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駆け巡る想い


 暗闇。


 気がつくと何も目の前に見えてはいない。


 完全な闇が目の前に広がっている。




 首を下に向けて、自分の体を確認しようとしてみる。


 ?


 両手を見ようと思い、手を動かそうとするが、手の感覚がなんなのか?




 どうなっているのか。




 なら、さっき迄の記憶を辿ろうと、思考を巡らせるが、何も思い出せない。


 自分の名前は何だったのか?


 それすらも思い出す事が出来ない。




 今、自分の置かれた状況に思考を巡らせようとするが、何も見えない。


 耳をすませても、……、何も聞こえない。




 手を動かそうとする。


 しかし、手の感覚が感じられない。




 慌てて、手の感覚が感じられないのに、思考は、必死に手を動かそうとするのだが、何も感じられない。




 足の感覚も、何もかも感じられない。


 ただ、思考だけが、手足や体を動かそうともがく。




 そうだ、助けを呼べばと考え、「助けて!」と、声を上げようとする。




 しかし、声にならない。


 なんでなのか、全く理解できない? 


『ん? 呼吸もしてない? でも、苦しくもない。まさか、そんな。……』


 そう思った瞬間、有るのかどうかも分からない、頭の頂上と後頭部の中間あたりを、何かに引っ張られる感覚を受けたように思うのだが、自分に肉体があるのか、それすらも理解できない状況なのだ。


 人なら、顎が上がって、引っ張られるのだろう。


 そんな感覚にとらわれると、意識が、ゆらゆらとし始める。


 何だか、押さえ込まれるような、落ちるような、頭が押さえつけられるような感覚に襲われると、その後は、軽くなるようなというか、浮き上がるような感覚になる。


 フワフワと、波間を漂うような感覚、何とも言えない気持ちよさを感じる。




 ……。




 ふと、目の前に、人の顔が何かを話すように口が動いているのだが、視界の中心に人の口元が見えるが、視界の中心を外れるとぼやけて見え、そして、コントラストも低く、かなり暗い。


 明るいように思えるのだが、視界に入ってくる映像は、暗い。


 音は、水の中から聞く声のように、よく聞き取れない。


 ただ、暖かな心地よい気持ちが伝わってくる。


 目の前に、人の顔が浮かんでおり、その口元が目に入る。


 その口元の感じから微笑を浮かべていることがわかる。


 その暖かそうな口元には、ほうれい線が目立たない事からも、首にシワもない事から若い女性(20代?)なのかと思われる。


『誰なんだろう』


 そう思い、目の前の顔を確認する為に、その人の、目を見ようと、少し上に視線を移そうとする。


 だが、その瞬間に、目の前の顔が揺らめいて波打ってしまい、顔の確認できなくなって、闇に変わってしまう。




 気がつくと、今度は、建物が目の前に現れる。


 先程と同じように、見えてくる景色のコントラストは低く、明るいイメージの場所なのだが、暗く見える。


 そして、普通なら視界全体に見えるのだが、視界の中心以外がよく見えない。


 その不思議な感覚の視界を、何となく眺める。


 地上3階建、横に100メートル程と長い建物の正面にいる。


 それを50m程、離れた地上から眺めている。


 しかし、視界は正面だけが見えており、周辺はぼやけている。


 見ている建物は、見た覚えのある気がするが、思い出せない。


 建物は見えているが、その周辺部分がぼやけて、濃い灰色掛かって見えており、心の奥で、その灰色の部分は見てはいけないと、ささやかれているように思えた。


 その無意識が、語りかけるような感覚を感じつつ、目の前の建物を見ると、どの階にも窓が有り、建物の柱以外は全て窓になっている。


 何の建物なのだろうかと思いながら眺めていると、窓の手前に、たいして広くも無い、2人が並んだら、肩が当たる程度の幅のベランダがあるのだが、部屋毎に仕切られている訳ではなく、隣の部屋に移動する事も可能だ。


『マンションとは違う』


 視線を下げていくと、一階の床は地面より1メートル程高くなっており、建物の一階の中央に、大きなガラスの嵌め込まれたサッシの扉が数枚並んでいる。


 この建物の玄関なのだろうか、幅が20メートル程ある。


 そして、サッシは開かれている。


 サッシの扉の手前には、サッシの扉全体と同じ幅の、タイルの貼りのコンクリートの床と、その前には5段ほどの階段が、扉と同じ幅でつながっている。


 その手前の階段を降りた先は、建物より広い平らな地面が広がっており、白線がかなり離れた箇所に1本、また1本と引いてある。


 視線で、その白線をおうと、白線は、大きな四角形が、二つ並んで描かれ、その外側には、四角形の面と同じ直径の半円が描かれている。


 陸上のトラックのようだ。


 視線を直ぐ横に移すと、身長より、1メートル程高めのコンクリートの柱が、両脇に立っており、その先はどちらもコンクリートの壁が連なっている。


 この建物を覆う塀になっている。


 左の柱の先の壁に、自分より少し高い位置に、大きなプレートが埋め込まれている。


 そのプレートには、文字が書かれている。


 文字の右側から徐々に確認していくと、文字が見えてくる「校」「学」と左から順番に見える。


『……学校』


 学校まで確認する。


 その先にある文字を見ようと、左に目を向けようとすると、画面が左右に揺れながら流れていき、真っ暗な画面に切り替わる。


『……』


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