再会 30 〜魔法の解説 2〜
アジュレンの言葉を聞いてセルレイン達も事の重要性に気がついたように表情を固くした。
セルレインは、何か言おうとして思いとどまっているとアイカペオラが口を開いた。
「ねえ、ジュネス君。魔法は呪文によって発動するはずなのよ。何で呪文無しで発動するのよ!」
アイカペオラは、説明に納得できないと言うように聞き返したので、ジューネスティーンは少し驚いたような表情をした。
「魔法は魔素とイメージを組み合わせる事で発動しますから、魔法書とかに書いてある魔法の呪文を唱えるのはイメージを膨らませる為に行っていると思います。だからイメージさえ出来たら呪文はいらない、です」
その答えにセルレイン達は、魔法は呪文によって発動すると思っていた常識との違いに驚いていた。
「え、じゃあ、魔法の呪文って、本当は不要なの?」
アイカペオラの質問にジューネスティーンは頷いて答えたが、その答えに信じられないといった表情でジューネスティーンに視線が向けられていた。
(本当なのか? でも、それって大発見じゃ無いのか? 今までの魔法概念から変わってしまっているじゃないか!)
そんな中、セルレインは何か考えるような表情をしていた。
「なあ、それはジュネス君が見つけたのか?」
セルレインが聞くとジューネスティーンは首を振った。
「それは、シュレが発見しました」
その答えを聞くとセルレイン達はウィルザイアの胸に抱かれているシュレイノリアを見たが、驚いた様子で見るだけで誰も口を開こうとしなかった。
(エリスリーンの言っていた話は、かなり話が盛られていた可能性が有ると思ったが、誰も知らないような事を見つけてしまうなら、魔法の威力も絶大になる事も見つけてしまったって事なのか)
セルレインは、周囲の人達とは違い納得するような表情をしていた。
「無詠唱で魔法を発動させる事を発見したというのか」
そんな中、ストレイライザーが呟くように言うとセルレイン以外の人達が現実に戻るような表情になりジューネスティーンを見た。
魔法は詠唱を行なって発動させるか、魔法紋を使って魔法を発動させるものだと思っていた。
セルレイン達の一般常識の中に無詠唱魔法というものは存在していなかったのだ。
ジューネスティーンの説明に驚いているだけだったので、周りの空気を嫌ったジューネスティーンは口を開いた。
「魔法はイメージを魔素と結合させて発動しますから、イメージさえ確実にできれば発動します。だから、水でも炎でも出すことは可能です」
セルレイン達は説明について、自身でも考え納得しようとしていると、アジュレンが険しい顔をした。
「おい、ちょっと待て! 水と炎って、全く違う属性だぞ、それが何で出せるって言うんだ!」
ジューネスティーンの言葉にアジュレンが食いついた。
「魔法は属性が異なる相反するものを使う事はできないなんて、その辺の子供だって知っているぞ! おかしな事を言うもんじゃない!」
アジュレンの反論にジューネスティーンは驚いたように肩をピクリと振るわせた。
「いえ、魔法に属性は関係ありません」
少しオドオドした様子で答えた。
ただ、アジュレンは面白く無いといった表情でジューネスティーンを見ていた。
「なあ、ジュネス君。魔法は誰でも使えるものでも無いし、使える魔法も属性に応じた魔法だけなんだ。そんな中でも、時々、2属性の魔法が使える人もたまには居るけど、それは本当に限られた人だけなんだけど、相反する属性の魔法を使える人が居るなんて聞いた事が無いんだ」
セルレインはアジュレンの次の言葉を遮るようにジューネスティーンを諭すよう話したが、ジューネスティーンは納得した様子は無かった。
「できます。火も水も魔法は使えますし、同時に出す事だって出来ます」
「ふん、属性の異なる魔法ができるどころか、同時にだって? そんなのあり得る訳ない無いだろう!」
ジューネスティーンの言葉を聞いてい全員が驚いている中、ムッとした表情でアジュレンが反論した。
「いえ、出来ます」
そう言うとジューネスティーンは、右手の人差し指を上に向けるようにし、左の手のひらを上に向けると、右手の人差し指の少し先から小さな炎と、左の手のひらから水が湧き出すように出て指の間から漏れるように水が流れ出した。
「魔法はイメージですから、このように火も水も同時に出せます。それをシュレが見つけてくれました」
魔法を同時発動させたのを目の当たりにして、否定していたアジュレンも黙ったままジューネスティーンの両手から出る火と水を見比べていた。
(本当に、水と火を同時に発動させやがった。これをシュレちゃんが見つけたと言うのか? ん? って、おい、ジュネス君も出来ているって、いや、今確かに炎と水が出ている!)
セルレインは、本当に出来たと驚きジューネスティーンの手を見比べていると何かに気がついたようだ。
(シュレちゃんが見つけた?)
セルレインは、まだ、ウィルザイアの胸に抱かれているシュレイノリアを見た。
(アジュレンの言葉に反論したのは、シュレちゃんの事を思ってなのか)
納得するような表情をした。
(そうだったな。1日違いで現れたから、兄妹みたいなものか。大事な妹が見つけてくれた事だから、兄として庇うというか、引けないものがあったって訳だな)
セルレインは、子供の成長を見る親のような穏やかな表情でジューネスティーンを見た。




