黒竜の恋愛感情
アンジュリーン、レィオーンパード、それとカミュルイアンから聞いた、人や亜人の恋愛感情について、黒竜は、なんとなくではあるが、納得した様子を見せていた。
シュレイノリアの恋愛観が、一般人から、かけ離れている事を聞き、もう少し考える必要があると思ったようだ。
ただ、1人、アリアリーシャは、納得してなかったようだ。
「ちょっとぉ。 私の気持ちはぁ、どうするのよぉ。 私はぁ、黒竜さんにぃ、気持ちを弄ばれたんですよぉ」
その発言に3人は、面倒くさそうにする。
「ねえ、アリーシャに言い寄る人が現れたのよ。 喜んだ方がいいんじゃないの?」
アンジュリーンは、少し意地悪そうにすると、アリアリーシャに答えた。
「私はぁ、男の人に言い寄られたいんですぅ。 何で、無性で、こんなに大きさも違うのにぃ。 これでは、恋愛にぃならないですぅ」
アリアリーシャは、拗ねたように話した。
『そうなのか。 ワシはお前と恋愛というものがしてみたいのだが、そんな障害があったのか』
そう言って、黒竜は悩むような仕草をするのだが、アリアリーシャは、恋愛という言葉に、また、アンジュリーンの後ろに隠れてしまう。
「だめだよ。 さっきも言ったじゃないですか。 こういった時に、直接的な話をしちゃうと、引かれるって」
「また、隠れちゃったよ」
レィオーンパードは、アンジュリーンの後ろに隠れてしまったアリアリーシャを見て、ポロリと言葉に出すのだが、黒竜には、アリアリーシャが、なんでアンジュリーンの後ろに隠れてしまったのか、いまだに理解できてない様子だ。
『ワシ、何か言ったか?』
その朴念仁的な発言に、3人は困ったような顔をしている。
「もう、今、恋愛したいって言ったじゃ無いですか。 それがダメなんです」
ヤレヤレといった態度で、カミュルイアンが、黒竜に話した。
『そうなのか』
その言葉を聞いて、3人は、黒竜に同じ事を説明し始めた。
それを黒竜が、興味深げに聞いているのだが、アリアリーシャは、アンジュリーンの後ろに隠れたまま、3人と黒龍のやり取りを聞いていた。
一通りの話を聞くと、黒竜も人や亜人の恋愛感情について、多少は理解が深まったようだ。
『なるほど、そう言う事か。 次からは、気をつけよう』
黒竜は、反省したようだ。
それを見て、アンジュリーンは、うんざりした様子になる。
「まったくもう。 シュレの話を間に受けるからこうなるのよ。 シュレもそうだけど、この男だって、相当の恋愛音痴なんだから、本当に、シュレとはいいコンビだったわ」
ジューネスティーンは、雲行きが怪しいので、黙っていたのだが、ここにきてアンジュリーンに睨まれてしまった。
ジューネスティーンは、うまくやり過ごそうと思っていたようだが、だめそうだと思ったのだろう、苦笑いをしている。
そんな、ジューネスティーンを、黒竜も見て、5人しかいない事に気がつく。
『そういえば、リアとシャイランは、どうしたんだ? 姿が見えないが』
それを聞いて、5人は、嫌そうな顔をする。
『あの2人、また、何かやらかしたのか?』
黒竜は、恐る恐る、5人に聞く。
「うーん。 やらかしたのかと言えば、そうなのかしら」
アンジュリーンは、困った顔をして、レィオーンパード達を見る。
レィオーンパードは、アンジュリーンと目が合ってしまった。
アンジュリーンの目は、お前が言えと訴えていた。
レィオーンパードは、仕方なさそうな顔をする。
「リアとシャイランは、その岩陰にいると思います」
そう言って、アンジュリーンの後ろに見える2メートル程の岩を指差す。
『レオンよ。 なにが有ったんだ?』
「今回は、大した事じゃないよ。 戦闘の前に食事をしたんだけど。 なぁ」
そう言って、隣に居るカミュルイアンを見る。
カミュルイアンも困ったような顔をするが、仕方無さそうに口を開く。
「食事の時、2人が、あまりに食い過ぎて、腹が痛いってあそこの岩陰で横になってます。 きっと、まだ唸っているんだと思います」
その時の、異ような食べっぷりを思い出して、カミュルイアンは、暗い表情をすると、つられるようにレィオーンパードが、ぽろりと一言言う。
「吐いてなければいいけどね」
黒竜もそれを聞いて項垂れる。
『そうか、食い過ぎか。 まあ、今回は、それで済んで良かった』
黒竜は、少し安心した様子になる。
「もう、あの2人って、本当に、おバカになっちゃったのよ。 赤ちゃんほどの知能しかなくて、普通に歩き回るから、もう、手を焼いて困っているのよ」
『そうか。 だが、それもお前達5人の役目だ。 しっかりと頼む』
黒竜は、申し訳なさそうに言った。
「他人事だと思って、簡単に言わないでよ」
アンジュリーンは、少し膨れたような表情を黒竜に見せるが、直ぐに、カミュルイアンとレィオンパードの顔を見る。
「仕方が無い。 そろそろ、あの2人を呼んできて」
アンジュリーンは、カミュルイアンとレィオーンパードに指示を出すのだが、2人は嫌そうな顔をする。
「ぐずぐずしない。 さっさと呼んできて」
仕方なさそうに2人は、アンジュリーンの後ろにある岩陰に向かう。
2人が岩陰に行くが、その後、なかなか戻ってこないので、アンジュリーンは、どうしたのかと思って、呼びにいった方を見ると、レィオーンパードがアンジュリーンに声をかける。
「ねえ。 この2人、完全に寝てるんだけど」
レィオーンパードが、状況説明をしてくれた。
それを聞いて、アンジュリーンは気が抜けたようだ。
腹が痛くなる程、食べてしまい動けなくなっていたので、休ませていたのだが、それが、いつの間にか2人とも寝ていたのだ。
それを見た3人は、呆気に取られたような顔をお互いに向けるしか無かったのだ。




