格闘技に必要な筋肉 体の変化
ジューネスティーン達は、昼休みの食事前に綱上りを行うようになり、最初は腕だけで上れたのはアリアリーシャだけだった。
アリアリーシャは、ウサギの亜人という事もあり、身長が低く体重も軽かったことが幸いした。
それは、入学前、アリアリーシャは、冒険者として活動していた事もあり、それなりに筋力はあった。
そして、常に学費のために貯金に充てていた事もあり食事も切り詰めていた事もあり、体脂肪率が極端に低かった事が幸いした事もあり、アリアリーシャは最初から足を使う事なく登ってしまっていた。
そして、格闘技の最初の授業の際、教えられた投げ方を聞いただけで、アンジュリーンを簡単に投げてしまい、そして、そのコツについて理解し、受け手が腹に力を入れて受けるようにさせる事に気がついてしまったのだ。
そんなアリアリーシャなので、設置された綱を見てジューネスティーンが何をしたいと思ったのかも理解していたのだ。
綱を上るのであれば、自分の体重を支えるだけの力が有れば良い。
体重100キログラムの人と、体重30キログラムの人が綱を上る場合、その体重を支えるだけの腕力が必要となる。
体重30キログラムの人なら、50キログラムを持ち上げられる腕力が有れば十分なのだが、体重100キログラムの人が腕力50キログラムだった場合、自身の体重を腕だけで支えることは不可能となる。
体重100キログラムの人が綱を上ろうと思ったら、腕力100キログラムなら体を支える程度で上るとしても、スイスイと上る事は不可能となるので、100キログラム以上の腕力が必要となる。
綱上りは自分の体重によって、上れるための腕力は異なるのだ。
身長130センチのアリアリーシャは、体重が軽かった事もあって、今までの狩りの経験だけでも自分の体重を支えるだけの腕力が付いていたのだ。
だが、残りの5人はそうはいかなかったのだが、毎日の綱上りと食事によって、腕も太く、胸板も厚くなり、誰もが綱を上れるようになっていた。
そんな中、ジューネスティーンは、時々、壁際に行くと逆立ちをして腕立てをしていた。
綱上りをすると、軽く格闘技場内を軽くランニングをして、少し様子を見てから、また、綱上りをするのだが、ジューネスティーンは徐々に難易度を上げていたので、逆立ちをしたままの腕立てを途中で取り入れるようになっていた。
そして、小柄なアリアリーシャにおいては、周りと比べて身長が低いだけでなく体重も低いことから、腰に重しのベルトを巻いて上るようにしていた。
残りの男子2人においては、時々、ジューネスティーンの真似をするのだが、途中でめげていた。
しかし、アリアリーシャの重しのベルトは、時々使いはするのだが、毎回という事ではなく、最初の1回だけ、体力のある時だけに止める程度だった。
全員、綱上りのおかげで、筋力はついてきたので、二の腕の太さと胸板の厚さは、入学当時から大きく変わってきていた。
そんな中、1人だけ長身のジューネスティーンは、細身ではあったが、身長の分だけ周りより体重が重かった事もあり、他の上れなかったメンバーと同じように上れるようになるには、体重が重い分だけ努力が必要だった。
約10キログラムの違いではあったが、その違いがジューネスティーンの筋力強化に大きく影響を与えてくれた。
その甲斐もあり、格闘技の授業では、直ぐにジューネスティーン達に敵う生徒は居なくなり、ジューネスティーンは教官を相手にするようになっていた。
教官と練習するようになると、最初は、よく投げられていたのだが、それが徐々に投げられる回数が減り始め、遂には全く投げられなくなって、技の掛け合いだけで終わるようになり、そして、遂に教官も投げてしまうようになってしまった。
一度、投げられてしまうと、教官も警戒し始め、続けて相手をするような事も無くなって、教官は、一旦、体を休めるようになり、その休む時間も長くなり始めていた。
そして、遂には、教官もジューネスティーンの相手をする事は無くなってしまった。
ジューネスティーンは、入学時から大きく体型が変わっていた。
身長180センチと長身だったのだが、その割に筋肉質ではなく、手足も細かった。
それは、シュレイノリアもレィオーンパードも同様だった。
そして、41歳となったカミュルイアンとアンジュリーンも、長命なエルフ属と言う事もあり、人の10代半ばと同程度なので、ジューネスティーン同様入学時の体型は子供と、そう大差は無かった。
「ねえ、アリーシャ。 私、最近、腕が太くなったみたい。 それに、胸板も厚くなったみたいなのよ」
アンジュリーンは、自分の体型について気にながら言葉にしたのだが、それをイラっとした様子でアリアリーシャは聞いていた。
「そりゃ、私達はこれから冒険者として生きていくんだから、いい事じゃない。 それに、アンジュは、弓が専門でしょ。 腕が太くなって胸板も厚くなったら、強い矢が撃てそうじゃない!」
アリアリーシャは、面白くなさそうな表情で答えた。
「でも、顔は、細くなったんじゃない。 頬が痩けているから、着る物を考えれば細く見えるわ」
「そうなのかなぁ〜、ああ〜ぁ」
話の途中で、アンジュリーンの脇から両手を回して、胸を鷲掴みにされて驚いていた。
アンジュリーンとしたら自分の腕の太さも胸板も気になっていたので、簡単に後ろから手を入れられて鷲掴みにされたのだ。
驚いたアンジュリーンは、前に居たアリアリーシャの後ろに隠れるように移動すると、そこにはシュレイノリアが鷲掴みにした時のままの状態で、そこにアンジュリーンの胸が有るかのように両手で揉む動作をしていた。
「アンジュの胸には筋肉もある。 筋肉の上に乗っかっているのか」
シュレイノリアが独り言のようにつぶやいた。




