再会 29 〜仲介者 3〜
艶っぽい表情のウィルザイアの胸に、シュレイノリアはメイリルダが手を離したことで何も邪魔されることもなく堪能できると、愉悦に満ちた表情をして顔を埋めるようにしてぶら下がっていた。
「ほら、私が手を離したらシュレは、あのまま、ウィルザイアさんの胸に頬擦りしているだけよ。結果は変わらないわ」
「でも、姉さんの様子は違うと思います」
ウィルザイアの表情には余裕が戻って、シュレイノリアを優しく抱いていた。
「姉さんも、シュレちゃんが嫌なわけじゃなくて、大きな胸を触られて驚いていただけなんです。シュレちゃんにしても、あの大きさの胸を見るのは初めてじゃないのかしら?」
メイリルダは、自身の胸を見てから考えるような表情で上を向いた。
「私だって、シュレちゃん位の年齢だったら、きっと同じ事をすると思います」
(いや、今も羨ましいと思うし、私もシュレちゃんみたいにしてみたいわ。それにメイリルダだって私より大きいんだから、私はその胸でも同じ事をしてみたいわ)
少しムッとした表情でアイカペオラはウィルザイアの胸に顔を埋めるシュレイノリアを見た。
メイリルダは、アイカペオラの横顔を見てから下を見ると、困ったような表情で前を向くと表情が穏やかになっていた。
(シュレちゃん、いいなぁ。あの位の年齢なら許されてしまうのよねぇ)
「人には人それぞれの悩みがありますし、あの位の歳の子供なのですから、少し大目に見てあげてもいいと思います」
アイカペオラはシュレイノリアを羨ましそうに見ながら言うと、メイリルダは答えに詰まった様子で黙っていた。
「姉さんが嫌がっていませんから、少し気の済むようにさせてあげた方がいいでしょう。これから魔法職同士の付き合いもあるでしょうから、スキンシップは大事だと思います」
メイリルダは、難しい表情をした。
(そうよね。セルレインのパーティーにジュネスとシュレを同行させるのだから、ウィルザイアさんとは、ちゃんと話ができるようにしておかないといけない訳だから、早めに仲良くなれた事を喜ぶべきかもしれないわね。でも、あの胸に顔を埋めているシュレには釈然としないわ)
メイリルダは、言われて渋々ではあるが納得したような表情をしていると、アイカペオラは思い出すような表情をした。
「それより、この騒動の前に何かをしようとしていたんじゃないですか?」
言われてメイリルダは、思い出したと言うようにハッとなった。
「そうだったわ、ジュネス」
メイリルダは、ジューネスティーンのいた場所に視線を向けるが、そこには誰も居らず不思議そうに周囲を確認すると、メイノーマの後ろにメイリルダから隠れるようにしていた。
「ジュネス、ちょっと、良いかしら」
ジューネスティーンは、恐る恐る顔を横に動かしてメイノーマの後ろからメイリルダを見た。
「何しているのよ。ちょっと、こっちにいらっしゃい」
ジューネスティーンは、仕方なさそうにメイリルダの前に来た。
「あのね。ウィルザイアさんにシュレが魔法紋の変更を行った事を説明して欲しいの」
メイリルダは、シュレイノリアの下手な説明だとウィルザイアは理解できていなかった事から今の騒動になってしまったので、ジューネスティーンに解説させようとしていた事を言い出した。
「う、うん」
ジューネスティーンの気の無い返事を聞いてメイリルダは面白くなさそうな表情をした。
「ジュネス、シュレの説明だと、周りが理解できないのだから、あなたが説明して!」
メイリルダが少しキツく言った。
「あ、メイリルダ。ジュネス君にも都合と言うものがあるでしょうから、そんな言い方は良くない、の、では、ない、です、か」
アイカペオラは、メイリルダの言葉がキツいと思い声を掛けると、メイリルダが睨むように見たので、途中から言葉が途切れ途切れになった。
そんな中、セルレイン達がほとぼりが覚めたというようにメイリルダ達の方に寄ってきた。
「なあ、ジュネス君。魔法紋の説明に何か問題があるのか?」
話を聞いていたセルレインが尋ねた。
「いえ、説明は問題無いと思うんですけど、魔法紋を見せるには剣を分解しないと見せられないけど、分解するのは少し面倒なんです」
ジューネスティーンの作った剣は数種類のパーツから作られている。
シュレイノリアの魔法紋は表に出てないハバキの下に魔法紋を描いている事から、柄を固定する為の柄紐をほどくために柄尻の金具を外して柄紐をほどき、柄を固定している目釘を固定している目貫を外して柄をばらす事によって鍔とハバキを外せる。
剣の茎が見えるところまで外すので、完全に部品を全部外さなくてはならないので面倒に思えた。
「きっと、魔法紋が刻まれている部分を見たいと思うのですけど、剣と鞘を固定する為のハバキという部品の下辺りに描かれているので、見せるには少し時間が掛かってしまうんです」
その説明にストレイライザーは、納得するような表情をした。
(あの金色のパーツの下に描いているのか。なる程、あそこなら隠れているから傷付く事は無いのか)
ストレイライザーが1人で納得して、セルレインとアジュレンが困ったような表情をしていると、今まで黙って聞いていたアイカペオラが何かに気がついたような表情をした。
「ねえ、ジュネス君。魔法紋が見えない事は分かったけど、シュレちゃんが使った魔法は説明できないの?」
「「おおー」」
アジュレンとストレイライザーは、感心したように声に出した。
「お前が、冷静な判断をしてくれるとは思わなかったよ」
セルレインが感心したように言うと、アイカペオラは怒るような表情をして顔を赤くした。




