。 そんなもの、私が作ってやる」
アンジュリーンの不安を取り除くようにシュレイノリアは答えた。
「私は、自分のマントも魔法職用の衣装も作る。 アンジュの服の一枚や二枚作るのは簡単だ」
シュレイノリアは、無表情のまま、当たり前のように言うのだが、その言葉を聞いたアンジュリーンは、その手があったかと言わんばかりに、シュレイノリアを見た。
「えっ! 何、シュレ、私のブラウスを作ってくれるの? 本当に?」
アンジュリーンの表情は、かなり、嬉しそうになった。
「そ、そうよね。 シュレは、いつも自分で作った服を着ているから、服を買うことは無かったものね。 それに、とても上手に出来ているし、デザインだって希望を言えるわね」
そして、かなり乗り気になって、ニヤニヤが止まらないようだ。
その様子を見たアリアリーシャが、シュレイノリアに近寄って行った。
「ねえ、シュレ。 大丈夫なの? あの様子だと、何でも頼み出すわよ」
「ん? ブラウスを作るだけなら、問題無い」
それを聞いて、アリアリーシャはガッカリした。
「あの様子だと、ブラウスだけで終わるとは思えないわ。 シュレは、スカートもワンピースも自分で作るでしょ。 あの様子だと、何から何まで、あなたに作らせるわよ。 それに、あの娘は、欲しがりだから、何度も新しい服を作る事になるんじゃないかしら」
アリアリーシャは、ジト目でシュレイノリアを見つつ話してくれた。
その言葉以上に、シュレイノリアは、アンジュリーンの視線にプレッシャーを感じたようだ。
「だ、大丈夫だ。 場合によっては、アンジュに手伝わせる」
シュレイノリアは、自分の服もだが、ジューネスティーンとレィオーンパードの服も作っている事もあり、作ることに抵抗は無いようだが、数が多くなる事には抵抗があったようだ。
その様子を見てアリアリーシャは、ため息を吐いた。
「やっぱり、考えてなかったわね。 それに、アンジュの不器用さは分かっているでしょ」
それを聞いて、シュレイノリアは、青い顔をした。
「あの娘に料理は手伝わせられない事を知っているでしょ。 下手をしたら、料理を運ばせるだけでも、大ごとになりそうになったこと覚えているでしょ。 あの娘に、縫製なんて期待しない方がいいんじゃないの?」
さらに追い討ちをかける言葉に、シュレイノリアは冷や汗を流し出し、明らかに心当たりがあるようなので、その様子を、アリアリーシャは冷ややかに見守っていた。
「きっと、一つ完成したら、直ぐに次の服を依頼してくるわよ。 しかも、難易度は、常に上がるでしょうね」
表情の変化に乏しいシュレイノリアでも、明らかに困ったような表情になっているのは、誰の目にも明白なほどである。
「うーん、ブラウスが出来上がった後に、何を作ってくれと言うか分かったものじゃないわね」
「ね、姉さん。 どうしよう」
シュレイノリアは、不安そうにアリアリーシャに答えたので、アリアリーシャはヤレヤレと思ったようだ。
「仕方がないわね。 あなたは、あまり、アンジュから色々受けなようにするのよ。 絶対に、ジュネスやレオンの服の数より多く引き受けることはしない事。 それと、少しなら、私が手伝ってあげるわ」
その一言で、シュレイノリアは救われたと思ったようだ。
「ありがとう、姉さん」
少し、涙目になりつつ答えた。
シュレイノリアは、アンジュリーンのブラウスを作ってあげようと思ったのだが、それは、その後に様々な衣類に及ぶだろう事を指摘された事で、アンジュリーンの性格から、アリアリーシャの言う通りだろう事に気がついた。
そして、今まで、シュレイノリアが服を作っていたジューネスティーンやレィオーンパードの数より多く作らないことにする事でアンジュリーンの要求数を無闇矢鱈に増やさないようにする対応策を教えてもらえた。
アンジュリーンは、自分の体型についても可愛いを追求していたが、着るものに対しても、そういった方向に走っているので、カミュルイアンと比べると浪費が激しい。
そんな事から、既製品を購入しないとなったら、アンジュリーンは、シュレイノリアに対して要求数は激しくなるはずなのだ。
「あ、そうだ。 シュレ。 アンジュに作る服は、製作費用を要求した方がいいかもしれないわよ」
それを聞いて、シュレイノリアも納得するような表情をした。
そして、その話を2人の後ろで聞いていたレィオーンパードは、ちょっと引きながら2人の話を聞いていた。




