再会 28 〜シュレイノリアの魔法〜
メイリルダは、シュレイノリアが、今まで自分の後ろに隠れていたのに、魔法紋の変更をするとなったら、今までは何だったのだろうと思い伺っていたが、様子が怪しくなってきたのを見て3人の方に寄った。
(シュレったら、自分の話だけしか見えてないようだわ。魔法職のウィルザイさんが、簡単に魔法紋の変更をした事を驚いているのに気付いてないみたいね)
メイリルダは、人見知りなシュレイノリアは魔法の説明のように自身の知識を語る時は本当に人見知りなのかと思う時があったので、ジューネスティーンの剣に魔法紋の変更を行う事が人見知りをするより興味をそそられた事を理解していたが、ウィルザイアは魔法紋を描く魔法を見るのも詠唱も無く魔法を発動させる事も初めてなので驚いている事にシュレイノリアが気がついてないと理解した。
(シュレは、自身の話に夢中になると、語り掛けられた相手の事など考えずに捲し立て、場合によっては相手を怒らせたり自信を挫かせたりするんだから。いつものジュネスならフォローしてくれるけど、何だか様子が変で、シュレの事が見えてないのは何でなのかしら?)
何度も有った話ではないが、シュレイノリアの極端な変化がメイリルダには強く印象に残っていた事もあり、今回も同じようになったと思ったのか、ヤレヤレといった様子でシュレイノリアの肩に手を置いた。
「シュレ、あまり、お姉さん達を困らせちゃダメよ」
メイリルダが声に、シュレイノリアは何の事だと思った様子で見た。
メイリルダは、ギルドの受付嬢ということもあり、魔法職の冒険者についてもシュレイノリアよりは知っていたことから、魔法には詠唱が必要な事は知っていたので、シュレイノリアが詠唱もせずに魔法紋を更新してしまった事をウィルザイアが驚いている事も理解できた。
シュレイノリアとジューネスティーンは、火薬と銃を開発したジェスティエンの次に転移してきた事もありギルドが外部との接触を避けた事によって、2人の一般常識にはウィルザイア達とは大きく違いが出来ていた。
魔法が使えないメイリルダは、シュレイノリアとウィルザイアには魔法に関する大きな隔たりが有る事は、ギルドマスターであるエリスリーンへの報告の際に解説を聞く事もあったので、一般的な魔法職とシュレイノリアやジューネスティーンが異なっている事は知っていた。
「シュレ、あなたの魔法は一般的な魔法とは少し違うのよ。それに魔法紋を魔法で描くなんて、あなたが開発したもので、どこの魔法宗派にも無い魔法なの。だから、ウィルザイアさんには不思議に見えていたのよ」
シュレイノリアは、ふーんといった表情でメイリルダの話を聞いていた。
「新たな魔法の開発なんて、研究所や大学に所属している人と、魔法宗派を立ち上げた人達だけで、魔法が使えるからといって、簡単に新しい魔法を作るなんて出来ないわ。それに、詠唱せずに魔法を発動できるのは、シュレとジュネスだけよ」
シュレイノリアは落ち着いた表情になった。
「私だって、今まで担当した冒険者には魔法職も居たけど、シュレのように魔法を開発したり詠唱せずに魔法を発動できる人は居なかったのだから、ウィルザイアさんもメイノーマさんも、詠唱しない魔法なんて初めて見たのよ。だから、もう少し詳しく教えてあげてくれるかな」
メイリルダが、優しく諭すように言うとシュレイノリアは納得したと言うように頷いた。
シュレイノリアは、魔法の発動に詠唱を行う事は無い。
魔法について、ギルド支部の図書館にある少ない書物と自身の魔法実験によって、魔法とは何かという基礎の部分を中心に調べていた。
その結果、最初の魔法適性の検査で魔法を使えなかったジューネスティーンもシュレイノリアのアドバイスによって魔法が使えるようになっていた。
特にシュレイノリアは、魔法に興味を持ち同じ書物を何度も読み返しては実験を繰り返す事で理解を深め、詠唱無しでも魔法が発動する事を知ってしまった。
それは、宗派によって詠唱の呪文が異なるのに発動される魔法が同じ事に着目すると魔法の呪文に何の意味があるのかと考えた。
違う呪文で同じ魔法ならば、呪文の重要性は無く魔法発動させるためには何か別のキッカケを与えるものが有ると考え書物を読んでは実験を繰り返した。
その結果、無詠唱でも魔法を発動する事を発見した。
しかし、世の中の魔法に関する研究機関は結果を求められる為、新たな魔法の開発や今の魔法をより強力にする事により、自身の研究成果を示す事に興味がいっており基礎に関する研究は遅れていた。
シュレイノリアはジューネスティーンと共に隔離された状態で育った事により、魔法を使える人との接触が無かった事により、魔法に関する一般常識が著しく低かった事が幸いし基礎的な内容の追求を行えた。
新たな魔法を次々と勉強するのではなく、初歩の基本魔法を繰り返し練習しては書物に書かれた内容と比較し結果に違いがあれば、また、書物を読み返して原因を追究する。
些細な違いでも原因を追究した事によって、シュレイノリアは基礎研究が進んだ事によって魔法の威力が格段に向上した。