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再会 26 〜メイノーマ 冒険者の手〜


 メイノーマは、ジューネスティーンとシュレイノリアを交互に見ていた。


 シュレイノリアを見た時は、何か考えるような表情を浮かべて見ていたが、すぐに視線をジューネスティーンに向けると、何か含み笑いを浮かべてスタスタと歩いて行った。


 その様子をアイカペオラは、嫌そうな表情で見ていた。


(メイノーマったら、何かおかしな事考えてないといいけど)


 それは、メイノーマの表情から何か良からぬ事を考えているのでは無いかと思えたようだが、何も事件を起こしていない段階でメイノーマを止めるようなことはできないとも思ったようだ。


 これから、ジューネスティーンとシュレイノリアは、自分達と一緒のパーティーで活動する事になるので2人とメイノーマの間を裂くように、あれもダメ、これもダメと、今から注意するつもりも無かった。


 人に教えることで、メイノーマに考えさせる機会を与えるのだから、今から制約をつけることは良い事ではないが、メイノーマが何かやらかす可能性が有ると思うと様子は常にチェックしておく必要があると思ったようだ。


 そのため、いつでもメイノーマを止められるようにとアイカペオラは、メイノーマが自分の間合いの中に入るように動いたが、メイノーマはアイカペオラの動きに気が付く事もなく、ジューネスティーンに笑顔を向けつつ近寄った。


 ジューネスティーンも自分に笑顔を向けて近づいてくるメイノーマを見ていた。


 そして、2人が手の届く範囲に来るとメイノーマが口を開いた。


「少し、大きくなったかな」


 メイノーマが話しかけると、ジューネスティーンは何でと思ったような表情をした。


(ああ、そうか。気絶している間の事だから覚えてないのか)


 メイノーマは納得したような表情をした。


「あの時は、セルレインしか顔を合わせてなかったけど、君が転移して岩の上に居た時、私も、そこに一緒に居たのよ。それに気絶していた君を抱っこだってしてあげたのよ」


 ジューネスティーンは驚いたような表情をすると、メイノーマの上半身を見た。


 ジューネスティーンとしたら抱き抱えられた時の事を想像して見たつもりだろうが、メイノーマとしたらジューネスティーンの視線が自分の胸に向かっている事に気が付いたのか少し顔を赤くした。


(まっ、男の子ね。ここは、お姉さんだと思わせないといけないわね)


 メイノーマは、ジューネスティーンの目線に合わせるように腰を折って身体を前に倒した。


「あの時より少し大きくなったから、今は、私が抱っこできる限界かもしれないわね」


 少し緩めのシャツは、胸元が空いている事もあり、メイノーマのシャツの奥がジューネスティーンからは見えるようになったので顔を赤くして視線を横にズラした。


 そんな少年としての反応をしつつジューネスティーンは一歩下がると、メイノーマは可愛いと思ったのか、一歩下がったジューネスティーンを逃すまいと剣を持つ手を握った。


 ジューネスティーンは表情を変えた。


(あ、硬い!)


 その手はメイリルダのような柔らかさは無く、武器を振るう事でできたタコの硬さがあったので、初めて知る冒険者の掌の感触を新鮮に感じたようだ。


 メイリルダと、それ程年齢的な違いも無いメイノーマでも冒険者なので、職業の違いをジューネスティーンは感じたのか、今までの歯に噛んだような表情ではなく観察するような表情に変わった。


 冒険者の手の違いを感じた事で、先程の恥ずかしさは消え握られたメイノーマの手を見ていた。


「ん? どうしたのかなぁ」


 メイノーマは、そんなジューネスティーンの変化に気がついたようだが、深く考えるような事もなく手を繋げた事に喜びを感じていた。


「あ、いえ。なんでもありません」


 工房の中では、シュレイノリアを気にしていたので、手に触れることはなかったが、今度は手に触れることができて嬉しそうである。


「ねえ、その剣は、君が作ったんでしょ。すごく斬れたよね。ストレイライザーも君も、すごく綺麗に棒を斬ったよね。君の剣は魔法紋があったみたいだけど、あっちのストレイライザーの剣も、すごいよね」


 メイノーマは、ジューネスティーンの様子よりも自分の欲望を満たせたことが嬉しいようだった。


 ジューネスティーンは、初めて接する冒険者の掌が、シュレイノリアやメイリルダと違うのだと思った事もあり会話も剣の事になった事から、これが職業による違いなのかと思ったようだ。


 しかし、それを口にしようとはしないで、ただ、手の甲に乗せられているメイノーマの手を見ていた。


(やっぱり、剣を握る手は剣ダコができてしまうのか。メイの手とは違うけど、言葉にしたら、やっぱり、傷付くかもしれないな)


 この世界の冒険者なら、武器を使うので、その武器を握る事でマメが出来て潰れ、そして皮が厚くなってタコになる。


 常に武器を手に取っている掌だとジューネスティーンは自分の手の甲に感じていたようだ。


「あの人が、使った剣には、魔法紋は刻まれてないのに、あんなに綺麗に斬ったんだ。あの人の剣の腕は、とても凄いと思ったよ。まだ、僕のレベルじゃ、こいつのように魔法紋に頼らないと、2センチ角位が限界だったよ」


 魔法紋を印刷してないジューネスティーンの剣を使って試し斬りをしたストレイライザーも3センチの試し斬りの棒を綺麗に斬っていた。


 ジューネスティーンの力では、2センチまでだったようだが、大人のストレイライザーだったら、3センチの太さの棒を、しかも、剣を見ただけで、斬り方まで、自分の剣とは違う方法で斬ってしまっていた。


 そのストレイライザーの対応力についても、ジューネスティーンは達人だと感じていた。


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